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14/6/24

塀の中へ  9,escape 逃亡

Image by Olia Gozha

9月30日

この日は金木先輩と朝からこの街へ向かう。別のお客様のところへ寄ってから、例のトルコライス屋へ行ってみる。

しばらく待っていたのだが、なんだか、閑散な感じ・・・

あきらめて別の店へ行く。

いったい、いつになったら食べられるのだろうか?


今日は13:00〜15:30のまでのオペレーション。

実際に受注されたリーフレットやここの刑務所のリーフレットを印刷してみる。


少し調整し出してみた印刷物を見て、ヒルマンさんや谷田さんはもとより、技官や刑務官まで感心してくれた。ただ、この印刷物に対して一番厳しい質問をくれたのは刑務官だった。

さすがに鋭い!!


スキャンの設定のためにパソコンを確認する。

さすが刑務所だけに、外部とのネットワークは遮断されているし、娯楽にまつわるソフトやデータなども削除されている。

セキュリティーも、外部からの攻撃などは一切ないが受刑者たちが悪用しないように、鍵がかけられており万全な体制が整えられている。


しかし、一台だけちゃんと設定されていないパソコンがあった。

これには、技官よりもヒルマンさんが怒っていた。

一瞬、どっちが技官かわからなくなった。


そうこうしているうちに、時間が来てしまう。

明日は、運動会ということでくれぐれもケガをしない様に二人に伝える。


受刑者がその日の作業を終了すると、工場内に設けられた洗い場で足や顔などを洗う。

制限時間は1分らしい。

その時にみなさんの背中や腕にそれは見事な刺青が覗く。

さすがに最近なかなかお目にかからないので、最初は驚いたがこの頃になると慣れていた。

そういう方は、一様に目付きが鋭いのだか中には本当に優しそうな表情で作業されている受刑者もいる。


人生いろいろ、受刑者もいろいろということか・・・


管理棟に戻り、根木技官、川口技官にお話をお伺いする。

前から聞いてみたかったことをぶつけてみた。

「受刑者の方が外で作業されていますね」

根木技官「はい」

「あの方たちは、もうすぐ出られる方たちなのですか?」

根木技官「おおむねそうです」

「逃げたということはないのですか?」

根木技官「・・・一度、出所予定の2日前に逃げたということがありまして」

「えっ!あるんですか!?」

根木技官「ええ、たった2日が我慢できなかったらしく、逃げたんです」

「へぇ!!!で捕まったんですか?」

根木技官「あの時は・・・刑務所側で捕まえました。48時間以内でしたら刑務所の刑務官に逮捕権があるんです。それ以上でしたら警察に委ねます」

「へぇ。。。やっぱり捕まえたら自動的に刑期が伸びるんですか?」

根木技官「いえいえ、ちゃんと取調べして起訴して、裁判を受けて刑期が伸びるんですよ」

「それは、脱走罪とか逃亡罪とかなんでしょうか?」

根木技官「そうですね・・・詳しいことはわかりませんが、色々な罪で捕まえるようです。窃盗罪とか・・・」

「窃盗罪?なにを盗んだんですか?」

根木技官「作業服です。あれは国のものですから。着たまま逃げれば窃盗ですね」

「なるほど。。。」

すっぽんぽんで逃げればわいせつ物なんとか罪だし、物を壊すと器物破損罪とかなんとかで捕まえるらしい。

根木技官「でも、逃亡も自殺も刑務所の恥なんです。管理不行き届きということで・・・」


社会の底辺で守られているセーフティーネット。



監視することによって彼らの命は守られている。

社会のルールを守れずここに来た人たち。

その人間たちを社会のルールで守っている。


彼らは逃げたいのか?

いったい何から逃げたいのか?

被害者よりも守られている事を彼らは分かっているのだろうか?


反面、必死に更生したいと頑張っている人もいる。

ちょっとしたボタンの掛け違いで、入ってしまった人もいるだろう。

今度こそは社会に戻って役に立ちたいと願っている人達もいる。

本当に難しい問題だと思う。


「僕からみれば、仕事があって食事があって、すみかもある。決して悪く無いと思うのですが・・・」

根木技官「確かにそうなんです。でもあいつらが一番しんどいのは人間関係なんです」

「部屋にいるのは、違う工場の人達何ですか?」

根木技官「いえ。同じ工場の人間です」

「そうなんですか。。。確かにそれはしんどいかもしれませんね・・・」

自分でも職場が一緒で住まいが一緒で、四六時中一緒に居させられたら、うんざりするだろう。

カミさんでもそんなに一緒にいられないと思う。

まして、そりが合わない人間だったら・・・

根木技官「刑が長い人間ほどおとなしくなります。揉め事を起こすと自分が大変になるから。刑が短い、例えば3年ぐらいで出て行く奴は、揉め事も多いし工場を点々とする奴もいますよ」

「例えば、揉め事を起こしたりして 刑務所間の移送なんてあるのですか?」

根木技官「それはありません。あくまでもここだったらここの工場の中だけで職種を変えたりします」

「受刑者の希望はないのでしょうが、技官側の希望は通るのですか?」

根木技官「ある程度の希望は出します。 うちは刑期がなるべく長めの奴を希望します。 でもどうしても引き受けてくれと言われる時もあります」

どこの会社でもあるような人事が、刑務所の中でも行われている。ところがこちらの場合はかなり感じが違うのだろう。

やはり刑務所というところ、色々と考えさせられる場所である・・・

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