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何の因果で

Image by Olia Gozha

 私は久美子。名前はとっても平凡。

母の久子に美が入っただけですし。学校に通っている頃は1クラスに5,6人はいる名前。

生き方もごくごく平凡でした。親に負担のかからないよう、中高大全て公立ですませ、バブル前の景気の良い時代の就職だったので、何の迷いもなく今でいうところのIT企業にポンと就職。

仕事はプログラマー。優雅にオシャレして出社し、残業はしても掃除をすることも問い合わせの電話にでることもしない。自分に与えられた仕事だけで満足し、他の仕事をしてみたいと思うこともなく、何の為に仕事をするのか考えもせずにいました。

今の私から見ると何しに会社に行っているんだいと怒りたくなるほどのんびりした仕事ぶりの正社員。

そんな恵まれた職場に就職して、わずか2年足らずのお勤めでさっさと結婚退職して専業主婦におさまったのでした。

もー、私のバカバカーーーー!

せっかく勝ち取った正社員の椅子を惜しげもなく捨てることが後々どれだけ愚かなことだったか、当時の私は知る由もなく、24時間自由時間の専業主婦になれたことが何より嬉しかった。

 今の私から見ると若気の至りとしか言いようのないバカッぷりですが、専業主婦は当時の私の憧れであったのです。

単に毎日家に居たいから、働きたくないからという理由ではありません。

 私が子供だった頃、家はDV環境にありました。ごく一般的に言うと父親が暴力を奮うケースが多いでしょうが、うちの場合、父VS母の暴力沙汰が日常茶飯事というちょっと変わった状況です。

 両親が私と4つ上の姉に直接暴力を奮うようなことはほとんどありませんでしたが、両親ともに大酒呑みで、酔った勢いで怒鳴り合いは通常モード、さらに二人で取っ組み合いの喧嘩もしょっちゅう。

 父は室内装飾業の自営業者で腕はいいけど営業力0。仕事に息詰まるとすぐに酒に逃げる人でした。

母はそんな夫を献身的に支えるどころか、さっさと水商売に才能を見出し、ほぼ毎晩家を空け、帰ってくるときは酔っぱらっている。稼いだお金は家計の為に、もしくは子供の為になら誉められますが、着物や交際費などほとんど自分の為に使い切ってました。

母が連れてくる仕事関係のオトモダチはみなさん、水商売関係者。まだ小学生の私の前でも平気で2号サンとか認知されてない話とかしてましたっけ。

 自分に暴力が奮われないとしても、大人の怒声や喧嘩を目の当たりにして恐れを抱かない子供はいないでしょう。小学生の頃、姉と二人で、酔った父をどうすればよいのか途方に暮れたことが今でも記憶の片隅に残っています。お母さん早く帰ってきてと願ってもいつまでたっても帰ってきません。ようやく帰ってきても酔っ払いが二人になってさらにひどい状況になることだってありました。

 こうして文章にするととんでもない両親ですが、とりあえず生活には困らないように育ててくれていたので、その点だけは感謝しないといけませんが、やはり子供にとって良い親とは言えない親で、なんでうちの親は他所と違うのだろうと思い続けていたのです。

 特に母親。母は料理上手ではあるのですが、家庭的なところがほとんどない人でした。お友達の家に遊びに行って誕生日に手作りケーキが出て来たときの驚き。子供のことを一番に考え、自分のことより、まず子供というお母さんが欲しかった。いつも家に居て家族のことを大事にするお母さん。うちの母親とは真逆な母に私はなりたかったのです。


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