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カビとの対話(追補版)

Image by Olia Gozha

   副題;ばい菌から人類へのスーパーメッセージ                   1999、3、8 (初犯)


世界のベストセラーとなった「カミ(神)との対話」(邦題)

だが、どうやら後になってから追補に気づいた神がさかんに叫んでいる・・・・ような気配を感じる。

あの本にはまだ漏らしていない話があった・・のかな?・・・
まさか、ボクのお漏らしとはちがうだろうな・・・・


・・・・(微かな声が聞こえてくる)・・・・・

・・・え?・・・言い漏らしたこと?・・・・カミトノタイワ・・・の補足編?・・・・・

・・・え?・・・・カビ?・・・・

・・・カビ・・・との・・・タイワ・・・?・・・

神じゃなくて、黴(カビ)!?

どうやら、盛んに肥をかけてきているようだ・・・

うるせえなあ・・・

しかし、ある日の昼下がりの情事後、ついにそのカビとの対話が・・・

==ここからがそのレポート本文==

オレは、ある日の(本当は情事は関係ない)晩、瞑想をすることにした。

いろんな問題でオレは解決したいことが多すぎた。少しは楽になりたい。そんな気持ちだった。果たして初日にうまく行くだろうか?

ちょっと不安と期待が交差した気分であった。

いろんな情報からの半端な知識ではあったが、今日こそ瞑想を始めてみよう。そう決心していた。

そうして、初日ながらも自分の内部へと入り込んでいくコースを選んだ。

オレは自分のからだが、だんだんと小さくなっていくイメージを始めた。そうして自分の細胞の中に入り込みDNAに働きかけるつもりなのだ。

呼吸をゆっくり深くして行った。そしてオレはイメージでどんどん小さくなって行った。

しばらくの時間が過ぎたようだった。

ふと周りを見渡すと、どうやらオレは細胞のなかに入り込めるだけの小さな状態になったらしい。

(なんだ、意外と広いもんだなあ。)

感心しながら、おそるおそると歩きはじめ出したオレは、ちょっと暗い細胞の中側らしきところを物珍しくながめていた。

(DNAってどこにあるんかな?)

どんな形か想像しながら、キョロキョロしながら俺は進んだ。

すると、何か向こうの方でうごめいているモノがいるのに気が付いた。

(ナンダ!?)

オレは一瞬恐怖をいだきながら向こうに目をこらした。

すると、うごめいているのはひとつではない、無数にいるではないか。

それも何かをムシャムシャと食べているような・・・・それも、どんどん増えている様に見える。

オレはなんとも得たいの知れない、未知のモノに恐怖心でいっぱいになり、

(そこから早く逃げ出さなくては!・・)

と思い、急いで後戻りしようとした。

(なんてことだ、はじめての瞑想が迷想になってしまったようだ。早くもとにもどらなくては・・)

オレはそこから立ち去ることで頭がいっぱいで、焦って戻ろうとした。

「マチナサレ!」

(あ!だれかが話しかけて来る。)

オレは恐怖でからだが硬直した。

おそるおそる振り返って、恐怖をおさえながら、やっとの思いで声を出して、

「なんだ、ナニモノだ、おまえは!!」

と言うのが精一杯だった。

「ウホホホホ、ホ~~、わしかい、わしはお前たちがばい菌と呼んでいるものじゃ。」

無数にうごめいている中から出て来た、得たいの知れないモノが薄きみ悪い笑い声で話かけて来たのだ。

(こいつがばい菌?ばい菌が話しなどするだろうか?)

疑いをいだきながらも様子をうかがうと、どうやらそいつは、ばい菌のなかでも大きくて、古老の親分格らしい奴で、オレの方をじっと見て笑っている。

「なに? ばい菌?・・・ばい菌なんかに用はない!それに、ここはオレのからだのなかのはずだ。勝手に居座るな、はやく出て行ってくれ!」

オレは内心の恐ろしさを隠して、せいいっぱいの強がりを見せて言った。

「まあまあ、そう怖がりなさんな、そんなに嫌いなさんな。それにわしらはあんたのためにここで働いているんじゃ。ほらね、ここにはわしの仲間がたくさんいるじゃろう。ほれ、あちらの方にはあんたがたがウィルスと呼んでいるものも居るじゃろうが。み~んな、あんたのために働いているんじゃよ」

そういえば、奥の方を見ると、もっともっとちいさい奴らがかすかに見える。

「オレのために働いてる?・・・ばい菌やウィルスが、なんでオレのためになるんだ。まっぴらごめんだよ、オレのからだをメチャクチャにしようってのか。」

(ほんとに嫌な奴らに出会ったものだ。やはり瞑想は失敗して迷走してしまった様だ、オレは・・・)

(早くもとに戻らなくては。)

オレは焦っていた。

すると、古老のばい菌の親分らしき奴はオレの心を見透かしたように、含み笑いをしながら話すではないか。

「あんたが嫌うのも無理はないの~う。だけどな、ここで会ったのも何かのご縁じゃ。ほんの少しばかり、わしらの話を聞いていってからでも損はないじゃろうよ。まあまあ、もちっと待ちなされや」

と言うのだ。

どうやら、オレに危害をくわえる様子も見えない。仕方なく、オレはがまんしてそこに立ち止まって言った。

「ばい菌などに縁はないよ、話があるならはやく話してくれよ、オレはいそがしいんだから。」

「ホッホホホ~~わしらもいそがしいんじゃが、このわしらの立場もちょっとは理解してもらえんとなあ~~ホント。お前さんたち人間にこう嫌われてばかりいては、わしらの立つ瀬もないと言うものじゃ。」

オレは、(ばい菌に立つ瀬もくそもあるかい)などと思いながら、しぶしぶそのばい菌の古老らしき奴の話を聞くはめになってしまったのだ。

「そうじゃの~う、話せば長いことながら、話さなければお前さんたちはいつまでもわしらのことを悪者扱いし続けることじゃろうし・・。ここいらで、わしらも汚名を晴らしておかんことには、わしらも忙しくなるばかりじゃからのう。人間様のお陰でわしらばい菌やウイルスも減るどころか増え続ける一方じゃわい。」

