私のネット人生はこうして始まった。
父はパソコンを修理する仕事をしていた。
そのせいか、私が小学4年生の時点で自分のパソコンを持っていた。
小学校の時はインターネットには繋がってなく、
CD-ROMで英語の勉強をしたり、
アクセサリに入っているカードゲームをしていた。
その頃はそれで十分楽しかった。
けど、段々と物足りなくなっていった。
そして、私は中学に入学した。
中学に入学したら父はインターネットを繋げてくれた。
それが私のネット人生の始まりだった。
最初のうちは検索エンジンで気になるワードをただ調べていた。
時には、ブラウザゲームをしてみたり。
そんな時、ふとあるサイトに出会った。
掲示板
そこの掲示板は、とても数多くのカテゴリに分かれていて
小学生掲示板、中学生掲示板・・美容掲示板などなど、
様々なページがあった。
その時中学生だった私は中学生掲示板を見てみた。
するとその掲示板は今までの掲示板のイメージとは違った。
普通掲示板と言えば、
メッセージを書くと、それに返信が来るまでには1時間や
1日かかるものが普通だった。
だけど、その掲示板は違って
2,3分すればすぐに誰かからの返信が返ってくるぐらい
人が沢山居座っていた。
まるでチャットをしてるかのように。
普段、私は掲示板は見て終わる人だけど、
その日はなんだか書き込みたいと思った。
なので試しに書きこんでみた。
こんにちは
返信が来るまでの間は凄くドキドキしていた。
沢山の人が居るからきっともう皆仲が良いんだ
それなのに急に入ってきて無視されないだろうか・・
なんて、気の弱い私は今にも逃げ出したかった。
すると数分して
こんにちは!初めまして!
っと返信が来た。
その時の私はとても舞い上がっていた。
やった!返信が来た!
その返信の相手は「あい」と言う女の子だった。
人見知りで気の弱い私だったけれど、
顔が見えて無いなら大丈夫と思って
思い切って色々と話かけてみた。
すると、色々話していくうちに
あいは同じ中学1年生なんだとわかった。
そしてその日は平日のお昼だったので、
学校が気になったが、あいは学校に行ってないらしい。
ちなみに私はその日午後から
球技大会の応援があったからその時間に居た。
なので、少しして出かける時間になったので
その時はさようならをして掲示板を閉じた。
掲示板民の一員となった
そうして、球技大会から帰ってきた私は、
真っ先にパソコンの電源を付けた。
私が使っていたパソコンはとても古い物で
起動までになんと15分もかかるオンボロだった。
だから、その起動までの間に着替えなどを済ませた。
いつもは、その着替えは「だるいなあ」と思いながら
やっていたけれど、その日は違った。
ウキウキしながら着替えをしていた。
そして着替えや、家事の手伝いを終えると
すぐさまパソコンの前に座った。
そしてすぐさま掲示板の名前を打って
掲示板に行った。
水色を基調とした、涼しげなデザインとは裏腹に
掲示板民たちは楽しく話をして盛り上がっていた。
けど、その場にあいはいなかった。
少し、残念だなと思いながらも
掲示板にまたメッセージを書くことにした。
こんばんは
そして2、3分まつと返信が返ってきた。
こんばんは!初めまして!
今度話しかけて来てくれたのは
「ベッキー」と言う女の子だった。
ベッキーは本当のアメリカ人ハーフだった。
てっきり芸能人のベッキーが好きなのかな?
