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14/6/25

塀の中へ  11,Trial and error 試行錯誤

Image by Olia Gozha

昼休み。

やっぱり所内の昼ごはんは食べられるはずもなく、ひとりでトルコライス屋へ向かう。

今日こそ食べておかないと、今度いつ来れるかわからない。

すると、なにやら店の玄関が乱雑になっており一枚の張り紙。。。


「来春リニューアル予定。ここの物は持って行ってください。無料!!!」と書いてあった。

無くなっていた・・・


エンジニア2人と行った日がどうも最終日で、だからあんなに混んでいたんだなと納得する。

結局食べられなかった・・・

いったいどんな味だったんだろう??

縁がなかったようだ・・・


仕方なく、別の店で食事を済ませ刑務所へ向かう。

午後からは、ほぼ二人に作業を任せ、わからないところを質問してもらうことにした。


その間に、根木技官と色々お話させていただく。

「パン工場もあるんですね」

根木技官「ええ。あの時の立ち上げは私がやりました」

「えっ?そうなんですか」

根木技官「ええ。パン焼き器の見本市会場へ行きましてね。ドでかいオーブンが必要なのかなと思っていたら3000人分ぐらいなら小さいので良くて。ドでかいのはパンメーカー使うものだということです」

「へぇ」

根木技官「水分量が難しくてね。多すぎたら底の部分に溜まるんですよ。今でも市販のパンで発酵不足のパンがあればわかります」

「なるほど」

根木技官「あの時も試行錯誤でした」


てっきり、印刷のことをずっとやられていると思っていたが、そうではないらしい。

技官という仕事も大変である。

時には受刑者とともに成長しなければならない時もある。

根木技官「以前この中で模範になるような奴がいましてね。仕事もキッチリする。出所するときに間違いないと太鼓判をおして、契約していただいている会社へ送り出したんです。ところが、半年ぐらいで居なくなったそうです」

なんとも、やるせない話である。

根木技官「印刷工場の人間は、他の工場と比べてもいきいきとしていますよ」

「なぜですか?」

根木技官「やっぱり、自分で考えながら、試行錯誤しながらできる仕事ですから。やりがいがあるのでしょう。目を見ればわかります。他の工場だと目が死んでいる奴がいっぱいいますから」

「そうなんですか。この中に農業はないのですか?」

根木技官「今のここではないですね。昔は豚を買っていたんですが。案外酪農はいいんですよ。気持ちが落ち着くらしいです」

「なるほどですね」

個人的には、工業よりも農業の方がいいかもしれないと思っている。自然を相手にすることによって人間の小ささを思い知ることができるし、自分たちの生命の源を作ることによって、命の大切さを考えると思う。


人間というもの、使命を与えられて自分の創意工夫で乗り切ることができる環境ならば、いきいきするのである。

ここの工場の雰囲気を見ていて確信する。

団結力も生まれるわけだ。


そのうちに、予定の時間が来てしまう。

今日は、風呂の日なので14:30で終了。

時間が来ると一斉に号令がかけられて作業終了。

受刑者へのオペレーションも終了となった。


ヒルマンさんに

ヒルマン「あなたの説明、本当に分かりやすかった。前の機械の時は2日しかなかったし、わけがわからなかった。ありがとうございました。とにかくやってみます」

といってくれた。一週間かけて説明した甲斐があった。

ヒルマンさん、谷田さんに慌しく

「頑張って。必ずまた来ますから」

と約束をする。

ヒルマンさんは最高の笑顔で、谷田さんははにかみながらそれぞれうなづいてくれた。

彼らはこれから彼らなりに試行錯誤するのであろう。

心なしか、彼らとの別れが辛く感じた・・・


受刑者が待機している横をすり抜けて、工場をあとにした。

「お風呂はやっぱりこの時間から入らないといけないのですか?作業時間を伸ばして夜に入れることは難しいのですか?」

根木技官「実は建物が建て替わったとき、舎房の各フロアに風呂が設置されたのです。でも使用していません」

「なぜなんですか?」

根木技官「刑務官を増員しなければならないからです。各刑務所には配置できる刑務官が決められています。増員するとなると国民の判断を仰がなくてはいけない。税金を使うわけですから。そうなると今のように集中して管理した入浴システムになってしまうわけです」

刑務所も国の設備。ということは税金で作られている。お役所というところは、国民の目というものを非常に意識する。むやみと使うわけにはいかないということだろう。。。

特に、政権が変わってから経費関係はうるさくなったとのこと。

色々考えながら、管理棟まで戻ってきた。。。

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