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14/6/19

車いすテニスに出会って感激して、このスポーツを報道したいと思っていたら念願が叶って、気付けば世間に追い抜かれてた話 第9章:幸せな時間

Image by Olia Gozha

家族と一緒の休息日

私が取材に入ったのは、車いすテニスの競技が始まって5日目だった。その取材初日に、残っていた日本勢はほとんど敗れてしまい、残るはK選手のシングルスのみとなってしまった。残念ではあったけれど、K選手のシングルス優勝が最大の注目だったので、なんとかK選手に頑張ってもらうしかない。

仕事的には、K選手以外の選手が負けてしまったのは本当に残念だったけれど、家族との時間を考えると、実はちょっとほっとしたところもあった。ロンドンに着いてから、二日続けて子供たちは夕飯抜きで朝まで寝てしまっていたので、そろそろ少しちゃんと食事をさせてあげたいと思っていた。

取材二日目は、K選手の試合が日中に1試合入るだけだったので、朝も少しゆっくり支度をして、ようやくロンドンの街並みを少し眺められる余裕もできて、そして、お昼も子供たちと一緒に車いすテニス会場内にある芝生の広場で一緒に食べて、のんびりした時間を持てた。試合も1試合だけだったので、すぐに終わって、ロンドンに来て初めて、日のあるうちにホテルに戻ることができた。

子供たちもロンドン初の夕飯を食べられた。といっても、レトルトのごはんにレトルトの味噌汁という、なんでもないものだったけれど。でも、何も食べないで寝てしまっていたことを考えれば、これでも上等でしょう。ホテルにいる間は、もちろん写真整理やら原稿書きやらでバタバタだったけれど、子供たちの食事の世話などは夫がやってくれたので、私は子供たちの相手をしつつも仕事に時間を割くことができた。しかも、あちこちで仕入れてくる食事が、ほとんどハズレなしで、どれもおいしかったのがすごい。イギリスなのに、おいしいものを食べられるとは予想外だった。恐るべし、夫の嗅覚。

その日もK選手は勝利し準決勝に進んだ。準決勝は、翌々日だったので、中一日、空いてしまうことになった。その時間でもっと精力的に取材とかもするべきだったのかもしれないけれど、やっぱり家族大好きな私は、その時間を夫や子供たちと過ごしたいと思ってしまった。ずばり! 観光してしまったのだ〜。

ホテルから徒歩圏内に公園があるのは分かっていたので、とりあえずそこに行ってみることにした。夫も連日慣れない運転で、少しお疲れだったこともあったので、徒歩で移動できる範囲で散策してみた。

ケンジントン・ガーデンズという公園は、ケンジントン宮殿があったり、ラウンド池という池があったり、広々としていたとても気持ちのいい公園だった。快晴の空の下で、白鳥が池に浮かんでいる景色と我が子たちの姿を眺めて、本当に心が穏やかになる時間が持てた。ロンドンに来てから、サバイバルのような時間が続いていたけれど、ようやくロンドン生活を楽しむ余裕ができたようだった。

公園を散策してから、自然史博物館に行き、そのあとクレープ屋でおやつを食べてホテルに戻った。

プロとしてはこの一日を取材に使うべきだったのかもしれないけれど、この一日を家族と過ごしてロンドンの光と時間を全身で感じたことのほうが、長い人生を考えたら、これでよかったんだろうなーと、今振り返っても思う。

そしていよいよ、ロンドンパラリンピック車いすテニス競技はクライマックスを迎える。

※ケンジントン・ガーデンズのラウンド池で

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Image by Jukka Aalho

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