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14/8/19

車いすテニスに出会って感激して、このスポーツを報道したいと思っていたら念願が叶って、気付けば世間に追い抜かれてた話 第10章:3度目の金メダル

Image by Olia Gozha

王者ははやり王者だった

K選手は、ずっと肘の痛みを抱えながらプレーを続けてきていた。パラリンピックイヤーの前年の年末には、それでもオペはしないと言っていたけれど、年が明けてからオペを決断した。ラケットを持ってボールを打ち始めたのが4月、5月にツアーに復帰して、ギリギリで9月のパラリンピックまでに間に合わせた。

K選手なら、きっと間に合わせるだろうとも思ったけれど、本当に完璧に調整してきた。アテネでは20歳で初めてのパラリンピック出場。まだ体も華奢で、パートナーに引っ張られながら、ダブルスで金メダルを獲得した。北京は、シングルスで絶対に金メダルを手にしたいという強い思いがあふれて、緊張感がみなぎっていた。

だが、このロンドンでは、逆に勝ち進むにつれて落ち着きが増していくような印象を受けた。決勝は、試合開始前からすごくリラックスできている様子だった。金メダルがかかった試合が進行しているとは思えないほど、K選手からは余裕のオーラが感じられた。今まで見た中で、本当に落ち着いているなーと思った。そして、金メダルを獲ってしまうんだろうなあと思った。

対戦相手はオペから復帰してから、続けて敗れていた当時ランキング1位のフランスの選手だった。過去に幾度となく対戦してきたふたり。もちろんお互いにプレースタイルも知り尽くしている。相手は体も大きく、高い打点からの豪快なサーブと強烈なストロークが持ち味だが、それをK選手がどう攻略していくのかが見どころだった。

結果は、K選手の思惑どおりの試合展開となり、フランス人選手の豪打を押し切ってK選手が北京からの連覇となる金メダルを獲得した。北京のときはドキドキしっぱなしでコートサイドで写真を撮っていた私だけど、今回は「さすがだなー」とニタニタしながら撮っていたような気もする。

通常の取材班は、ライターはライター、カメラマンはカメラマンで役割分担されているので、カメラマンの方は写真を撮り終わったらとりあえず、その試合の仕事は修了。だが、試合の写真、表彰式の写真を撮り終わってから、今度はミックスゾーンという、コート脇にある会見スペースに移動して話を聞かなくてはいけない。

表彰式が終わって、とりあえずカメラ一式持って移動しようとしていたら、テレビ局のカメラマンがすでにミックスゾーンでK選手にインタビューをしていた。通り道がなかったので、仕方なくK選手の後ろをコソコソを通ったのだけど、思い切りテレビに写っていたらしくいろんな人に指摘されてしまった。

こうしてミックスゾーンでインタビューをして、その後記者会見場でもコメントを取って、ロンドンでの取材活動は終わったのだった。

まだまだ原稿書きと写真のセレクトをしなくちゃいけないけど、子供たちを置いて取材に行くということはもうないので、それだけでもちょっとほっとした。車いすテニスの会場のメディアルームを出て、さあ、夫と子供たちと合流してホテルに帰ろうと思ったら……夫も子供たちもどこにもいない!! 車いすテニスの会場の外で待っていてくれているのかと思い込んでいた私は、もうかなりのパニック!!

えっーーー!!?? 電話もメールも通じないし、どうしよう?? どうすればいいの?? えっ?? えっ??

本当にしばらく、カメラも取材ノートも、その他の大荷物も持ったまま呆然と立ち尽くしてしまった。ほっとしたばかりだったのに、またサバイバルなの!?


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