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14/1/29

精神科看護師として働いていた時の衝撃的事件簿③社会にはいろんな人が支え合いながら生きてるんだよって話。

Image by Olia Gozha

[夜間救急当番:その日夜間帯に警察が市内で保護した人を市内の各精神科病院が受け入れる日]

夜間救急当番の日に保護され、精神科に運ばれてくる人は当然かなり錯乱してたり、混乱してたり、酔っ払ってたり、情緒不安定でリストカットした人等がくる。


当時私が働いていた病院でも月一回夜間救急当番の日が周ってくる。

その日の夜勤に当たると、夜中に外来に呼ばれたり、夜中に入院の準備をしなくてはならないのでとっても面倒だ。

はっきり言って毎月その日は夜勤に当たらないことを祈ってる。

当たってもだれも運ばれて来るなよと祈ってる。

ある救急当番の日に夜勤が当たってしまったある日、やはり事件は起こった。

もうすぐ0時を周ろうかとした時TELがなった。

「今から警察にパンツ一枚で保護された60歳ぐらいのおばあさんがパトカーで来るので、外来に応援よろしく」と。

うーん、今回も濃そう・・・

外来に行くと警察3名に保護され、ぼろぼろの毛布に包まって混乱した内容の話をしてる60過ぎのおばちゃんがいた。

警察から「市内の公園でパンツ一枚でうろうろして、荷物をそこら中に散乱させ混乱してた。話を聞こうにも混乱して話にならないため保護した」とのことだった。

おばちゃん「なんで、こんなとこに連れて来たのさ!あたしゃおかしくないよ、物が盗まれてないんだよ、入れ歯もないし、眼鏡もないし、パンツもないし・・・」

と文句を言いつづけるおばちゃん。

目の前に自分で出した鍵や財布をせわしなくバックにしまい直しては、自分でどこに入れたか分からなくなってさらに混乱してる。

・・・いやー、さすがに年取ったおばちゃんのズボンや入れ歯は盗らんよなー普通・・・

などと思いつつ話を聞こうと試みる。

警察の人はしばらく一緒に居てくれたが、病院が引き取る手続きを済ませるとパトカーで帰っていった。

おばちゃんは始め不信感を剥き出しにして「こんなとこ帰る!帰る!」と連呼してたが、横に座って関わっている内に次第に少しづつ話し始めた。

どうやらそのおばちゃんは普段一人暮しで、食事も給食サービスを自分で申し込んで生活してるそうで、持ってる社会的能力は高いようだ。

保険証から他の精神科を受診してる経過もわかった。

この日も午前中他科受診して、公園で休んでる時鼻水が出たので風邪薬を飲んだが1錠で良い薬を2錠飲んだそうだ。

その薬は副作用で眠気がでる薬で2錠飲んだことで、強く眠気が来てしまったと思われた。

当直のドクターがおばちゃんの話を聞いてる間、俺は家族と連絡取れないか何度か試みるが家族に電話は繋がらない。

夜中なので寝てるのか、たまたま外出してるのか、あえて出ないことにしてるのか・・・

かなりの間家族と連絡とってないとのことで、本当に一人で頑張って社会生活してるんだなあと感じた。

純粋にすごいなーっと思った。

「なんだか寝て起きたら真っ暗で、公園でも自分の家に居る気になってほーっとしてたら、訳が分からなくなった」

「目が悪いから、暗いと怖いんだわ、眼鏡もないし・・・」と語る。

どうやら薬飲んで外で眠ったのがきっかけで、意識が変容してしまったようだった。

「今日はもう遅いし、外も暗く、家族とも連絡つかないし、お金もなく帰りようないので、一晩泊まっていったらどう?」と勧めてみる。

しかしおばちゃんは、「帰るったら帰る。こんなとこより家の方が落着く。歩いて帰る。タクシー拾ってでも帰る。ズボンなくても帰る!」と無茶なことを話してる。

しまいには自分の携帯から119番掛けて救急車で家に運んでもらおうとしたりする。

もちろん後でドクターが代わって事情説明して断ったけど。

さあ、こんな時どうしたらいいでしょう?

あなたなら、どうしますか?

この日の答えは、もう一度パトカー呼んで迎えに来てもらうでした。

さっき帰っていった警察の方々を呼び戻し、入院のケースでもないので家に送ってもらうこととなった。

待ってる間病棟のズボンを貸し、タバコが吸いたいと言うので代わりに買って来たりしてる内に、おばちゃんはとっても落着いてきた。

礼儀正しく、遠慮がちで、人が良い普通のおばちゃんだった。

警察の人が迎えにきたら、「お世話かけました、ズボンは後日送ります」と丁寧にお礼を述べて帰っていった。

社会に生きる精神科を退院した患者さんの姿を垣間見た感じがした。

今の社会はまだまだ精神科に対して認知も認識も低いし、偏見や悪意もある。

精神科を受診した人はある種のレッテルを貼られる思いもあるだろう。

でも、警察が来ておばちゃんと一緒に帰っていく姿を見た時、なんだか社会でもみんな支えあって、フォローしあって生きてるんだなーと改めて感じた。

ちょっと混乱して訳がわからなくなって、服脱ぎ出したりぶつぶつとひとり言が多くても、みんな社会の一員なんだよな。

そういった人もいての社会なんだよなと思った。

落着いた後ドクターと少し話した。

「これで終われば良い方だ。最近は救急車をタクシー、病院をホテル代わりに使う人も多いから。毎月救急当番の日は何件かくるよ」 と話してた。

「彼氏と喧嘩してリストカットしたと彼氏と来るケースや、アルコールの患者が酔っ払って街で暴れて運ばれて来るケースも多いよ」とのこと。

結局この日はこの一件だけだったが、改めてみんな色んな人生送ってるなーと妙に感心してしまった。

そんなこんなで、毎回ドラマでいっぱいの夜間救急当番の夜勤でした。

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Image by Jukka Aalho

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