「なんで人間のせいにするんですか?あんた方が勝手にわたしら人間を病気で苦しめているんでしょうが」

「その事なんじゃが・・、ふ~~む、どこから話してよいものやら。」

ばい菌の古老らしき奴は、あごをなでつつ少し考えている様だった。

「わしらは長いあいだお前さんたちのために働いて来た。けれど、お前さんたちは、わしらのことを悪の親玉くらいにしか思わず、わしらを叩いてやっつけることだけを長いあいだ続けて来たのじゃが。

だ~れもわしらの事を理解してくれんから、わしらは人類の敵呼わばりされておるわい。

それが口惜しくてのう・・・ これからお前さんに話すことは、お前さんたち人類にわしらのことをもっと理解してもらうためのメッセージとなろう。」

なにやら、ばい菌の古老格はちょっと、唇をかんでシカメ顔で言った。

(なに~い? ばい菌から人類へのメッセージだと!)

「ばい菌やらウィルスは人類の敵だと、みんなが思っていますよ。それを言いわけするんですか?」

オレは知らずのうちにばい菌に対して敬語を使っていた。

(怒らせてしまったらなにをされるか・・)

「あんたたち人類は、なんでわしらをそう毛嫌いし嫌うんじゃろう」

「それは当たり前でしょうが。ばい菌やウィルスは我々人類の病気の原因だからですよ。それで病原菌って呼ぶんですよ。」

(あたりまえのことなど聞くな!)

「ふんふんふん、あんたはそう教えられて来たからの~う。じゃが、どうしてそう言えるのじゃな?」

「だってほとんどの病気にあんたの様なばい菌やウィルスが見つかっているし、そいつらの毒素が我々のからだを蝕むからでしょう。」

「なるほどなるほど、そういう見方をしているんじゃったの~う。当たっている様でいて、当たっていないんじゃが・・・」

(なんだ? わけの分かんないことを言っていやがる)

「お前さんたち人類はわしらを発見する前には、病気の原因をなにかの祟りかの様に解釈していたこともある。だから悪魔払いをするとか、まじないをするとかで病魔退散の祈祷などをしていた時期もあるし、病気の正体は分からないがそれなりに自然の生薬を用いたりなどして来た。」

このばい菌の親分らしき奴はそんなことを話しはじめた。

(コイツ、いったい何を言おうとしているのか・・)

「そうですよ。しかし、我々は科学の進歩によって、ようやく近代になって病原菌を発見することが出来たのですよ」

オレは誇りをもってばい菌に言ってやった。

「そのとき、あんたたちは飛び上がって歓喜の声をあげたのではないかな。“我々人類を苦しめて来た病気の原因正体”をついに見つけたり!とかね。

たしかに、それ以後からはわしらの仲間たちが次々を発見されて行ったからのう~。そうして、わしらの様な大きなヤツから、あんたらがウイルスとか呼んでいる小さなヤツまで、次々と発見して来たんじゃったなあ~。」

「そうですよ。人類は科学の進歩につれて病菌とその奥のウイルスまで発見できたんです。これを退治することで人類は病魔から解放されるはずなんです。」

(こいつもオレが元に戻ったらやっつけてやる・・)

そんな事はおくびにも出さないようにしながら、オレは誇らしげに言ってやった。

「あんたらがそう思うのも無理はないの~う、なにしろ、そこにわしらは“居た”んだから・・。

そこで、あんたたちは全力をあげてわしらをやっつけることで病気を解決することと思ったというわけじゃ。」

「そうですよ。それでいろんな伝染病が克服されて来たんですから。」

オレはさらに自信をもってばい菌の古老に言った。

(ふふふ、後でやっつけられるのも知らないで・・)

「あんたがたは、ほとんどの病気の原因をわしらにあると思い込んだのじゃのう。

じゃが、そうした中にも、わしらの仲間が見つけられない病もあったが、一度思い込んでしまったからには、もう突っ走るしかないのがあんたらの習性だからのう。そこのところになんの疑いももたなかったんじゃろう。」

「思い込み?ですか。疑うことは何にもないはずですよ。」

(このばい菌のヤツ、何を思い込みって言うんだ)

「とにかく必死になってわしらが何処かに潜んで居るに違いないと決めつけてしまったんじゃから、わしらを見つけられない病気のときは、きっと細胞の中にでも入り込んで隠れて居るんだろうと思っているわけさね。

こうしてわしらはなが~~い間、あんたたち人類最大のの敵にされてしまったのじゃ。

そうして、あんたたちが病気という苦しみに会えば、すぐさま、わしらは見つけられ引き合いに出されて、徹底的に攻撃されることになった。」

「それはそうでしょうよ。やっつけてしまわないと、こっちがアンタたちにやっつけられるんですからね。」

「これほど、恐れられ憎まれ避忌されて来たわしらは、悲しいかな人類のだれにも理解されないで、忠実に仕事をやらざるを得なかったんだ。」

(何を理解しろってんだよ~)

「仕事?」

「そうじゃ、仕事だよ。わしらにも役目というものがあるからな。それで、わしらは存在しているんじゃ。なぜなら、わしらは大自然の申し子みたいなものじゃからのう。これほどに、あんたたちから憎まれながらも、しなければならない仕事が与えられているんじゃから。

まあ、しょうがないことかのう~。いつかは、あんたらがホントのことを分かってくれる時が来るまでは・・・。」

そのとき、ばい菌の親分みたいなヤツの目にうっすらと涙がにじんで見えたのは、気のせいだったろうか。

(ばい菌が涙を流すわけないか・・・)

ばい菌の古老は悲しそうな様子をまた元の様に薄ら笑い顔に戻して言った。

「ま、あきらめんで、あんたらが大自然の本当の働きを知るにつれて、わしらがあんたたちの真の敵じゃあない、ということをいつか分かってくれる、その時を待っているんじゃがね。そのときから、きっと、わしらの仕事は減って来るはずなんじゃがのう。」

「・・・??」

ばい菌の言うことをオレは理解できないでいた。

「じゃがねえ・・・、今のままでは、わしらの仕事はますます増え続けるしかないんじゃあないかと心配しているんじゃよ。」

(ばい菌が我々人類の事を心配する?・・何を心配するっつうの?よけいなお世話だなもし)