なんて思ったけれど、違った。
それと同時にネットと言うのは
アメリカ人ハーフの子も話せるんだとびっくりした。
ハーフの子をそれまで話したことが無かったし、
外国人と言ってもAETの先生で大人ぐらいだった。
けど、このぐらいでびっくりしてたらいけない。
今では当たり前のことになってしまっているけど、
ネットの相手は神奈川県に住んでいた。
その頃私は北海道に住んでいて、
こんなにも簡単に遠くの人とお話が出来るというだけでも
中学生の私は驚きなことだった。
それからと言うもの、
ベッキーと話していると沢山の人が集まってきた。
沖縄県に住んでいる祐(ゆう)
岩手県に住んでいる涼介(りょうすけ)
話していると、皆同い年。
けど性格はバラバラで住んでいる所もバラバラだった。
それからと言うもの、
私は掲示板に暇さえあれば入り浸るようになった。
そしてどんどん新しい出会いをして、
時に喧嘩をして、仲直りをして。
いつのまにか掲示板は私の人生の一部となっていった。
バラバラな皆の共通点
掲示板の皆とは、毎日毎日、
沢山のお話をした。
好きな物だったり、好きな人だったり。
自分の夢の話だったりを沢山した。
けど、皆がなかなか言わなかったことが1つある。
学校での自分について
誰も学校の自分について話す事はなかった。
それは皆話さなくてもわかっていた。
だって皆が似た者同士だったから。
その共通点とは、
学校での居場所が無かった
皆、学校に居場所が無くて掲示板に逃げてきた。
私もその一人だったし、
明るく話しかけてきてくれたあいもベッキーも
皆学校に居場所がなかったんだ。
あいは結構性格がサバサバしていた。
きっと話を聞いていると目つきとかも悪かったんだと思う。
その為か、周りから怖がられてあいは一人だった。
ベッキーはハーフと言う理由でいじめられていた。
最近では芸能人にハーフの人が多いから
羨ましいと思う人が多いけれど、
ベッキーの学校ではハーフを別物扱いして
ベッキーを孤独にしていた。
私は、周りに気を使いすぎてしまう性格で、
頼まれたら断れないせいか
いつのまにか使いっぱしりにされていた。
けど、たまに自分の意思を伝えることもあった。
だけど、それが逆に周りからは生意気だと思われ
仲間外れにされてしまった。
少しして気づいていた。
掲示板に居る皆は学校での居場所が無い分
掲示板で唯一居場所を作っていたのだ。
掲示板は皆にとって唯一安心できる場所だった。
だからこそ、その場所を奪われるのは皆恐れていた。
そして馬鹿にされるのも我慢出来なかった。
心の拠り所を失う恐怖
私の親も含め、皆の親はなかなか理解してくれなかった。
またパソコンばっかりやって
学校で話せばいいじゃない
パソコンの人と会話なんて馬鹿じゃないの
確かに理解がないのは仕方ないと思う。
親の時代にはこんな若者がパソコンを持つことも無かった
それに学校そっちのけでパソコンをやっている。
そりゃ怒るのは仕方がないと思った。
それでもパソコンを取り上げられるのは
とても恐ろしかった。
私の父はとても厳しい人で、
インターネットだけを切られることもあったし
酷い時はデスクトップごと学校から帰ってくると無かった。
私は泣き喚いた。
狂うほどの泣き喚いた。
私にはパソコンが無いとだめなんだ。
掲示板が無いとだめなんだ。
私のことをわかってくれるのは掲示板の皆なんだ。
完全にネット依存症になっていた。
けど、ならざるを得ないんだ。
例えパソコンを奪ったからと言って
ネット依存症は治るものではないんだ。
私はネットのゲームをやりたいんじゃない。
ネットの心の拠り所に居座って居たいんだ。
おわりに
実は、こういった学生が今沢山ネットには居ます。
ですが、ネット依存になる子が増えている
ただそれだけの事実が世間に多く出回っています。
ですが、実際の子供たちの事情は知らない人が多い。
だから今回実際にネットで今まで生きた人生の
半分近くを費やした私から皆さんに向けて
この実話の物語を書かせて頂きました。
もしかすると批判は多いかもしれません。
そんなネットを与えた親が悪いんだ。
ネットに走ったお前らは弱すぎる。
など。
けど本当にそうなんでしょうか?
本当はここに書ききれなかったことが沢山あります。
ごめんなさい。
私は確かにネット人生を送りましたが
今とても幸せに生きています。
そして、ネット人生は私にとってかけがえのない
経験の連続でした。
だから一概に親が悪かったとは思いません。
また、ネットに走ったお前らは弱いとかもしも思った方。
中学生で誰の手助けも無くいじめから這い上がることが
出来る子はそこまで居るのでしょうか?
私の周りのネットの子達は、
親もあまり味方してくれている人が居ませんでした。
中学生は立派な人間かもしれませんが
まだまだ未熟者です。
そんな中学生に出来ることは限られているでしょう。
ネットに逃げた。この言い方はあまり好きではありませんが
これは私たちネット住民の子供達にとって
生きる術の1つだったのだと思います。
現在私は20歳です。
この物語が1人でも多くのネット依存症の子を持つ
親御さんに届いたらなと思います。
また、ネット依存症の子にも届いて欲しいな。
ここに味方は居ますよ。