top of page

16/5/23

FtXTVが、人生を諦めるまで①

Image by Olia Gozha

私の中には、男性と女性の両方が棲んでいる。


私が自己の性を認識したのは18歳の頃だ。
とはいえ、小さい頃からそれらしき兆候はあった。
普通の女の子が興味を持つようなものには全く惹かれなかったし、
ごっこ遊びをするときは“戦う何か”の役を好み、
携帯可能な少し長い棒をいつも探していた。


日本で『性同一性障害』という単語が表出したのは、今から15年ほど前だったと思う。
当時テレビを賑わせたのはFtM、つまり、
女性として生を受けつつも心の性別は男性という人で、
私は「こんな障害が存在したのか」と驚き、
そしてごく自然に「私もこの人の仲間なのではないか」と思った。


ただ、この頃はそこまで深刻に考えていなかった。
何故なら、学校に行けば私と同じように、男っぽい女の子はたくさんいたからだ。


私が本格的に悩み始めたきっかけは、それから数年後。
同じように“男っぽい女の子”だった友人が、
テレビの男性と同じく、FtMTGだったことが判明してからだ。


混乱する私に、親は「友達に影響されすぎ。気にしない方がいい」と言った。
そして、そう言われた私も気にしないことにしていた。


中学高校と女子校に進んだことで、感覚が麻痺していたのかもしれない。
女子校はどんな子でもそこに存在する以上は等しく女子であるが、
男女共学であればほとんどの男子は男の子らしく、女子は女の子らしく在るはずだ。
だから、大学で男女共学に行けば、自然と“女の子”になるだろう。


親はきっとそう思っていたし、私も何の根拠もなくそう思っていた。


考えが甘かったのだ。
自分の中にほとんど存在しないものなど、出せるはずもない。


何も考えずに大学に進学した私は、
自分が世間一般の“女子”とはかなりかけ離れていることを知り、急速にこじらせることになった。
「自分は女子として欠陥品なのか」と悩んだり、
「いや、でも男に媚びる必要ないよな」と斜め上の発想に至ったりしながら、
事態は何ら快方へ向かうことなく月日が過ぎて行った。


数ヶ月おきに「これでいいんだ」「これじゃダメだ」という無限ループを繰り返す日々。


そんな中で自分を見つめ直すきっかけをくれたのは、
奇しくも私を思考の渦へと引きずりこんだ友人だった。
(※「引きずりこんだ」というのは言葉の綾であり、そこにマイナスの意図はありません。)

←前の物語

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page