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15/4/1

【第七話】『そして、旅に出る』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

Image by Olia Gozha

出発前夜…





準備は整った。



僕は明日、限界を見に行く旅に出る。



「頑張れ!」と背中を押してくれた人たち、


「気を付けて。」と心配をしてくれた人たち、


「やってみなさい」と送り出してくれた家族、



今まで僕を支えてくれたすべての人たちに感謝をした。



「ありがとう!」

「僕はやってみないと、納得しないと前へ進めないから。」

「納得するまで、答えが見つかるまで、旅に出ます。」



もちろん、周りの人にはこの旅が、

死に場所を探しに行くためだとは言っていない。



「死んだらごめんね…。」



僕は心の中でそう呟いた。




ここまで、驚異的な行動力で準備してきたけど、

正直言って、めちゃくちゃ怖い。




道は?

ちゃんと合ってるのか?

一日25㎞を何日も歩けるのか?

夜は?

どこに泊まる?

事故にあったら?

本当にやれるのか?

もう誰にも会えないのか?

僕は本当に死ぬのか?



一日25㎞の道のりを歩くことはもちろん、キャンプだってしたことない。

一人で旅行すら行ったことない。

どこまで行けるか分からないから、宿だって予約してない。

限界に挑戦したことなんて、一度も無い。



一つだけ分かっているのは、道は繋がっているということ。



本当に何も知らなかったから、


「日本海まで歩こう!」


なんてぶっ飛んだ決断をする事が出来たのだが、

ほんの少しでも知識があったら、絶対にやっていないだろう。



無知とは、時に爆発的な原動力になる!


が…


少し現実に近付くと、とても大きな不安要因にもなる…。




急に恐怖心が襲ってきた。




でも、自分で決めたことだ。



「死ぬときは死ぬ。」



それが僕の運命なら、それでいい。



「運命(さだめ)ならねぇ…」



風の谷のナウシカで、大婆様が言ってた。



時に身を任せればいい。


起きてしまったこと、これから起きること、

すべてを受け入れるしか残された道はないんだ。



でも…それでも…



「怖いよ…」





すべてを受け入れろ!


すべてに身を任せろ!



そして、最後に運命を決めるのは、自分だ!

自分の意志だ!



その意志が、「死」だとしても、

「生」だとしても、

それは僕が納得して選んだ答えなんだ。



後悔することなんて絶対に無い。





覚悟は決まった。


さぁ、出発しよう!



そして、旅に出る…



2013年10月14日。


朝の5時起床、

6時半の電車に乗り、スタート地点の相模湖駅へ向かう。





少しの不安はあったが、ワクワクしていた。


初めての一人旅。


僕は今までやりたかった夢を実現するのだ。


高尾山へ行く登山客に混じりながら、相模湖駅に到着。



いつもより早起きなのと、緊張で、

う◯ちがしたくなった…。



最高の状態でスタートしなければ。


僕はトイレに向かう。



事件発生…



荷物がデカ過ぎて、個室に入れない…。


荷物を先に入れるが、今度はドアが閉まらない…。


その間にも襲い来る便意…。


ドアを閉められても、ズボンが下ろせない…。


タイツが脱げない…。


スタート直前、僕はトイレでパニックに陥る。




なんだろうね。


トイレが見えた途端に急に便意が襲ってくるのって…。


そんな時に限って、ベルトが外れなかったり、

ボタンが外れなかったりするのって…。


なんでだろうね…。


不思議だよね…。





………。





少し時間はかかったが、

いつもより入念に搾り出し、体調は万全だ!






しかし、このデカイ荷物…。



屈めば、前に倒れ込んでしまう。


背中を反れば、そのまま後ろにぶっ倒れてしまう。


僕の身体は、荷物に遊ばれていた…。



「重過ぎる…。」



間違いなく、詰め過ぎだ。


うちには体重計が無いため、何kgかは分からなかったが、

今まで担いだことのない重さだった。



でも、


やるしかない!


歩くしかない!


前に進むしかないんだ!









相模湖駅のロータリーで、ストレッチをした。


天気は晴れ。


暑くもなく、寒くもなく、過ごしやすい陽気だ。


スタートにふさわしい!


天気までもが、僕に味方してくれているような気がした。







歩数計を0にセットする。





AM 8:20…



僕の、


日本海への旅…


自分の限界を探す旅…


弱い自分に勝つ旅…


死に場所を探す旅…


が始まった。




つづく…。



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Image by Jukka Aalho

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