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16/12/12

【第18話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。

Image by Olia Gozha

甘いもの祭り

老健に入ってからも、私と姉は毎週のように面会に行った。父は麻痺があるものの、内臓的な点では何ら問題がないため、ご飯さえきちんと食べられれば、基本何でも食べて良かった。

唯一、グレープフルーツだけは高血圧の薬に影響してしまうのでダメだったが。


父は昔から酒もタバコも一切やらない。ちなみに母は酒は好きだがタバコは吸わない。

なぜ娘二人は酒もタバコも好きなのか。どこの遺伝もってきた。


老健に関わらず、集団で生活するところは大体禁酒・禁煙だ。そういう意味では、そこで苦労する(させられる)ことがなかったのは助かった。


その代わりなのかは分からないが、父は甘いものが大好きだ。

フルーツ、スイーツ、いちご牛乳、ミルクティーなどなど。

病院では基本的に飲食の持ち込み(?)は禁止だったので、私達はここぞとばかりに、お菓子やらフルーツを買ってきては父に食べさせた。

あまりに口に詰めるので、皿のものを遠ざけると、まあ怒る怒る。

怒ったところで、少し時間を空ければ、それを忘れてしまうのだけれども。


でも、私達はできるだけ父に食べてもらいたかったから、父が体調を崩さない(お腹痛くなったりしない)程度を踏まえて、できるだけ色々持っていった。

きっと、食べられなくなったら先は長くない。

食べられる時に、できるだけ美味しいと思えるものを、一緒に食べたかった。


ワガママ大王降臨

家族水入らずで過ごせる時間ができ、それはとても幸せなことだったが、同時に困ったことも起きた。

父は昔から外面がいい。ものすごくいい。

認知症になっても、そういうのって変わらないのね。

部屋からデイルームに移動するときは、ヘルパーさんにニコニコしていたのに、3人になった途端


「おい、携帯電話はどうした」

自分「ん?私が持ってるよ。」

「置いていけ」

自分「ここのルールで携帯は禁止なんだよー」

「じゃあ、どうやって連絡するんだ!」

自分「私達と連絡したい場合はスタッフの方に言えば電話してくれるから大丈夫だよ。」

「じゃあ、他に連絡したいときはどうするんだ!!」

自分「誰か連絡したい人いるの?今連絡しようか?誰?」

「…」


そして怒りとともに最初のトークに戻り、以下ループ。

同じ会話を続けるだけなら全然よいが、怒りだけが積み上がっていく。


なだめすかして切り上げるのだが、プンスカしている父と別れる時の悲しさよ。

せっかく来たのに!という苛立ちもあって、モヤモヤしながら帰ることも多々あった。


そして、私達は次の一手をうつ。

父との「外出」だ。


つづく

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