オレは真顔で聞いてみた。

「なぜですか?」

「言っただろう、わしらは大自然の働きの申し子みたいなものだということを。」

「大自然の働き・・?」

「そうじゃのう~、ひとことで言うと、大調和ってことかの~う・・・・。

あんたたちからは、いろんなことに対して、『調和』しているとか、『不調和』になっているとか言うだろう。けれどじゃ、どちらも『大調和』の中にあるということかな。

たとえばじゃ、ひとが病気になったしよう。あんたたちから見ると当然これは『不調和』の状態だと言うだろう。けれどもこれも『大調和』の働きなんじゃな。

『調和』していない状態、不調和にあるとすると、『調和』する状態に戻ろうとする働き、これを大きくながめて見ると、それは『大調和』の働きというわけじゃね。

じゃが、『調和』の状態にあるときは、そのままでよいから働きが起こる必要も無いというわけじゃな。

これが大自然の働きのなかに組み込まれているというわけなのじゃ。」

(ばい菌のクセにえらい哲学的なことを言うな・・うさんくさい・・人間くさい・・)

なんだか、わけの分からない事をばい菌から聞かされ、オレはうんざりしながら。

「そこに、なんであんたがたの出番と言うか、仕事があるんですか?それでは、ばい菌やウィルスそのものが不調和な存在なのじゃあないですか?」

「あんたがたはすぐ小さい目で物事を知ろうとするからな。もっと大きな目で見ないと大自然の働きなどということは分わからんのじゃよ。

わしらより図体ばかり大きいくせにチッチャイ目でしか物を見れないんじゃから、困ったもんだわい。」

(ふん、よけいなことを言ってる)

「わたしもばい菌に説教を受ける気はないんですからね」

オレはばい菌ふぜいに説教されているようで不愉快だった。

「ところでどうだい、あんたたちは、わしらを目の敵にしてやっつけ続けて来た。けれども、その結果はどうなったんじゃい?

フフフ、怪しい雰囲気になって来たじゃろうが。

一部の学者はそれに気づいてきたようじゃが、まだまだ、あんたたち人間のほとんどは、今でもわしらがあんたたちの病気の原因だと思っているんじゃろが。」

「事実そうなんじゃないですか?」

「人類は伝染病を克服したなどと、高らかに宣言したのはついこの前だったはずじゃが、その舌の根も乾かないうちに、今度はわしらの新しい仲間の登場に目をしろくろさせているようじゃな。

なかでも、あんたたちが過去の伝染病などと言って安心していた結核でさえ、WHOでは、ここ十年の内には世界の死亡原因の一位になると発表したと言うではないかえ。」

ばい菌の古老らしき奴は勝ち誇ったように、笑みを浮かべているではないか。

「なんでそんなこと、ばい菌が知っているんですか?」

「ホッホッホホホ、ホ~ホ~~、わしらの仲間は世界中にいるってことさね。あんたたちが知っていることでも知らないことでも、み~んな知っているんじゃわい。

「・・・・・・」

(古老のばい菌はまた勝ち誇ったような態度で大きく笑う。(嫌みなやつだ・・)

「小さいからと言ってばかに出きんのじゃ。あんたたちのこまい細胞でさえも情報通信しているんじゃろう? なにも不思議がることはない。わしらも世界中のばい菌やウイルスの仲間と情報通信しているんじゃな。」

(インターネットみたい奴らだね)

「そんなことよりも、わしらの仲間に優秀なやつが出て来て、お前さんたちは困っとるじゃないかい?  なんて言ったかな、MRSAとかVREとか呼ばれていて、薬でやっつけられなくなって来た耐性菌なんぞがいるじゃろうが。」

(こいつオレの知らないことまで知っているとは・・)

「あいつらは、わしらのホープじゃのう。」

にやりとしながら、ばい菌は続けて話を続けるのだった。

「じゃがのう~、な~に、あいつらスーパー級をつくりあげたのはあんたたちなんじゃから。わしらは勝手に進化している訳じゃないんじゃよ。

それよりも、あんたたちは、いつまでわしらを叩き続けることを辞めないんじゃろうかねえ。

叩けば叩くほど強くなるのがわしらの性質だ、ということにそろそろ気がついてもよかろうにのう~。

むしろ、嫌うよりも好きになってくれると、わしらの出番も少なくて済むんじゃがのう~。

ウハハハ、むしろ愛してちょうだいと言いたいとこなんじゃよ。」

(だれが愛すか!こんな嫌らしいやつらを。)

「愛する?」

「ふっふふふふ~、どうも嫌われてばかりいても無理ないようじゃなあ~~、しょうがないのう~~。

さっきも言っただろう。

わしらは大自然の申し子の様なものなんじゃとね。わしらを憎んで叩こうとするのは、大自然を憎んで叩こうとする様なもんじゃな。

お前さんたちは、大自然を敵にして勝てると思うんかいな?

よ~うく考えてみるがよい。あんたたちも大自然の一部だということを。決して大自然の外側に居る存在ではないんじゃろうがのう。

それより、むしろ大自然のなかで守られているのが人間様じゃろう。

大自然を敵にして叩こうということは、自分自身を敵にまわして叩こうとしているという様なもんなんじゃ。」

「自分をやっつける?」

「気が付いたかな?わかるじゃろう、その意味が。」

「・・・・・・」

「なに~? まだ分からん?・・・・かたいの~う、イシが。それでイシあたまかいな。ホッホホホ~」

(くやし~~、ばい菌にばかにされている)

「もっと分かりやすく話してくださいよ!」

オレは怒りを押さえながらばい菌に言った。

「それでは、ちょっとだけかいつまんで話して見るかな。ウホン。」

(コイツ、ますます調子にのって来ている・・)

