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14/1/26

バスケットボールを始めてみてわかったこと

Image by Olia Gozha

バスケットボールを始めて一年半が経った。


始めてみて、気づいたことがある。

この国では大人が新しいスポーツ(特に団体競技)を始めることのハードルが極めて高いということだ。

やる場所、教えてくれる人、一緒に始める仲間、その全てを見つけることが困難だ。特にバスケットボールは、中学か高校の部活の経験がない初心者が、成人後にイチから学ぶ環境がほとんどない。

そんなニーズほとんどないから必要ない。と言われればそうなのかもしれない。

10代の頃に、特に疑問も持たずに興味のあるスポーツを始め、それを通していろんな経験をしながら卒業していく。成人後は、たまに楽しむ程度の環境はあるのだから十分だろう。

適性な時期に適性な経験をする人のために公共のサービスは存在している。

後からその大切さに気付いて始めようと思う間の悪い人間はこぼれ落ちる。

転職活動をすると直面する問題に似ている。

いかにやり直しがききにくい社会に生きているかということに気づかされる。


それでも、数少ないバスケスクールを探し当て、月に何回か練習に参加するようになった。

次は仲間だ。

ネットや口コミを駆使して、初心者からできるチームを探し求めた。だが、ほとんどは、経験者が楽しむための仲間を集めているものであって、始めから実力差がある。掲示板で見つけて会場に行くと、すぐにゲームが始まる。初心者はいても邪魔なだけだ。

チームがほしい。仲間がほしい。


ようやく、初心者中心で構成されるチームを見つけ、練習に参加するようになったが、やはり経験者との差は大きく、半年ほど参加した足は遠のいてしまった。


次に個人練習できる場所を探した。

都内の体育館の開放日をしらみつぶしにあたり、ボールを持って行くものの、どこに行ってもそこを縄張りにしている経験者たちのゲームが行われており、練習する隙間がない。

ならばといってバスケットゴールがある公園を探し歩いたが、仕事帰りに寄ってみると、どこもかしこも使われている。


仕方なく、僕はゴールもない近所の公園で一人練習を始めた。

砂地の広場で一人ドリブルをし、バウンドさせたボールをキャッチして、シュート―。


そこには、キウイ棚しかなかった。

(いや、実際にキウイがなっていたことは見たことがない。でも日よけにもなっていない、謎の白い木造物がある。こんなの↓)

キウイ棚の上の柱の角の高さが、ミドルシュートの軌道上にある、ような気がする。

角にボールを当てると、木の屑が飛び散り、目に入ると痛い。でも、うまく角にあたらないと、跳ね返らずにボールが飛んでいってしまうので、それを必死で追いかけてとる。

平日の21時半。夕食後、家族たちが団らんを楽しむ住宅街の真ん中にある公園に、ドンドンとボールをキウイ棚にぶつける音が響く。

砂地の地面に、ボールはなかなかうまく跳ね返ってくれない。


ドリブルをしながらいろんな想いがめぐる。


給料を半分にしてまでやりがいを求めて入った会社では、以前よりもっと雑務の量が増えた。5人しか社員がいない会社で、全部自分でやらなければならないためだ。

同い年で就職した同期や友人は、既にマネージャーになったり、海外で働いていたり、何億のビジネスを動かしたりしている。

僕は今日ひたすらイベントのチラシを作って、うまく動いてくれないコピー機をなだめながら印刷を繰り返していた。

来週は大学の同じゼミの仲間の結婚式だ。他の同期は先月子どもが生まれた。


僕は、ゴールのない公園で、ひとり、キウイ棚にバスケットボールをぶつけている。


社長には毎日怒られる。自分では手を動かさず、勝手に仕事をつくって命令だけし、なんとかやって見せにいくと気に入らないといって怒る。残業手当という概念はそもそもない。1年間で、2回退職届を出そうとした。

「こんなはずじゃ・・」



――いや、自分で選んだ道だ。これは。

想定と違っていても、選択した責任は自分にある。

環境を変えても仕方ない。今あるものの中で、何ができるか。何を活かせるか。

そこが1つでもつかめないうちに、辞めるわけにいかない。

だって、また環境を変えても同じ結果になるの、さすがにこれだけ繰り返せばわかるし。


ないものは自分でつくらないとしょうがない。

仕事ができる人がよく言うその言葉、適当に流していたけど、文字通りないものはつくるしかないのだ。

子どものころから、いつも周囲が変わることを期待した。今はダメだから捨てよう。待っていれば、誰かがなんとかしてくれた。そして合わない環境からは去って、別の場所を探せばいい。

周りの人がそれがだんだん通用しなくなることに気付いて自力を発揮しようとさせてからも、僕は環境の変化を待つことにしがみついた。

結果わかった。本当にほしいものは与えられない。自分でつくるしかない。



僕はバスケがうまくなりたい。30歳を過ぎてから始めたバスケだけど、うまくなりたい。

練習する場所が欲しい。ゴールがある体育館で練習したい。

一緒に向上しようとする仲間がほしい。


だから、僕は、自分のチームをつくりたいと思います。

身体が動くうちに本気で走りたい人、青春に後悔がある人、「自分を変えたい」強い願望を持ちつつも、きっかけがなくてあいえでいる人。

そういう大人の初心者が集まって、バスケに思いきり打ち込めないだろうか。

自分以外にそう思っている人がどれだけいるかわからないのだけれど、とりあえず旗を立ててみたいと思います。


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