top of page

14/7/8

中型2輪免許を取った2日後に、何故か鈴鹿サーキットを走らされチビリそうになった話

Image by Olia Gozha

車好き、バイク好きなら、誰でも一度は憧れるサーキット。








一度でも走ったことがある人なら、

初めて走った時の、アドレナリンが体内で噴出する音が聞こえる興奮と、

辺り一面から湧き出る、オイルとタイヤの焼ける芳しい匂いは、

一生忘れることはないでしょう。





信号も、対向車も、ノロノロ前を走る車も、

何も邪魔が入らない、誰にも邪魔されない、

日常を凌駕するスピードで走る者だけが許される、漆黒のアスファルト。

操るマシンの性能を、限界まで引き出してやることが出来る喜び。




まるで自分が世界ランクのレーサーになったかの様な、

心地良い錯覚と、不思議なプライドが生まれ、

憧れのレーサーと同じ景色を共有していることの、感動と興奮の余り、

ヘルメットの中で、無意識に雄叫びを上げながら走ってしまう。


最高の夢が、ひとつ叶う瞬間・・・






「そうね、普通はそうね。ヘルメットの中で雄叫び?ええ、上げながら走りましたよ。恐怖のあまりね。」



今から約25年前のこと。

自動二輪の免許を取り、どのバイクを買おうかウキウキしていた、

18歳の頃の話です。


免許を取った二日後。

何故か僕は、鈴鹿サーキットの一泊二日の体験コースを受講することになってました。


(当時)自動二輪免許の取得に路上教習は無く、

教習所の中での時速40キロほどが、僕が経験しているバイクの最高速度です。

だのに、二日後にサーキットですよ?

サーキットって、めっちゃスピード出して走る場所だってことは、

僕も前々から知ってはいました。



実は、父親の仕業でした。




「お前、サーキット走って来い。バイクに乗る条件や。」

18歳の僕「は?な、何で?」

「バイクに乗るのはかまわん。けど、何かあったら簡単に死ぬ乗り物や。公道走る前に、絶対安全な場所で死にそうな目に遭ってこい。」

18歳の僕「死にそうな目って(笑)まあ、ええわ。」



その時は、

「死にそうな目に遭うこと」を非常に簡単に考えていました。

そして、面倒臭いなぁと思いながら渋々条件を飲むことに。


18歳の僕「鈴鹿サーキットって、遊園地みたいなもんやしww」


・・・可哀想な子だ。



当時、父親はバスの運転手を指導する職に付いており、

安全運転に死ぬほどうるさい人でした。

普段から事故現場にしょっ中呼び出されており、

そこで事故の凄惨さや、人の生死も嫌というほど見てきた人です。

それを知っていたので、僕も何となく今回のサーキットの話は、

公道での走り方に影響するんだろうなあ、と薄々感じてはいました。


公道を、サーキットのようにバイクで走る為じゃ無さそうだと。



さて。


とりあえず、一泊二日の準備をして鈴鹿サーキットへ向かいました。

電車で。


この日、20名ほどが受講しましたが、電車で来たのは僕だけでした。

みんなは当然、バイク(笑)



自己紹介もそこそこに、

いよいよ、サーキットへ。


駐車場で教官の人から簡単な注意事項があり、10分後、


教官「じゃあ付いて来て下さーい。」



え!もう行くの?


まわりのみんなは、和気あいあいとサーキットのコースのことや、

バイクの話で盛り上がりを見せるなか、

ひとり不安と恐怖に怯える、場違い感満開の自分。



改めて言いますが、

バイクに跨るのは、卒検以来です。



そして、いざコースイン。



ヴォーン!


ヴォーーーン!

ヴォーーーーーン!




教官他、全員、フル加速。




(ヘルメット内音声)「マジでーー!」

(ヘルメット内音声)「怖ぇーーよーー!」





とにかく前のバイクに付いて行くのですが、

時速100キロ以上でカーブを曲って行く。

100キロ以上出ているにも関わらず、僕は教習所で習った通りに、

「カーブ前ではシフトダウン」してしまい、

ヴァヴォーーンと、エンジンがぶっ壊れそうな音を出してます。

シフトロック!!※


し、死ぬ・・・(頭の中のイメージです)


※エンジンの回転数が高いのに、さらに低いギアにシフトすることで、

超強力エンジンブレーキでタイヤがロックすること。



どノーマル400CCなんだから、ずっと6速で走れるっての。


そんなことは、今だから分かる訳で、あの時はほぼパニック(笑)


すると、なんと前のバイクが転倒!