「あんたがた人間には、病気のことをもう少し話してやらんことには、わしらの仕事の役目も分かってもらえんようじゃからな。   ヤレヤレ・・・」

古老は、さもめんどくさそうな顔して見せながら説明に入った。

「あんたがたが病気と呼んでいるものの正体を知れば、わしらがいかに愛される存在だかということを知るだろうがね。

それでは、あんたがた人間様の嫌う、病気ってなんじゃろうかね。

病気の正体・・・、これをあんたがたが必死になって掴もうとして来て、いまだに本体を捕まえられなかったものじゃなあ。」

「それは、あなた・・いや、ばい菌やウィルスじゃあないんですか?」」

オレは憎々しげに言ってやった。

「その認識が、まだ浅いというんじゃよ~~。

病気の正体・・・・それも、わしらの事をも通り越して、もっともっと奥をさぐらにゃあ分からんのじゃな。

病気‥‥これも大自然の働き、大調和のなかで行われるひとつの働きと言うんだろうね。不調和の状態にあるものを調和の状態に戻してやるのが大調和じゃないのかな。

一見、病気という不調和の状態‥‥それを調和の状態に戻す、本来の姿に戻してやる・・

それから考えをめぐらしてみると、その不調和に見える状態も実は大調和だったというわけじゃ。」

「なんか良くわかんないですが・・」

(もうちょっとオレに分かりやすく言えよ、ナンデ!?ばい菌が哲学的なことを言うんだヨオ~)

「なにね、あんたがたが病気と呼んでいるのは身体の浄化作用なんだと言いたかっただけさね。」

「浄化作用?・・・あの、汚れたものをきれいにするという意味の・・?」

ばい菌の古老は、とつぜん手を打って喜んだ。

「あ、そうそうそう~~、そ~うじゃよ。あんた方人間の身体のなかのお掃除というわけじゃな。

ばい菌は急に愛想良くなってしまった。

「汚いものが溜まるから、その汚れを掃除してきれいにしてくれるんじゃな。そこに働く作用だから浄化作用といういうんじゃ。分かったかな?」

「汚れの掃除ねえ~?」

オレは半信半疑の思いで聞いていた。

「つまり、いまの状態よりも良い状態にしてくれるんじゃから、ありがたいんじゃ。病気はありがたいんじゃよ。病気になったら、ありがとうございましたと感謝するのが本当なんじゃがね。」

「え~~、だれが病気を感謝するってんですか。そんな奴いるわけないでしょ!だいいち、ちっとも感謝など出来るような具合の良い状況じゃないですよ。」

オレは反発して、正直な思いをそのまま言ってやった。

「ハハハハ、ハ~。無理もない。苦しいからの~、長いときもあるからの~、そのまま亡くなるヒトもいるからの~~ 無理もない、無理もない。気持ちも分からんでもない、このわしらでさえも、ちょぴりとは分かるというものだ。うんうん・・」

ばい菌はひとりであいづちをうっている。

「じゃがのう、それが大自然というものぞ、それが大調和というものぞ、いいかテツヤ!大自然というものは時には優しく感じ、時には厳しく感じるものじゃ。

それもすべて己から出でて己に帰する・・・・・う~~ん、ワレながらイイことを言うわい。」

(この古老の親分らしきヤツめ、ひとりで関心してやがるぞ。それもダレかのモノマネみたいじゃないか・・)

「おっと、どこまで行ったかな? うん~?」

すっかり、自分の言葉で酔ってしまっている。

「あんたが自分をほめたとこですよ。」

イライラしながらオレは言った。

「ちょっと、自己陶酔してしまったようじゃな。」

(ばい菌が自己陶酔してどうする!)

「そうだな、病気は汚れた身体をきれいにする浄化作用だというところだったのう。

それを人間様が理解してくれんことには、わしらのありがたみも分かってもらえんからのう。浄化作用の元となる、その汚れがなんであるか、聞きたいんじゃろうが?」

ばい菌は細目になって言った。話しを出し惜しみするような態度であった。

「そうですよ。汚いもの?なんで汚いものが私らのからだの中にあるんですか?」

「それは、あんたの身体のなかの毒素じゃよ。血液の汚濁じゃよ。

そんなものを入れた覚えは無いと思っているんじゃろうが、事実それがあるから掃除が必要になるんじゃ。自然の浄化作用がおこるんじゃ。

病気は決してそとからやって来るんじゃない。じつは、おまえたち人間が自分で作り出しているのじゃよ。」

「病気を自分でつくっている・・・?」

オレは信じられなかった。

「からだに汚い物を溜める・・・溜まれば害になる・・身体の外に排除する。

自然はこんなに単純明快な機能をおまえたち人間の身体にあらかじめ組み込んでおいてくれたのじゃ。

この機能、働きがなかったら、人間様はとっくの昔に滅びておるわい。

人間という種が存在し続けて行くには、汚物を溜まり放題にしておいては絶滅して行くんじゃよ。溜まったものは途中で外に排出してやらないといけないんじゃ。

人類が毒によってパンクする前に安全弁を解放してやるようなもんじゃ。ガス抜きしてやらなあ、いつか大爆発して人間様という種族は一巻のおわりじゃわい。

だから、神様はあらかじめ人間様に浄化作用というりっぱな機能をお与えになられた。

それが天から与えられた恵みというものなんじゃ。」

「天の恵みですか?あまり実感できないんですが・・」

「そうじゃな、この働きによって起こる現象を病気と呼んで恐れて来たのは人間じゃ。

浄化作用などということは知り得る知恵がなかったんじゃから、それも無理がない。無知ゆえの勘違い、思い違いをしてしまった。だから、起きた現象ばかりを気にしおって、その根本を探ることが出来なかったのじゃ。」

「ふ~んそうですか?じゃあ、その汚物ってのは?」

いつか、オレもまじめになってばい菌にたずねていた。

「そうじゃなあ~、はじめのころは自然界にある毒物というところだったんじゃな。

おまえたちの祖先は今の様な耕作法や魚介類をとる方法も幼稚だったし、辺りかまわず食べ物にした。それこそいろんな物を食べてみた。あれが良いとかこれが悪いなんてことは今のように分かるはずもない。手当たりしだい口に入れたわけじゃ。

