出発前夜…
準備は整った。
僕は明日、限界を見に行く旅に出る。
「頑張れ!」と背中を押してくれた人たち、
「気を付けて。」と心配をしてくれた人たち、
「やってみなさい」と送り出してくれた家族、
今まで僕を支えてくれたすべての人たちに感謝をした。
「ありがとう!」
「僕はやってみないと、納得しないと前へ進めないから。」
「納得するまで、答えが見つかるまで、旅に出ます。」
もちろん、周りの人にはこの旅が、
死に場所を探しに行くためだとは言っていない。
「死んだらごめんね…。」
僕は心の中でそう呟いた。
ここまで、驚異的な行動力で準備してきたけど、
正直言って、めちゃくちゃ怖い。
道は?
ちゃんと合ってるのか?
一日25㎞を何日も歩けるのか?
夜は?
どこに泊まる?
事故にあったら?
本当にやれるのか?
もう誰にも会えないのか?
僕は本当に死ぬのか?
一日25㎞の道のりを歩くことはもちろん、キャンプだってしたことない。
一人で旅行すら行ったことない。
どこまで行けるか分からないから、宿だって予約してない。
限界に挑戦したことなんて、一度も無い。
一つだけ分かっているのは、道は繋がっているということ。
本当に何も知らなかったから、
「日本海まで歩こう!」
なんてぶっ飛んだ決断をする事が出来たのだが、
ほんの少しでも知識があったら、絶対にやっていないだろう。
無知とは、時に爆発的な原動力になる!
が…
少し現実に近付くと、とても大きな不安要因にもなる…。
急に恐怖心が襲ってきた。
でも、自分で決めたことだ。
「死ぬときは死ぬ。」
それが僕の運命なら、それでいい。
「運命(さだめ)ならねぇ…」
風の谷のナウシカで、大婆様が言ってた。
時に身を任せればいい。
起きてしまったこと、これから起きること、
すべてを受け入れるしか残された道はないんだ。
でも…それでも…
「怖いよ…」
すべてを受け入れろ!
すべてに身を任せろ!
そして、最後に運命を決めるのは、自分だ!
自分の意志だ!
その意志が、「死」だとしても、
「生」だとしても、
それは僕が納得して選んだ答えなんだ。
後悔することなんて絶対に無い。
覚悟は決まった。
さぁ、出発しよう!
そして、旅に出る…
2013年10月14日。
朝の5時起床、
6時半の電車に乗り、スタート地点の相模湖駅へ向かう。
少しの不安はあったが、ワクワクしていた。
初めての一人旅。
僕は今までやりたかった夢を実現するのだ。
高尾山へ行く登山客に混じりながら、相模湖駅に到着。
いつもより早起きなのと、緊張で、
う◯ちがしたくなった…。
最高の状態でスタートしなければ。
僕はトイレに向かう。
事件発生…
荷物がデカ過ぎて、個室に入れない…。
荷物を先に入れるが、今度はドアが閉まらない…。
その間にも襲い来る便意…。
ドアを閉められても、ズボンが下ろせない…。
タイツが脱げない…。
スタート直前、僕はトイレでパニックに陥る。
なんだろうね。
トイレが見えた途端に急に便意が襲ってくるのって…。
そんな時に限って、ベルトが外れなかったり、
ボタンが外れなかったりするのって…。
なんでだろうね…。
不思議だよね…。
………。
少し時間はかかったが、
いつもより入念に搾り出し、体調は万全だ!
しかし、このデカイ荷物…。
屈めば、前に倒れ込んでしまう。
背中を反れば、そのまま後ろにぶっ倒れてしまう。
僕の身体は、荷物に遊ばれていた…。
「重過ぎる…。」
間違いなく、詰め過ぎだ。
うちには体重計が無いため、何kgかは分からなかったが、
今まで担いだことのない重さだった。
でも、
やるしかない!
歩くしかない!
前に進むしかないんだ!
相模湖駅のロータリーで、ストレッチをした。
天気は晴れ。
暑くもなく、寒くもなく、過ごしやすい陽気だ。
スタートにふさわしい!
天気までもが、僕に味方してくれているような気がした。
歩数計を0にセットする。
AM 8:20…
僕の、
日本海への旅…
自分の限界を探す旅…
弱い自分に勝つ旅…
死に場所を探す旅…
が始まった。
つづく…。