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14/11/12

双子の姉なっちゃんの話【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】

Image by Olia Gozha


※これは双子の姉、なっちゃんのstoryです。 


こちらから読むと、時間軸が同じで読み進めやすいです^^


その時私は、福岡でパッケージを作る会社のデザイン部署で働いて1年半が経とうとしていた。




 いつか有名なアートディレクターになってやる!!!




そんな夢や期待や野心を抱いて、ワクワクしながらこの会社に入ったのだ。

だけど、1年半経った今、私は憂鬱な毎日を送っていた。




お前この会社が最後の会社になるな




会社のルールという名の、時間ばかりかかる意味のない書類の山。



社長の前じゃガラリと態度を変える大人たち。



速く!とりあえず売れそうなもの!で進んで行く仕事。



そして評価されるのは、笑顔でうまくお世辞が言える人たち。





あれ?私のいた世界ってこんなところだったっけ。

こんなに楽しくなかったっけ。



何が正しくて、なにが良しとされるんだ。




 ー今まで私が大切にしてきたことってこんなことだったっけ。




“何かが足りない” その感覚が1年半ずっとこびりついていた。




そして昨日、先輩から言われた言葉。




先輩「おまえはこの会社が最後の会社になるな。」




私:なほ「え?最後の会社?どうゆうことですか?」



先輩「だって、おまえはもう25だろ?今の彼氏とも1、2年で結婚するだろ?」



私:なほ「う〜...ん。分かんないですけど。」




先輩「まぁ、どっちにしても結婚して、子どもが出来て、育休取って子育てして、あの先輩みたいにパートで職場復帰して、そうなったらもう普通、転職でとってくれるところなんてないだろ。ここが最後の会社だよ。」



私はぞっとした。




ーえ、私の人生そんな感じ?この世界がずっと続くってこと?




先輩「まぁ、普通そんなもんだろ。」




先輩はあくびをしながら眠そうに前を向いたままそう言い放つ。



打ち合わせ終わりの、車の中だった。

外はもう暗くなっていて、慣れた田舎道とはいえ街灯が少なくて危ない。



運転は後輩の私がしていた。

暗がりの中、座席横に乗った先輩の、表情のないその横顔をそっと見る。





どうゆう思いで先輩は言ったのだろう。

きっと無意味なただの世間話だったのだろう。




でも、私の心臓はバクバク音を立てていた。





「この会社が最後だな」


「まぁ、普通そんなもんだろ。」




先輩の言葉が何かの呪文のように耳にのこる。




ー本当のことかもしれない。

 いや、このままの人生だと、普通に考えて私はそうなるのだろう。




ぞっとした。

でも「そうなるのかもしれない。」と思った自分に一番ぞっとした。





この会社に残って、結婚して、子どもを産んで、育てて、パートで働いて、

いつかまた正社員になって、キャリアをつんで、




今のこの、何が正しいのか何がいいのかもよく分からない世界がずっと続いて行くんだ。




 ーあれ?私の幸せってこれだったっけ?




それって楽しいのかな?

これが普通なのかな?

これに慣れなきゃいけないのかな?




仕事終わりの疲れただるい体に、先輩から言われた呪文がうるさくループする。




私の運転する車は、見えない夜の道をぐんぐん進んでいった。





何かが足りない。は何が足りない?





毎日仕事はある。




嫌なことだけじゃない、仕事で楽しいことも少しはある。



なんとなく仲間もいる。



とりあえず売れそう!なものを喜んでくれる人もいる。



愛想笑いも覚えた。



金曜日と土曜日は毎日呑みに出掛けた。



そして気づけばすぐ月曜日が来る。




また一週間が過ぎたんだ。




そう思う日が何度も何度も、来ては過ぎて行った。




時間が過ぎるのがとても早く感じる。だけど何をしてたかはよく覚えていない。



違和感や何か足りない感じを隅に隠したまま、そんな日が流れていた。




だけどいつも“何かが足りない”




