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14/2/6

【15歳】はじまりはじまり

Image by Olia Gozha

15歳の秋

女であることのはじまり


くだらない毎日。私はこんなところにいたいわけじゃない。


その頃はいつも、そんなことを思っていました。


教室の中だけの狭い人間関係が嫌で、同級生と距離を置くことで、少し孤立した自分を楽しんでいました。私は他と違う特別な何かでいたかったのでしょう。

当時は中高生にPHSが普及し始めた頃でした。

私も既にPHSは持っていて、あるボイスチャットに時間を費やしていました。


LINEのシステムのボイス版のようなものでした。

チャットに回線をつなぐと、同じルーム内の全員の声が聞けて、複数人で通話ができるというものです。



声だけしか分からないし、各々ハンドルネームというか、チャットネームというか本名とは違う名前を名乗り合う場です。


年齢も性別も住む場所もバラバラでしたが、皆に共通していたのは非現実的な世界が好きだということでしょう。

年齢や性格など、偽ろうと思えば、どんな風にでも語れます。音声だけの世界ですから。そんな世界に入り浸っているのは、どこか非現実的な世界に逃げたがっている人間でしょうから。

もちろん私も。

家に帰るとすぐにチャットに回線を繋ぎ、普段からよく話をしている人がいないかチェックしていました。

長い時は1日5~6時間はボイスチャットに繋いだまま、お風呂に入る時ですら手放せないくらいの中毒状態でした。

チャットに電話をすれば24時間いつでも誰かがそこにいて話ができる。そんな手軽な人間関係に私は夢中でした。

今でも名前がスラスラでてくる人が30人くらいいますから、当時の私がいかにチャット内の世界に傾倒していたかわかります。

毎日、毎日、そのチャットの人達と何時間も話をしているので、だんだん親密になっていきます。

私は、ある特定の男性と特によく話をするようになりました。

お互いの電話番号を交換するまで、そう時間はかからなかったと思います。

そして、直接話をしているうちに、どちらからともなく「会いたいね~。」という流れになりました。

その頃は写真を送り合うなんてことはできないので、実際に顔を合わせた時に初めて相手の外見を知ることになります。



優しそう。頭よさそう。というのが第一印象でした。

私は彼を『ユウ』と呼んでいました。

今となっては、それが本名なのかすらわからないけれど…。

ユウは私の地元から電車で1時間半かかる場所に住んでいて、初対面の日は、私の地元にユウが来ました。

ユウに「付き合わない?」と言われ、私に初めての彼氏ができました。

ユウに対して恋愛感情があったかは記憶にありません。

私は『ちょっと他の子とは違う。』という状況を手に入れたかっただけだったのでしょう。


私は15歳の中学3年生


ユウは30歳の公務員


そんなおかしな関係を手に入れたことで、私は【特別】になったような気がしたのでした。





ユウは毎週末、私の地元に来ました。

食事して、話をして帰る。

その繰り返しでした。

2か月ほど経った頃に、ユウがどんなところで暮らしているのか知りたくて、初めてユウの住む街に行きました。

彼は事故で片足が義足でした。

セックスは彼に教えられるまま、私が上に跨り、そのまま処女喪失しました。

初めて触れる人肌の熱さに少し戸惑いながら…。

ユウは頻繁に会いたいというようになっていき、会う度にプレゼントしてくれるようになりました。

服・靴・バッグ・アクセサリー

中学生が身につけるには大人びたものばかりを選んでくれたユウ。

プレゼントしてもらった物を身につける度に「早く20歳になった姿が見たい。」と、私の髪や頬を撫でながら呟いていました。

通話料を負担してあげたいから…と、私用にPHSを契約してくれました。

そのPHSを使う代わりに、ユウにはボイスチャットには、もう入らないでほしいと言われました。

それ以降、私はチャットの時に使うネームを変えました。

ユウとの約束より、チャットの方が大切でした。

ある時、ユウは私に指輪をくれました。

プラチナの3連リング


指輪を私の薬指に通しながら、いつもの「早く20歳になった姿が見たい。」と呟いた彼。

私を好きなのか、私を育てている感覚が好きなのか…

その言葉を疎ましく思うようになった頃、季節は冬になっていました。


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