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13/11/30

「【教壇から見た世界】カンニングシークレットマニュアル。生徒がカンニングしたとき、僕はどう対処したか。3【対決編】」

Image by Olia Gozha


その生徒の印象。

やや小太り。

でも髪はなかなかいかしてる。

悪い感じは無い。むしろおっとりした印象だ。

一見すると、新聞配達の好青年。そんなところだ。

僕はあえて間をためてこう尋ねる。

僕:「。。。なんで呼ばれたかわかってるよね。。」


生徒:「え、よくわかんないです。なんでですか?」


あ、そっち!?そっちいっちゃうの?

そっかー、そっちいっちゃったかー。

じゃあ、こっちもやり方変えちゃいまーす。


僕:「いや、見たんだよ。机の中に携帯が入っているのをさ。   」


生徒:「。。。え、そうですか。。。」



僕:「うん、そうですかじゃなくって、

   そのこと自体が不正行為と思われるんだよ。」


最後の論は微妙だ。明確ではない。

大人のせこいハッタリだ。


でも、あくまでクールに。

ことばからできるだけ感情を削ぎ落して。


生徒:「いや、入っていたことは悪いですけど、電源は入れてないですよ」



僕:「あのー、見たんだよ。。。電源を入れて動かしているところをさ」


これは事実だが、

戦略としてはパッとしない。

証拠不十分の自白誘導。


サスペンスだと一番面白くないパターンだ。

だが、僕はもうこれでいくことにした。

僕:「試験監督という立場の人間が証言しているから、

   そのこと自体が証拠になるのさ、不正行為のね。

   もう一度聞くけど、やったの?」

生徒:「・・・・・・」


僕はトーンを落とし、怒気を強め、口調も変える。


僕:「あのー、お前が目先の利益だけを見ているのが問題なんだろ。これはお前だけの問題じゃないんだよ。お前がその行為をすることは、周りを侮辱することにもなるんだよ。何故だかわかるか。フェアじゃないからだよ。一生懸命やっている人の労力も水の泡になるんだよ。たしかに絶対評価だ。たかが数字だ。けど、その数字に安易にいくようになってほしくないんだよ。頭悪くてもいいんだよ、バカでもいいんだよ。一生懸命にやれよ。」


ドキッとする。


実はこれは自分に言っているのではないか、


そんな疑問が出るが、

まー、とりあえず置いておこう、

まずはこっちを続けなければならない。



生徒は黙っている。


僕はスイッチが入ってしまった。

僕:「いいかげんにしろよ、コラ、お前の何が問題かわかってんのか。正直に言わねーことだろ。ここにお前だけ呼んだのは、他の連中に知られないようにするためじゃねえのか。お前のプライドとか勇気とか大事にしているものを、ただ知りたいだけだろ。こっちだって腹割って話してるんだ。お前の心意気見せるのが筋だろ。」

生徒涙目。


僕:「あ、ごめーん!、ごめーん!本当はそんなつもりないのー。ビジネス!仕事!お・し・ご・と。それだけなんですー」


とは言えない。でも本心。


生徒:「・・・すいませんでした。。。本当すいませんでした。。。」


生徒嗚咽。職員室で泣きじゃくる。



通り過ぎる生徒驚く。

他の教師もなぜ泣いているのか、わからない、

あ、でもなんかあったのねー、くらいだ。

こんなの日常茶飯事だ。


僕:「・・・もういいって。」


と一言言って、

肩をポンとたたき、その場をさる。


決めすぎか、自分。

酔いすぎか、自分。


確かに一時期、

僕は任侠映画に狂っていた。

そこでのことばのやり取りに夢中だった。



飼っていたインコの名前も、

高倉健の「健」の字と、

菅原文太の「太」の字をとって、

チッチ

にしたのも事実だ。



でもこういう疑問も沸きおこる。


僕は本当に生徒のためを思っていったのか、と。

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