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16/7/28

母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。5日目

Image by Olia Gozha

精神科へ行こう


今朝は父を説得することから始まった。


わたし「お母さんを精神科へ連れて行こうよ」

「いかん。あそこだけはいかん。」

わたし「そんなこと言ってる場合やないと思うよ。見たやろ?明らかにおかしいやん。」

「お母さん二度と家に帰ってこれなくなるぞ。」

こういった会話が何度も繰り返されたが結果父は同意してくれた。




この日はすごくいい天気だった。

精神病院の中庭の芝生が青々しく光っていた。


外来は私たちだけだった。

入院がメインの病院なのだろう。


待合室で先生を待っている時、とても不安になった。

本当にお母さんがこのままここから帰ってこられなくなったら。

これからの私たちの生活はどうなっていくのだろうか。


どうしても悪い方、悪い方へ考えてしまう自分がいた。



アルコール依存症ですよ


診察室には三人揃って入った。

母は落ち着いていた。

どこに来ているのかわからない様子でもあった。


先生は若干太っていて、大汗をかいていた。

汗がボトボト落ちる机上に向かったままカルテをずっと書いていた。

一切こちらを見ない。


大丈夫かな、このお医者さん…


不安が増した。


昨日までの様子を話す。

倒れたこと、幻覚が見えること、計算ができないこと。


医師「お母さんはお酒を飲まれますか?」

わたし「はい。大量に飲んでいました。」

医師「ここ数日は飲んでましたか?」

わたし「いいえ。2日前くらいから飲んでいません。」


お酒を飲んでいた、ということは一言も言わなかったのになぜわかったんだ?

この人はめちゃくちゃ当たる占い師かと思った。


医師「昨日倒れたでしょう?それから以前の2日ほどは飲んでいないと?」

わたし「ええ、そうなります。」

医師「お酒をずっと飲んでいる人が急に飲むのを止めたら、48時間以内にてんかん発作が起こります。それで倒れたんでしょう。」


医師「幻覚が見えるのは、お酒が抜けてくる時に起こる離脱症状です。」


医師「お酒をずっと飲んでいると、ビタミンB1が不足します。ビタミンB1が不足した状態が続くと、アルコール認知症、ウェルニッケ、コルサコフ症候群となってしまいます。計算ができないのはビタミン不足のためと思われます。」

わたし「コル…なんですか?それ」

医師「重い脳の病気です。認知症によく似ています。こうなってしまっていたら回復しません。」


医師「ビタミンBを大量に輸液する必要があります。これから点滴しますね。」

母だけとなりの部屋へ行き、点滴を受けることになった。


医師「お母さんはアルコール依存症です。」



医師「今は圧倒的にビタミンが足りていません。お薬を出します。このビタミンの薬は必ず飲んでください。必ずですよ。」



医師「今日の点滴と、この薬でしばらく様子を見ます。眠れてないでしょう?」

わたし「あっ、はいっ。…眠らないんです。」

医師「眠くなるお薬も出します。それとお酒を飲みたくなくなるお薬も。」



眠らないのもお見通しだった。


このままこの人に壺を勧められたら、思わず買ってしまう。

それぐらいの影響力があった。


この医師の株が高騰した瞬間だった。


母、暴れる。


となりの部屋で点滴を受けているはずの母が急に叫んだ。


「ぎゃーっ。これは何?私は何かの実験台にされてるの?イヤだっ‼︎これはイヤだー‼︎」


駆けつけると、母は点滴を引っこ抜いた。
血がピューっと吹き出し、辺りは血だらけになった。

医師「今日はもう帰って良いよ。お家でゆっくり休んでね。」

私たちは何度もお礼と謝罪をして帰路に着いた。



やっと眠れた

点滴はあれほど嫌がったのに、薬を飲むのは抵抗がなかった。

血圧の薬を毎日飲んでいたからか?


母のツボがよくわからない。


薬を飲んで眠った母は、もう薄眼を開けたり、瞼が痙攣したりしてなかった。

その様子を見て、私たちは今日は見張り番はしなくてよさそうだね、と

母と同じ部屋に寝た。

久しぶりに私も父も母もよく眠れた。

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