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13/8/11

ヨーロッパ自転車旅の途中、アムステルダムで知らないおじいちゃんとサッカーTV観戦した話2

Image by Olia Gozha

【前回まで】

アムステルダムで、見知らぬおじいさんに、晩ご飯に誘われた。

「学校の先生だった」というおじいさんの言葉を信じ、ついていくことにした。

おじいさんの家へ。

全然乗り方の分からないトラムに、おじいさんの見よう見まねで乗る。

チケットはおじいさんが買ってくれた。

トラムから見る郊外のアムステルダムは、どこまで行っても同じように見えた。

オレンジ色のレンガ造りの2,3階程度の高さの建物が、どこまでも。

店や広告だけが場所ごとに違い、よく目についた。

中心部から30分ほど。おじいさんとともにトラムを降りる。

晩ご飯の前に、一旦おじいさんの家へ。

レンガ造りの2階建てで、長屋のようになっていた。

1Fには別の人が住んでいるようだった。


2Fのおじいさんの家におじゃまする。

8畳ほどのリビングのソファーに案内された。

テレビと、ガラスのテーブルと、壁じゅうに立ち並ぶ本棚。

1LDK、だろうか。

決して広くはなかったが、1人で暮らすには十分な大きさに見えた。

ふと、本棚に置かれた写真立てに映る、壮年の男性の姿が目に入った。

どうやら、このおじいさんではない。

奥さんや子どもはいないのだろうか。

なんとなくおじいさんに訊いてみた。

「おじいさんは、ここに1人で住んでるんですか?」

「ああ、1人で住んでいるよ。つい最近、旦那が亡くなってしまってね

「あぁ、そうなんですか…。どれくらい前ですか?」

「3週間くらい前かな」

「それは…寂しいですね」

そっか、旦那さん最近亡くなっちゃったのか。

だから寂しくて、おれを晩ご飯に誘ったのかな。

ちょっと申し訳ないこと聞いちゃったかな。

と思いながら、一度ちゃんと考える。

今このおじいさん、"husband" って言ったよな…?

本棚に置かれた写真立ての写真を見る。

よく見ると、別のおじいさんの写真の横に、

2人のおじいさんが肩を組んで写っている写真があった。

まるで、夫婦のように。

あっ。

同性婚のできるオランダで何かを察した僕は、

それ以上おじいさんが1人で住んでることに対して触れるのはやめた。

おじいさんが言う。

「じゃ、晩ご飯食べに行こうか」

いろいろと真実を察してしまった僕は、

おじいさんの家に自分の荷物を置いて、

おじいさんとともに晩ご飯を食べに向かうのであった。

つづく。


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