コースアウトして芝生の上を横滑りして行くじゃないですか!




(ヘルメット内音声)「えぇぇぇーーーーーーーーーー!!!イヤイヤイヤイヤ!!先生ー!先生ーー!誰かコケてますよ!もっとゆっくりーーーゆっくり走りましょうよぉーーー(泣)」





長い一日が終わり、

僕は、教官にそっと告白しました。



可哀想な僕「あの、実は僕免許取って3日目で、まだ公道すら走ったこと無いペーパーくんなんですが、明日大丈夫でしょうか?(泣)」


その時の教官の方の表情を、忘れることは出来ません。


驚愕と憐れみと、何しに来たの?が混じった顔で、



教官「だ、大丈夫ですよ。・・・何かあったら言って下さい。」





大丈夫じゃないんだと、0.5秒で悟りました。



次の日は駐車場にパイロンを100個くらい置き、

その間を縫うように走る、スラローム走行です。

よく、白バイの練習風景をテレビで見ると思いますが、

アレです。


コレです。



もう、バイクのステップが磨り減って無くなるんじゃないか?

と思うほど、皆さん火花を散らしながら、

ベタベタバイクを寝かせて走るんです。


(おかしい・・・あきらかに、慣れてるだろコイツら)あ、この人達(汗)


後で聞いたところ、やはり数回目のリピーターさんなんですよ、みんな。


ライセンス取らなくてもサーキット走れるんで、

この講習会はかなり人気があって、中々予約が取れないらしいのです。

このコースに僕をねじ込むのに、

コネを使ったと言っていた親父は、すげーなと思いました。



その後もまた、サーキットを走って死にかけたり、

トライアルのバイクで山を走って死にかけたり、

時速100キロからの急制動で死にかけたり、


お陰様で、いっぱい死にかけました。


でもまあ終わってみると、とても楽しくて有意義な時間を過ごせたなと思ってます。

2日目には多少余裕もできて、サーキットの醍醐味も味わいました。


今は無きダンロップブリッジも見上げながら走ったし、

裏のストレートは、ホントに山の中みたいでした。

逆バンクはツーリングスピードで走ってたのでわかりませんww

130Rはここを200キロ以上で走るのかと思うと背筋が凍りそうでした。

ヘアピンは僕は時速30キロで曲がるのが限界。レーサーは60キロ。

シケインの狭さは尋常じゃない。

メインスタンド前のストレートでは、手を振りたくなる衝動を抑えるのに必死でした。



スゲー、よく覚えてるもんだわ(笑)





そして、やっとバイクを買い、

初めて公道を走りました。




怖すぎる。




公道が怖くて仕方がない。まず道の汚さ。

砂利やゴミで簡単にタイヤが滑る。

空き缶とか、道の陥没とか、マジで命取りだから。

雨の日の横断歩道なんてバイク乗りには殺人歩道です。

当たり前ですが、道の上に歩行者がいる、対向車はいる。

自分の運転を過信してる人も多い。




公道って、なんて走りにくいんだ!




公道の第一印象です。

以来、僕はいつも公道は、

「危険だらけで、ルールの無い、無法地帯」

だと思って走ってます。


これは、さすがに言い過ぎですが、

そう思って走ることで、まず自分の身を守る。

マシンコントロールは命がけで訓練したので、とっさの時に焦らない。

余裕が出来るので、周りが見えて危険察知が早くなる。


この25年間、クルマでも、バイクでも、

今こうして無事故で居られるのは親父のお陰です。

このお礼を言う前に他界してるので、ここで言っとこかな(笑)


あんたは間違って無かったよ。

あの時、サーキットを走らせてくれてありがとう。


自分の子供にも、同じような教え方が出来ればいいな。




あとがき

今回も、最後まで読んで頂きありがとうございました。


「バイクは人間がバランスを取ってやらないと、走れない機械なんだ。

だから、なんか人間臭くて好きなんだよ」


当時、一緒に受講した一人のおじさんの言葉です。

かっこいいでしょ。

バイクは危険な乗り物でも、悪い乗り物でもない。

乗り手が手を貸してやる機械(マシン)なんです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暇つぶしに最適なサクッと読めるコラムと、

親バカ丸出し記事を毎日発信しております(笑)

フォロー&友達募集中です!

http://www.facebook.com/uno.masato


情報雑食家MASATOの情報コンテンツ総合サイト

「我侭に生きていくんだ俺は」

http://masato17.com/


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page