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13/5/11

子どもを亡くして社畜をやめた話②社畜ライフ

Image by Olia Gozha

子どもを亡くして社畜をやめた話②社畜ライフ



会社について

おれはその頃

とある中小企業の営業担当だった


その会社は業界の中でもニッチな商材に特化しており

少しでもその商材に関わった事があれば

まず知らないという人はいないが

商材自体の社会的認知度がそれほど高くない為に

会社名を言っても

ほとんどの人が「?」となる

そういう会社である




例え話をすると




「伊藤壇」




というプロのサッカー選手がいる



この選手は

Jリーグを経てから

日本以外のアジア諸国のプロリーグでプレーをする

という選択を取った第一人者で


海外のマイナーなリーグで活躍する日本人サッカー選手をチェックする

という趣味を持っている人であれば

知らない人はいない選手なんだけど


そもそも


海外のマイナーなリーグで活躍する日本人サッカー選手をチェックする

という趣味を持っている人自体が少ないので

この話を読んでいる人の中でも

「伊藤壇」

と聞いて

すぐにピンと来る人はほとんどいないのではないかとおもう





そういう認知度の会社である





おれが所属していた部署はそのニッチな商材に対して

さらに特定のニーズを持った顧客にターゲットを絞り込み

専用にカスタマイズされたサービスを売りに商売をしていた



その為



営業といえど相応の専門知識が必要で

技術革新が著しい分野でもあり

またイレギュラーが多い商材であったので

それだけ情報の咀嚼に時間を必要とし

外回りの営業活動と合わせると

日々の業務が長時間化する素地は十分にあった



有意義な仕事

しかし「社畜」というからには

おれも自ら進んでその方向へと向かっていたわけで

実際に仕事は楽しくやりがいのあるものだった



専門性を有し複雑な商材を扱う

ということだけでも



誰でもいい

どこの会社でもいい

というわけではなく

おれでなければならない

ウチの会社でなければならない



と思えていたし

それが自分自身を恍惚とさせる一因となっていた



より複雑で難易度が高いプロジェクトに携わる為に

日々専門知識の習得に勤しみ

また社内での立場を確保しようと躍起になった



あの頃は

会社や自身の部署に属することが

ある種の誇りになっていたし

その組織の中で成功することこそが

人生における第一義的な目標だと思っていた





自然とおれの生活と精神は会社へと傾倒する




社畜ライフ

その会社には中途での入社だったのだが

入社して間も無くから

退社時間は23時を越え

そのうちに24時になり

入社して半年も過ぎた頃には

週の半分は帰宅せず

夜中まで仕事場にいて

睡眠は自分のデスクか漫画喫茶やカプセルホテルでとり

土日のどちらかは休日出勤となっていった



もちろん家族と過ごす時間はほとんど無い



しかし



ここまで書いていて見返すと

このくらいの勤務時間であれば

それほど珍しくもないのだろうなと思う



なぜ皆それほどまでに働くのだろうか



おれの場合

「そうしたかったから」

としか言いようが無い



収入面で考えると



あれだけの時間働けるのであれば

8時間で終わる派遣社員の傍ら

さらに夕方から夜間のアルバイトを掛け持ちするのと

さほど変わらない程度の給料であったし

残業代は一定の時間数以上は出なかった



青天井のインセンティブがあった訳でもなく

終身雇用による定期的な昇給が見込めた訳でもない



間違いなくあの時俺は

仕事をするのが「気持ちよかった」だけだった

いまではそう思う



経営者でもなく

フルコミッションで稼ぎたいだけ稼げるわけも無いのに

そういう自分の「気持ちよさ」の為に

常軌を逸して長時間働いている人間が

いわゆる「社畜」というものだとおもっている



そしておれのような社畜が集まり

そういう人間の行動を

諌める規則が機能していなかったり

むしろ褒め称えてしまう様な組織が

ブラック企業と化していくのだと思う



特に数十人単位の小さな組織では

そのリーダーがおれの様な社畜であったなら

ブラック化すること待った無しである

自分のほかにあと2・3人

主要なポジションに社畜を配備すれば

自分が「気持ちよく」仕事をすることが出来る組織を作り出せる




被害者は




不本意ながら社畜のペースに合わして働かざるを得ない

「気持ちよくない」人たちや

「気持ちよく」なってる人の家族である





おれの場合では妻がその被害者だった





むすこである「はじめ」を亡くすまで

おれの社畜ライフは加速する一方だったし

彼を亡くしてなお

当分の間それが変わることは無かった


あのときの彼女の孤独は

おれが自ら進んで作り出したものであるし

おれは彼女の悲しみから逃げる為に

仕事に没頭しようとした





あの時間を取り返す術は無い









おれの所属していた会社と部署には

組織をブラック足らしめる環境と人間がそろっていた


次回は

もう少し詳しくこの組織と

組織を構成するキャラクターについて説明したい

この手の話にありがちな内容なんだけど



以下次回のお知らせ

  • 課長倒れる(3ヶ月ぶり7回目)

  • インシュリンを腹に突き刺したまま眠る部長

  • セミナー好きの社長

  • 凹むデスク

  • 山手線でローキック



遅筆ですが読んで頂ければ幸いです



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