とうぜん、食べたもののなかに毒分の混じった物もある。

これがからだの内の汚物の始まりじゃ。やがて、その浄化作用、つまりお掃除が始まる、おそかれはやかれ・・じゃ。

溜まった汚物は一種の毒素となって害を与えるから、排除しようとする。このお掃除なんじゃからありがたいものなのじゃ。

ところがその浄化作用に際して、痛い、苦しいなどの症状が伴う。

お前さんたちは、こりゃあいかん・・と思って、それをなんとか楽にしようと試行錯誤するわけじゃ。

こんな苦しい状態が続いたらたまらんわいなあ。それにそのまま苦しんで死んでしまうかもしれん・・・とのう。事実、その毒分によっては死んでしまった者少なからずもいただろう。

病気・・・これは何とかしないと・・・早くこの苦しみから逃れたい。

そこで試しにいろんな自然界の物を口にして見た。

すると症状がおさまって楽になる物がいくつか見つかった。人間様はここで大喜びして、

『これは病気の具合をよくする物が見つかった!ようしこういう物を見つけて行けばきっと人間の病気を解決出来るに違いない!』とな。」

「それが薬でしょ!お陰で、人類は長いあいだそれで病気を治して来たんですよ。」

オレは元気を取り戻して、ばい菌に言った。

「人間様がそう思うのも無理がなかったんじゃ。それを薬と呼んでありがたがったってわけじゃ。

じゃがな、そこに大きな落とし穴があるってことが分からんかった。

未開人には“それ”を理解するのは無理だったんじゃな。ま、浅知恵だったんじゃ。

この浅知恵から始まったのが人間様の医学の始まりなんじゃよ。

この浅知恵をいつまでもいつまでも続けて来た結果が今のお前たちが誇っている現代医学というわけじゃな。」

「“それ”って何ですか?それに、現代医学は人類の叡知を集めた最先端の科学ですよ」

オレは強い口調でばい菌に言い返してやった。

「この“それ”こそがあんたらが誇って来た医学の根本を揺るがす一点じゃよ。

汚物を汚物で固めることで病気が解決したと思い込んだことさのう~~。それがまず勘違いの第一歩。

そして、そのことによってわしらが活躍する場ができたということじゃ。

その後、おまえたちの科学の進歩とやらがわしらの発見を機に、病気の正体のほとんどをわしら“ばい菌”に見た。ということは、大自然の摂理をまことに理解できていない浅知恵から出発したためじゃ。

(浅知恵、浅知恵って、よくもこうも人間をばかにして!・・)

オレは怒り出そうという思いをやっとの思いでがまんしていた。

「ホッホッホホ~・・あんまり、怒りなさんな。これもすべて神のおぼしめし。おまえさんたちにあまり早く病気の正体を見つけられたら、すべて水の泡じゃい・・

「え?なんで、なにが水の泡なんですか?」

(オレはばい菌の親分の言うことの意味が分からなかった。)

「それについての話はまた別の時に・・・。とにかく、わしらは汚名を晴らせればそれでいいんじゃからな。めんどうな問答はしておれんわい。それにわしも早く役目を果たして消えたいわい。」

ばい菌は話をはぐらかしてしまったので、オレはその後のことは聞けなかった。

「え~っと、どこまで行ったかいな?

お、そうそう、病気の正体を教えるとこじゃったわい。で、浅知恵のため、勘違いしたお前たちはその病気を止めようとしたんじゃな。自然が掃除しようとするのを押さえ付けようとしたんじゃ。薬と呼ぶ毒を使ってじゃな。」

「だってそうでしょう。苦しみを早くとってしまわないと・・」

「おまえたちにとって、病気という掃除は苦しいからのう~。

はやく苦しみを取ってやらなきゃ・・はやくしないと死んでしまう・・

そりゃあもう、不安だらけじゃな、そこにあるのは。

早く、はやく、ハヤク・・・これが、おまえたちの合言葉じゃあないのかい?」

「そうですよ。早期発見早期治療・・これが一番に大切な事なんじゃないですか?」

ばい菌はそれには答えず、話しを続けた。

「自然は汚れを掃除しようとする。そして、あんたがたが病気と呼ぶ浄化作用が始まる。すると、おまえさんたち人間は、苦しいから、それを止めようとする。

そこにおおきな問題があったわけじゃ。」

「問題って?それに苦しいのを止めるのはあたりまえじゃないですか?なにが問題なんですか?」

ばい菌はチョイチョイと人差し指を振って、

(あれ?ばい菌に五本指なんてあったかな?)

いかにもチガウという振りを見せた。

「問題はふたつある。

一つは、からだの中の汚物が出ないままで居る。

したがってその汚物は何かの障害を与え続ける。結果は将来にわたって人類の子孫は存続できないほど身体の中はメチクチャになってしまうだろう。

この事は、最近おまえたちの間でも話題沸騰している環境ホルモンとか言う問題で分かって来たじゃろうがな。人間様はよくもこうおもしろい名称をつけるのがうまいんだろう。頭がよいからのう~。

けどな、あタマにキズは、かたいイシ(意志)にありそうかな、うん、イシあたまというじゃろ。ひゃっひゃっひゃ~。」

(・・・こいつう~馬鹿にしている)

「もう一つは、汚物を出さないようにするため、汚物を使った。」

「汚物を使った?」

「そうじゃ。それをさっき言ったんじゃろうがな。自然界から取り入れた物を薬とやらと言って、それで病気を治すと信じてしまったんじゃ。

それが“薬毒”じゃよ。そして身体のなかで汚物となる」

「薬がですか?え~~~!病気を治す、あの薬ですかあ~~~??」

オレはなんともあきれたてて聞いた。

「そう驚くな・・・・どうじゃ!カタイ頭がわれそうじゃろう。ふふふふ~~。」

「薬がなんで汚物になるんです?」

「なんのなんの、おまえたちが薬と呼んでいるのは、いろんな性質をもった毒だからのう。それが身体のなかで、いつかは本来の性質の毒素に戻ってしまうんじゃ。

その毒素は時間とともに変化して、いろんな汚物となって溜まりこんでしまうから、身体の“自然良能力”はいつか排除作用を起こす。

それで、いつかまた“病気よこんにちわ”となるわけじゃのう。

これではキリがないのう、病気を止めるだけでも汚物が出ないのに、これでは汚物を増やすばかりじゃからのう。」

オレはばい菌の言うことを信じられなかった。

「でも薬で病気が治るなら、毒でも仕方がないじゃないですか。そのためにもキチンと使用法を守って・・・」

オレは食い下がっていった。

「そう、たしかに薬で病気が治る・・様にも見える。しかし、それは症状が一時的に抑えられただけのことじゃ。なぜなら、病気の原因は体の中に溜まった毒素だからだ。その毒素の浄化作用が起きると苦痛がともなう。つまり、毒素の排泄作用が病気の本筋で、苦痛はそれに伴って起きる従属した症状じゃ。

