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15/10/14

空を飛ぶことをやめてから。♯3

Image by Olia Gozha

きっかけなんてこんなもの

 「やっぱり小さい頃からの夢だったんですか?」良く聞かれる質問の一つ。

聞いてくる人に悪気は無いし、僕自身も特に嫌な気はしない。ただ、いつも僕の回答は一つ。「たまたま、受かっただけの運が良いやつなんです。」とだけいつも答える。

いつもこんな質問の回答なんて相手によって変えているが、今日だけは少しだけ本音で書きたい。

 就職活動を始めようかと考えていた矢先。実家に帰ってあるドキュメンタリーを見ていた。

日本航空123便墜落事故のドキュメンタリー。1985年(昭和60年)8月12日月曜日18時56分に、東京(羽田)発大阪(伊丹)行同社定期123便ボーイング747SR-100(ジャンボジェット、機体記号JA8119、製造番号20783)が、群馬県多野郡上野村の高天原山の尾根(通称「御巣鷹の尾根」)に墜落した航空事故である。

 1985年と言えば、僕はまだこの世に生を受けていなかったし、それで言うと、全く形をなしていない状態。父親と母親がちょうど結婚をしたのがこの年だった。僕がこの世に生まれて数十年後にそのことを知るが、時代は平成になり、僕も生を受けて、時代を経て、この事故のことも知る。多くの方には申し訳ないが、実は、僕はこの事故の影響を受けてパイロットを目指した訳でもない。ただ、未だに思い出す光景が、この映像を見ていた実家の光景であるので、もしかしたら、そのときの光景がきっかけなのかなと最近、良く思う。母親はこのテレビ番組を号泣しながら見ており、父親が母親の肩を抱きながら、横で見ていた。その両親を僕は後ろの椅子からずっと眺めていた。墜落よりも事故よりも、この両親の珍しい光景に少し不思議な感覚とうれしさとなんとも言えない気分だった。

 ただ、見終わった後に母が、僕に向けてかけた言葉が秀逸で、「あの日の次の日のフライトは震えるくらい怖かった。ただ、パイロットを信じるしかなかった。」そう、母親は、僕に話をしてくれた。そのあと、事故機のブラックボックスを聞き、本当に死ぬ間際のパイロットの諦めない姿勢を感じたのも印象的だった。僕が何となく、パイロットというよりも、航空業界に興味を持つには強すぎる経験と言葉だった。

 かといって、すぐにパイロットになろう!なんてそんなかっこよい話ではない。僕はパイロットよりも先に、前出していた通り、航空業界に惚れていた。目の前で両親が泣く姿を見て、彼らが見た世界を見たいと思うようになった。これが僕の就職活動のスタートだった。事実、同期も含めて、パイロットに小さい頃からなりたかった人は少ない。小さい頃からなりたかった人はおそらく、普通の4年大ではなく、航空学校にいっているはずであるからだ。

 ただ、おぼろげながら、航空会社にいきたい。この両親、特に母親が見てきた光景をこの目で見たい。そうして、就職活動をスタートするのである。ちょうど、大学3年の秋のことである。

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