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14/7/26

インドに一人旅しても価値観が変わらなかった話

Image by Olia Gozha

インドに行こう。


そう思ったのは大学3年の夏に日本一周をしている時だった。

なんとなしに綺麗なサリーを着た人々が自分の目で見てみたくなった。

インドに行って価値観が変わったという話をよく耳にするから、本当に価値観とかいうものが変わるのかも気になった。


一人娘で音大生の温室育ち。小さい頃からピアノばかり。


大学時代にどっぷりと一人旅にハマり、国内海外関わらずふらふらと放浪ばかりをしているのを黙認していた母も、インド行きだけは猛反対した。

母の中でのインドは宗教色が強く人が多くて犯罪の多発する国だった。そう言われれば今度はそれを自分の目で確かめたくなるのがわたしの性格だ。


いざ着くと暑くて人懐っこいインドの人々がそこにはいた。

アジア人なのに金髪のわたしが珍しいのかアホほど写真を撮られて撮られ参ってしまうほどだった



困っている人がいたらどんどん救いの手を差し伸べてくれる。そんな優しいインド人の姿がニューデリーの街角には溢れていた。

きっと少しお節介がすぎて、分からないのに助けようとしてウソつき呼ばわりを受ける羽目になったりするだけなのだ。


インドの男性はとても積極的である。どう積極的かと言うと、どこまでも着いて来る。そしてどこまでも口説き落とそうとする。そのためには炎天下の中宿の前で待ち続けるのも苦ではない。

そこに登場するのがNOの言えない日本人女性である。なにをしても困った顔で笑い続ける日本人。彼らにしてみればそれはOKのサインでしかない。

彼らを責める前に自らの行動に目を向けるべきだと痛感した。



そんなとき旅の途中バラナシで出会った青年がラケシュだ。




バラナシは朝日の似合う街だ。






ラケシュと彼の友人2人と現地で出会った日本人数名で彼の店の屋上で酒盛りをした。インドの夜は蒸し暑くて虫が飛んでて、彼らの買ってきてくれたビールが死ぬほど美味しかった。


インドでは未だお見合い結婚が一般的である。

それについてどう思うのか、恋愛結婚をしたいと感じないのか彼等に問うた。

彼等は言う。両親が大切だから、両親の良いと思った相手と結婚してずっと両親の近くにいることが当たり前だと。両親を放り出すような親不孝なことはしてはならないと。だからお前もこんなところに一人で来て親不孝な人間だなと。


なぜかすんなり納得してしまった。自由奔放に生きているわたしはお見合い結婚なんて考えられない話だった。それなのになぜか納得してしまって、とても自分を省みた。それはインドの蒸し暑い空気のせいかもしれないし、彼の真摯な眼差しのせいかもしれない。


自由恋愛に憧れているだろう、憧れていて当たり前だろう。という前提で彼に問うた自分を恥じた。



そして彼は言う。

バラナシでガンジャ(大麻)を勧めてくるのは日本人ばかりだよと。インド人は決して勧めないのだと。自分の街が大好きだから、自分の街を悪い評判で有名にしたくないからだそうだ。


事実昼間街を歩いていたら、ガンジャをわたしに勧めてきて自分達のホテルに引きずり込もうとしたのは日本人だった。彼等はガンジャを吸いにバラナシに来ているのだと言った。


同じ日本人としてとても恥ずかしかった。



ラケシュ達インド人の頭の中には誰かのためという言葉がいつもあるような気がした。

両親のため。街のため。


現代日本に生きているわたしには彼等ほど思うことはきっとできない。不自由だと思っていた彼等がとても羨ましくなった。



そんなことを教えてくれたラケシュは、数年経った今でもたまに連絡をくれる。

インド以外の国ばかりふらふらと放浪していたが、そろそろ彼等の真摯な眼差しを見たくなってきた。




その後わたしは一文無し状態で飛行機を乗り過ごしインドから帰れなくなるのだが、ここでも空港で寝泊まりするわたしに、余ったサンドイッチをくれる空港のサンドイッチ屋のお兄さんをはじめ本当にたくさんのインド人の優しさに触れた。



彼等のお節介なほどの優しさは、この

誰かのため

という一言に全て凝縮されるのかもしれない。







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