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14/6/23

塀の中へ  8,japanese 日本人

Image by Olia Gozha

9月28日

この日は朝一番からの説明。

人懐っこい素晴らしい笑顔でヒルマンさんが迎えてくれる。

彼は本当に働き者である。


このオペレーションに入る前に、マニュアルテキストを送ってくれといわれた。予習の為に居室で読むという。それが彼だった。

日本人が忘れたような勤勉さを、彼は持ち合わせているようで素晴らしい働きを繰り返している。


本当に、なんでここにいるのだろう???


この日はすこしテキストから離れて実戦向けのオペレーションを実施する。

ヒルマンさんからは鋭い質問も飛んでくる。

対照的に谷田さんは相変わらずおっかなびっくりついてくる感じ。

するとヒルマンさんが

ヒルマン「谷田はおやじに強制的にオンデマンドをやれと言われて来たから訳も分からずやってるよ。ちょっとかわいそうだよ」

と言っていた。


しばらくすると

根木技官「ヒルマン、行って来い」

となにやら伝える。

ヒルマン「いや、いいです。これを聞きたいから」

根木技官「いいから、少しだけでも行って来い」

ヒルマン「いいんだけど・・・わかりました。じゃあ少しだけ・・・スミマセン。すぐに戻って来ますから」

と言い残しヒルマンはどこかへ消えていった。

谷田さんと今までの復習をしていると、10分位で彼が戻ってきた。なにか他の用事でもしてきたのかなと思うぐらい短い中座だった。何事もなかったようにオペレーションが再開される。


実はこの時、集会と呼ばれる数少ない楽しみの日に当たっていた。

30分間テレビをみてお菓子が配られるらしい。

ところが彼はその権利を放棄してまでも私の話を聞くことを、仕事を覚えることを選んだのだ。


日本人が忘れかけている勤勉さなのかもしれない。

根木技官「これが谷田だったら、30分目一杯いってますよ」

と根木技官が笑っていた。


なにせ国際色豊なのがここの特徴なのだが、日本人受刑者と外国人受刑者がケンカをしたとすると日本受刑者はボコボコにされるらしい。


日本人なら、ヤクザの親分とか会社の社長とかは遠慮する。組織の怖さを知っているから。

ところが、外国人には関係ない。人間同士の戦いなのである。

刑務官によると、そりゃもう情けなるとのこと。


昔、日本人だけだった頃はもっと統制の取れた行き届いた管理体制だったらしい。

ところが外国人の受け入れ数が増えてくるとやれ人権だ、環境だ、国同士の契約だと大変になったらしい。

そういう面でも、以前より快適な環境になったらしい。



そうこうしているうちに、本日の時間が終了してしまう。毎日の時間が少なすぎる。もっと時間が欲しいと感じる。


管理棟に戻りながら、川口技官に勤務についてお伺いする。

「この刑務所の中で職員の方はどのくらいいらっしゃるのですか?」

「約500名です」

「そうですか。当然、夜勤もありますよね」

「はい。毎日4交代で勤務しています」

「へぇ。4交代ですか。技官の方にも夜勤はあるのですか?」

「ほとんどないです。たまに書類の整理などをする夜勤もありますよ。塀の中ではなく管理棟ですけどね」

「なるほどですね」

初日にエンジニアの佐藤さんに聞かれた鉄骨に洗濯物が干されていた。

洗濯工場の物干しスペースだったのだ。

それにしても、通常の物干しよりも低い。

首吊り自殺の防止なのかなと考えてしまう。


管理棟に戻り、預けていた携帯電話やカバンを受け取り次のアポイントメント先へ向かった・・・


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