“従”の症状を抑えてつけたところで、“主”の排泄作用が解決するわけではない。

だから、医学は対症療法だと言うであろう。

それじゃあ、なぜ薬でその症状が抑えられるかというと、汚物毒素排除の浄化作用を起こすのは人間の生命力、活力である。その力を弱めるならば、浄化は止まってしまう。

生命力を弱めるのには、毒が一番効くんじゃ。

つまし、毒を入れると浄化力が弱まり、それに伴う苦痛症状も弱まる。

これが薬と呼ばれて来たものの正体じゃ。

そりゃあ、『薬』ったって、いろいろな働きがあって、いまの様な単純な説明では不満じゃろうが、根本はそういうことじゃな。

だから、薬という汚物を入れて人間のからだを健康にしようってんだから、わしらは笑ってよいものやら、哀れんでよいのやら・・

これじゃあ、いつまでたっても病気は減るどころか増えるというもんじゃなあ。

病気を治すという薬そのものが、病気の発生の元となる汚物なんじゃからのう~~。」

ながい説明を聞いていたオレはなおも食い下がって聞いた。

「う~~ん。それじゃあ、ばい菌が出す毒素という説はどうなるんですか?」

「やっと、わしらの役目を説明できるところに来たかな・・。わしらが汚物の掃除役ということを。

わしらはそんな汚物を食べて処理してやっているんじゃよ。おまえたちが溜め込んだいろんな汚物によってわしらの仲間もいろんな種類があるわけじゃ。

つまり、食する物の好みがあるという様なものかな。

わしらは食べることによって、増えていけるし、食べた後から次々と役目を終えて死んで行く。そうして食べるものがなくなったら、そこにはもう居ることは出来なくなる。」

「汚物が好物なんですか?」

「そうじゃわい、汚物こそわしらの大好物なのじゃ。だから汚物の種類が増えれば増えるほど、わしらも増える。

ああ、自然は単純明快じゃの~~う。」

(ばい菌は目をつむって、またしばらく、なにかに酔っているようだった)

「では、ばい菌やウィルスは我々の病気の原因じゃないと言うわけですか?」

「結果じゃよ。直接の原因ではない。

われわれの仲間がそこに居たとしてもじゃ。」

「そこに居るからこそ、原因と言われるんじゃないですか?」

「まだ分からんのかい。やれやれ・・・真の原因はおまえたちが汚したものにあるということを・・・・

いろんな毒素が血液を濁し、それをきれいにしてやるために浄化作用が起きる。それがあんた方人間に備わった自然良能力と言うもんじゃよ。

自然はごちゃごちゃしているようで、じつにシンプルだということを受け入れられないのかな。

わしらはそのお手伝いをするだけじゃよ。

決して、原因じゃなく結果だということじゃ。

起きた結果をいくら責めてもムダじゃろうがな。」

(古老のばい菌は、すこしイライラし始めて来た様子である。)

「でも・・・、パスツールとかを始め、いろんな医学者たちの実験で確かめられて来ていますよ。」

「ほほう、出てきたわい、その事が。お前たちのお偉いさんたちは間違っていなかった。しかし、間違ってしまった。」

「?????・・・」

「実験室内では正解であっても、それを自然界もそうだと決めつけた事がそもそもの失敗じゃったようじゃのう。自然界は試験管のなかでもフラスコのなかでも無いんじゃよ。

たかだか試験管のなかの実験を自然界に当てはめて見ることが無理なんじゃな。

わしらは自然に生まれ、自然に死ぬ・・・役目がなくなれば。」

「それでは、ばい菌やウイルスは自然に発生するということですか?」

「そう、気が付いたかな。わしらは、最初は発生するんじゃ。ワクんじゃ。汚いところからなあ。

そうして、汚いものがあればそれを掃除してやって、さらに増殖する。食べる分だけ食べた奴から死んで行く。そしてついにそこに食べ物がなくなると存在できないから死んでしまう。

わしらがわいて出て来ることを認めない医学じゃからのう~、これからも迷走しそうじゃ・・・

わしらの仲間のうちでも善玉菌と呼ばれて、お前たちから可愛がられている奴らも自然にワク。ありがたくてワクワクするじゃろ。」

(こいつ、へたな駄洒落を・・)

「では病気はからだの中の汚物が原因であって、後からついてまわるものなんですか? やはり、伝染するんじゃないですか?」

「そうじゃ。が、あくまで、わしらを病気の原因とするならば、おかしいところも出てくるはずじゃろう。」

「おかしいところとは?」

「わしらがそこに居なくても同じ症状にもなるということじゃ。

それを実験で証明してみせてくれたのが、レィリーとかいう人物じゃろう。知っているかい? 彼はイシあたまじゃあ無かった様じゃなあ。

全然病原菌を入れなくて、結核、腸チフス、赤痢などの伝染病の症状を発生させて見せたというんじゃないかな。

それと、強いコレラ菌を飲んでも、なんともない事を実証して見せてくれたペッテンコーフェルとか言う御仁も居た。」

(こいつ、どこからこんな情報をとりいれるんだろう。ホントにばい菌のなかまと通信しているんかな?)