その思いだけはいつも離れなかった。



でも何が足りないのか分からない。どうすればいいのかも分からない。



このループからどうにか抜け出したい。“足りない何か”を埋めたい。



私は気がつけば、異業種交流会や色々なセミナーに通うようになっていた。

自己啓発本もたくさん読みあさった。




壇上に立つ成功者と言われるキラキラした人に会って、


私のような何かを探している頑張っている仲間が出来て、

実践できるか分からない知識が増えていった。


周りの友だちからも「お前は本当にポテンシャル高いな~」なんて言われるようになった。


なんだか“頑張っている自分”が心地いい。




だけど、それも最初のうちだけですぐに“何かが足りない”が顔を出した。




双子のまあちゃんからの人生を変えた提案



そう、その日はとても星のキレイな夜だった。


車で会社から帰る途中にいつもの本屋に寄る。


田舎ならではの、ただっ広い駐車場のある本屋からは、星空がよく見える。





私:なほ「キレイやなあ。」





思わず自分の口から出た言葉に、少し懐かしさを感じてしまう。

星空をみて「キレイ」と思ったのはどのくらいぶりだろう。



心なしか今日は、いつもより星空がとてもキレイに見えた。





私は、ただっ広い駐車場の真ん中に車を停めて、フロントガラス越しの夜空をぼーっと眺めていた。




自己啓発本を読み出してから、会社帰りに本屋に立ち寄るのが私の日課になっていた。



だけど、今日は新しい本を買いたい気がしない。

本屋に併設しているカフェで「今日学んだ事」をノートに書き記す気力もない。

自己啓発本も、異業種交流会も、本当は何だか違うと、どこかで気づいていた。




車の中で、ただ星を眺める。星も月も、小さいころと何も変わらずキレイに輝いている。

そういえば、星を見るのが大好きだったんだ。



双子のまぁちゃんと、布団に入ってからも夜空の下でいろんな話をした。



なかなか寝ないから、いつも両親に怒られてたなぁ。

星空は私たち二人にとって、とても特別で懐かしかった。



胸があったかいものでいっぱいになる。



東京にいるまぁちゃんは元気だろうか。




夜空の下の車の中は、久しぶりのゆっくりとした時間が流れていた。





私:なほ「今日は本当に星空がキレイ.....。」





ぶぶぶっ…








その時、ジュースホルダーに置いていた携帯がガチガチぶつかりながら合図した。





  着信先:まぁちゃん




まぁちゃんからの着信だ!




以前は毎日かけていた電話も、

福岡と東京で離れてしまってからは、ほとんどしなくなっていた。




あんなに仲が良かったのに、忙しさに追われて連絡しなくなる日が来るなんて、

子供の頃は考えもしなかった。

ちょうどまぁちゃんを思い出していたところに電話が来るなんて!



久しぶりの電話に嬉しさでドキドキしながら、すぐに電話をとる。




まぁちゃん「もしもし!!!なっちゃん!!!!!!!!!!」




受話器から聞こえたのは、興奮気味に弾けるようなまぁちゃんの声だった。




ねぇ、あの頃の夢、まだ覚えてる?




私:なほ「まぁちゃん!!何かあったん!??今私も、ちょうどまぁちゃんのこと考えてた!!」




まぁちゃんの声は、何だかとてもいいものを運んで来てくれたような声だった。




そして感動で震えているようにも感じる。

電話越しからも伝わってきた。




私は何だか胸が高鳴った。


なんだか普通の電話じゃないことを感じていた。


満点の星空の下。そんなシチュエーションもなんだかぴったりだった。



そして第一声は、予想もしなかったこんな一言だった。





まぁちゃん「あのね、なっちゃん。最近ワクワクしてる?」





 ーーーえ…!




私は一瞬時間が止まったように感じた。


胸がドクンと鳴る。



まぁちゃんは、私の返事も聞かず続けた。



そしてまぁちゃんは提案をしたんだ。

それはこれから私たちの人生を大きく変える、いや、人生を本当の道へ戻す言葉となった。





まぁちゃん「大人になっても、ずっとワクワクして生きていいっていったら、どうする?」




この時、小さい頃のまぁちゃんと毎日ワクワクしてた日々が

映像、匂い、感覚で身体の奥から湧いて来た。






毎日がキラキラしていた。







あの頃、今日誰に会うか、何をするか、いつもワクワクしていた。



布団に入ってからもいつまでも二人で話をした。満点の星空をみながら。





そう、私たちは大人になっても、こんな日が続くと思っていた。




ただ、毎日ワクワクして生きていきたかっただけだったんだ。





私がずっと足りないと思っていたのは

この“ワクワク”だったんだ…!




頭から本当に何かがパカーンと開いたみたいに、私の視界が開けてきた。



色んな感覚が一瞬で蘇った。




私:なほ「まぁちゃん!!!!!そう!!それ!!!!!!私がずっと探してたこと!!!!!!」




身体中にあの懐かしい「ワクワク」した感覚が広がって、私は気づけば大号泣していた。





会社に入って一年半頑張ったけれど、違和感ばかりが大きくなること。


そんな自分をどうにかしたくて自己啓発やセミナーにたくさん通ったこと。


肩肘張って積み上げたプライドも、キャリアも、自分の足りない何かは埋められなかったこと。





受話器の向こうでウンウン頷きながらまぁちゃんは聞いてた。

ふたりともいっぱい泣いた。




気持ちはずっと同じだった。





まぁちゃん「人生なんて自由なのに、誰があの頃みたいにワクワクして生きちゃダメって決めたんやろう?そんなの自分で選べばいいんよね。」



ぐずぐずのまぁちゃんが言う。



まぁちゃん「ねぇなっちゃん。もう一回あの頃みたいに一緒にワクワクして生きてみない?」




まぁちゃんの提案に私はすぐ大きく返事をした。




「もう一回あの頃みたいに一緒にワクワクして生きてみない?」




震えるくらいワクワクする言葉だった。




うん。うん。うん。




何度もうなずく。涙が止まらない。




それは小さい頃からの二人の夢だった。

ずっと、そういう風に生きたらダメだと思っていた。




満天の星空の下で、福岡と東京をつなぐその電話は

私たちの、本当に生きたい人生を思い出させてくれた。



それは、一緒にワクワクして生きる。ただそれだけだったんだ。




決意



この3日後、私は辞表を提出した。

先の事は何にも決まっていない。ただ指標は「ワクワク」することだけだった。



そこからふたりの人生は、予想以上に大きく変わっていく。



*この本編の最新話はこちらです→

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