「あんたがたの中にも菌の自然発生を認めた者は少ないけど居るんじゃな。ただ、大多数の学者が認めないでいるだけのことじゃ。」

「学者ばかりか人類ほとんどがそう思っていますよ。」

「これで、お前たち人間様が浄化作用を起こすのに、必ずしもわしらは介入しないということが分かったじゃろう。もしわしらがそこで働くときは伝染が原因じゃなくて、誘因というところかな。誘発性と言ってもよいか。

主体はあんたがたの浄化作用であって、わしらは従属、付随しているような存在じゃよ。

早く毒素を掃除してやれる“お助け人”いや、ひとじゃないから、“お助け菌”かな。ほっほっほ。」

ばい菌は皮肉な笑いを浮かべていた。

「わしらは、最初汚物のなかからわいて来る。そして、汚物を掃除する。他所に食べるものがあれば、そこにも移って食べてやる。食べるものが無くなれば消えて行く。」

「では、ばい菌やウィルスを防ぐ方法はないんでしょうか?」

「そんなことは無い。

防ぐというより、わしらの食べるものが無ければ良いんじゃがな。

血液をいつもきれいにしておくことじゃな。汚いならきれいにすることじゃな。」

「それにはどうしたら良いんでしょう?」

「な~~に、汚いものを入れない。汚いものを出すことのできる浄化作用を素直に受け入れることかな?。」

「素直に?・・・ 具体的には?」

「そうじゃの~う、自分では入れないと言っても、あんたがたは親から、またその親からけっこう受け継いでいるからなあ。それに今のお前たちの暮らしでは否応無しにどんどん入っているし。」

「除草剤、殺虫剤、いろんな添加物などでしょう?それに公害物質になるような・・」

「さすがにそこまでは分かって来たようじゃな。

だがな、話したようにまだ恐ろしい薬剤には目をつぶっている。」

オレは話しに割り込んで言った。

「ドラッグなどと言われる麻薬類でしょ。いま政府でも盛んに警鐘をならしていますよ」。

「ふん、さきほどのわしの話を聞いておらんかったようじゃな。

麻薬と薬剤と区別している理由はなんじゃ?」

「薬剤って医薬品のことですか?」

「そうじゃよ、いちばんかんじんなものを忘れているのかい?

麻薬も医薬に使われる薬もどこが違うというんじゃ?もとを正せばすべて毒ではないかな。」

「そりゃあ、薬は毒だとはいうけど・・・」

オレの頭は認めたくない気持ちでいっぱいだった。

「それだけ分かっていながら、なぜそこで分からなくなるのか。わしらには不思議でたまらんわい。」

「でも、医薬品の場合は副作用のない程度にきちんと決められた分だけ使っていれば問題にならないはずですが。」

「・・のはず・・か。」

オレを軽蔑したような目で見て、ばい菌は話を続けた。

「いいかね、自然は人間様の都合などは受け入れてないんじゃよ。

どう思って使おうと、それはそれ。毒は毒。ただあるがまま、そのものを受け入れるだけじゃ。

たとえそれが善意で使われようが、悪意で使われようが、そんな事には関係なしで、ただ法則に合った因果関係が起こる。原因は毒でその結果は浄化作用。

そうして、わしらはその掃除のために、そこから“わいて”それを食い尽くす。」

「・・・・・・・」

だから、薬の種類が増えればわしらも種類が増える。強い薬が造られると、わしらも強い菌やウィルスとして登場する。叩けば叩くほど強くなるのがわしらの宿命じゃ。

始めに言っただろう。掃除役のわしらは大自然の申し子のようなものじゃということを。」

「でも、医学の研究の進歩によっていずれは世界の伝染病は克服されると言われています。」

「あんたが何を信じようがわしらには関係ない。ただ自然から与えられた役目を続けるだけじゃ。なにを選ぼうとわしの知ったことじゃないがな。」

「これだけ言っておいて、そんな、無責任な・・どちを信じて良いのやらさっぱり分からないじゃないですか。」

「ホウッホッホッホホホ~、わしらはばい菌じゃからのう。責任などとれないわい。わしらの責任はただあんたらのからだの毒分を食い掃除のお手伝いをすることだけじゃ。

毒になる薬を増やせば、そこにはわしらが現れる。ホッホホ、いたちごっごじゃのう。

わしはもう言いたいことをいったし、満足じゃ。もうなんにも苦しゅうない。気が晴れたわい」

(こいつ!オレのあたまを混乱させることばかり言って・・ナンダ!!)

「それに今は大自然の力が増しているからのう。今後はますます活躍しなければならないようじゃ・・・」

「大自然の力が増している?」

「そうじゃ、太陽の力じゃよ。地球上のすべてのものはこの太陽様の影響を受けるんじゃ。

その力の源としての象徴が黒点と言われているが・・。

この太陽の力によって地球上の浄化の力が全般に増すようじゃのう。まあ、悪いことではない、不調和を調和させる大調和の働きじゃからのう。」

ばい菌はますますオレに分からんこと話し出した。

「太陽の黒点が地球上の浄化作用を強めるんですか?」

「そういうことらしいのう。すべての浄化作用が強くなることらしい。」

「病気が増えるんですか?」

「そのなかでも病気はその主なるもののひとつになるじゃろうが。

おまえたちの中にも最近のインフルエンザについて、太陽の黒点の活動とウィルスの活動の活発化を関連づけている学者さんも現れたようじゃが。わしらの活躍も大自然の浄化作用という機能に組み込まれた存在じゃから、これからますます働かされそうじゃな。」

「伝染病と言われるような病気が増えるということですか?」

オレは少し不安げに聞いた。

「まあ、そんなに不安がることはない。浄化は悪いことではない。すべてをきれいにする働きじゃ。

大自然に順応することじゃ。大自然がおまえたち人類を、どうかしようとして滅ぼそうなんてことは考えないことじゃ。

すべてが人類のために必然で必要なことしか起こらないことをようく認識すれば、恐ろしいことなんか何もないはずじゃ。」

ばい菌の古老はオレが不安がる様子を見て、諭すように言う。

(ああ、ばい菌になぐさめらているオレは、いったい・・・)

オレはばい菌に泣きつくように言った。

「信じられないですよ。そんなことは。」

「わしが言ったことがそうであるかどうか、それはあんた自身が物事をよく見つめて行って決めるしかないのう。

だれもそれを強制できないし、そして、だれもあんたの代わりになって決めてはくれないのじゃからのう。

ただ、繰り返すが、わしらは汚れたところに現れ、汚れたものを食い、そして、死んでゆく。

そんな役目を与えられたのだから、わしらの仕事を増えるかどうかはそこの点にしか無いのじゃ。」

古老のばい菌はすこし疲れたような様子で淡々と語っている。

「さ~~て、長くはなしすぎたようじゃな。

わしも仕事をしなくては、あんたも忙しいんじゃろうからな。呼び止めてすまなんだと思う。これをばい菌からあんたを人類代表としてのメッセージとしよう。」

「ええ~~人類代表なんてまっぴらごめんですよ。だれかほかの人に話してくださいよ」

「わしはもう少し汚物を食い尽くしたら死んでゆく運命じゃ。あんたとまた合うことはないであろう。ここで出会ったのも多生の縁というではないか。わしの話したことゆめゆめ忘れるではないぞ。 汚物からわしらがわいて来る。汚物の原因には薬が親玉格で筆頭。

あとはみんなが知っている食毒、そうして多くの人間様が言う人間の想念毒・・これもじゅうぶん認められて来たことの様じゃ。しかし、このような事はだれも知っていることじゃから、わしがわざわざ言う必要もない・・・・よそで聞いておくれ。」

「ちょっと、待って。あんたたちばい菌やウイルスは、最初は“わく”って言いましたが、血液からですか?どんな分子式で構成されてくるんですか?」

オレはさっきから気になっていたことを聞いた。

「分子式?・・・ばい菌にそんなこと分かるか!ほほう、お前さんたちが好きな、『科学的に証明せよ』ってわけかい。」

「そうですよ、まさか何も無いところから“わく”わけないでしょう。」

「実はその何も無いところからわしらは“わく”んじゃよ、ホッホホ・・・」

ばい菌はオレをからかうように笑って言う。

「何も無いところに、すべてが有る。

だから、“無い”けれども、“有る”んじゃのう~。」

「????・・」

「お前さんが、さかだちしたって、そこはつかめないんじゃから、そこは無いとも言える。しかし、有る。

いや、べつにあんたをからかうつもりではないんじゃ。

あんたがたの有限の世界からはつかめない世界じゃから、無の世界と思っているだけのことじゃ。無限をつかめたら、それは有限じゃからのう~。そうして、その無限の世界こそ、実体なのじゃ。逆にあんたがたがつかんでいる有限の世界の方が、夢まぼろしの如し・・・なんてね。

ま、わからんでもよいわい。

そんなことよりも、たいせつな事は言って聞かせたつもりじゃ。

わしらは、人類だれもが見逃して来た“薬毒”が一番好物なのだということをゆめゆめ忘れるでない。

それが、わしらからの人類へのメッセージじゃったな。そして、あんたはんが、そのメッセージを受け取る代表となったわけじゃ。ホッホッホホ~~~」

なにやら、ばい菌の説明はさっぱり分からなく、オレにはその高笑いだけが耳にいつまでも残っているのだった。

「よ~うしと。 それじゃあな。 これでわしも思い残すことはない。サラバじゃ。どれ、食い残したあんたはんの汚物をいただくとするか・・・ アア~、イソガシイ、イソガシイ・・・・」

話を終えた古老の親分と思えるばい菌は、さっさと、向こうでうごめいている仲間の方にゆっくりと歩き始めた。ばい菌のそのうしろ姿はながい話のあとですこし疲れたようにも見えた。

オレが最初に見たときは、ばい菌のやつが黒くて槍を持った悪魔の様なかっこうに見えていたのに、去って行くやつの後ろ姿を見つめていたら、なにかコウゴウシイような姿に見えたのには不思議な気がしたのだった。

オレはそのうしろ姿をみて、思わず、

「待ってください!せめてアナタのお名まえをきかせてください。」

(ばい菌に名まえもなかろうニ)

オレはおもわずばい菌の後を追いかけ、片足をつかんでしまった。

(ん?足がけっこう太いなあ・・)こんなときに変なことを思いながら、オレは足をつかんだまま、なぜか意識がもうろうとして来た。

どれくらいの時間が経ったのだろうか?

「アンタ!!なにしてんの!!」

その声で、オレはもうろうとしていた気分から目が覚めた。

頭を上げて見ると、なぜかオレはうつ伏せになっていて、カアチャンの足をシッカリとつかんでいた。

「なに寝ぼけているのヨ、あんた!

おや?・・・・・そういえばひさしぶりねえ~~」

妙にやさしい声に変わったカアチャンの声に、オレのからだはいっぺんに硬直してしまった。

(まだオレは迷想ちゅうにちがいない!まだオレに迷いがあるからにちがいない。きっとそうだ、そうにちがいない。)

オレは自分に強く言い聞かせていた。

だが、そこからは現実に直面しなければならない大問題で、オレは夢のような妄想のようなばい菌の話をいっぺんに忘れてしまった。

(やはり、あれは夢だったんだろうか・・・)

「ばい菌が話をするなんてことは有りはしないんだ。オレの妄想なんだろう。」

オレは、ときどき思い出しては自分にそう言い聞かせている。

しかし、時には不安になることもある。

「オレが人類代表にされたんでは、たまったモンじゃない。

オレは責任を被らなくてはならない・・・と、とんでもないことだ。

どうしたら、それから逃れられるのだろうか・・・・

ソウダ!!

だれかホカの人にこの責任を渡してしまえば・・・・・・・・人類の代表者は逃れる・・・そうだ! むかし流行った「不幸の手紙」だ!・・・・」

現代版、不幸の手紙・ネット版「カビとの対話」で世間を席巻するのだ

かくして、「カビとの対話」は往年の不幸の手紙のごとく、またたくの間に全国へ拡がっていった。

さて、カビとの対話 

あなたはここまで読んでしまったのかな?

不幸を逃れたかったら、ワタシのように誰かに話すことじゃなあ・・・

あ、久しぶりに微かな声が・・・・

・・・・・なんか、わしはひじょ~~に気が楽になった気分じゃわい・・・

(・・ん?  死んだはずのバイキンの古老の声?)

ご注意 

この対話は、フェックションであり、「神との対話」とかいう書籍とは一切関係ありません。 (誰も思わないかな)

フェックション! う~う、バイ菌がウワサしている・・・


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