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14/5/8

母がくれた言葉

Image by Olia Gozha

僕がまだ幼い頃のお話。


僕が生まれ育ったのは九州・福岡県。

日本人の父、在日韓国人の母、そして僕の3人家族。


幼い頃から母は愛車カローラ(当時)の助手席に僕を乗せ、

いろんなところへ連れてってくれました。


母はドライブするときいつも車内で音楽を流してくれました。

ごはんを作るときの鼻歌はだいたい韓国の歌謡曲でしたが、

車で流す曲は海外のものが多かった気がします。


ビリージョエル、リチャードクレイダーマン、テレサテン…

今思えば、好きな音楽は母の影響が強い気もします。


ただ、ごくまれに加山雄三を流すことがあって、

「これ何ー?」って聞くと、

「…昔付き合ってた人がよく歌ってくれたんよ。あ、お父さんには内緒ね。」


すごく楽しかったし、とても居心地がよかった。


ある日、すごく天気の良い日があって、

いつものように母がいっしょにドライブにいこう、と言いました。


僕は喜んで助手席に乗ります。


空は快晴。

到着地は海岸でした。


空も、海も、すべてが青く広かったのを今でも覚えています。


きれいだね、と2人でじっと水平線を見つめる。


しばらくして母はゆっくりと話し始めました。



・・・・・・・・・・・


あそこに、ぼんやり浮かぶ島が見える?


あの島は「朝鮮」と言ってね、


今は北と南の2つにわかれて、

家族が離ればなれに暮らしてるんだよ。


あなたが生まれるずーっと前にね、

朝鮮の人たちは、

家族や、恋人や、友達や、大事な人たちに別れを告げて、

アリラン峠というところを越えて、

ここまでやってきたんだよ。


つらくて、すごく悲しかったけど、

そのときお空に浮かぶお月様がとってもきれいで、

泣かずにみんなで手をつないでここまで来たんだよ。


だから今、ここにあなたがいるの。



ねえ、あんた。


あたしが今から言うこと、よく聞いてね。


ハングンマル(韓国語)にはね、

「恨む」っていう言葉なんかないんだよ。


あたしはそんな言葉知らないし、

もちろん教えてもらった覚えもないよ。


たしかにね、

この国(日本)の人たちに苦しめられたことだってあった。


でもね、

そこから救ってくれたのもこの国の人たちだったんだよ。


感謝しなきゃいけないことはたくさんあるんだよ。


そして、朝鮮の人たちはそれを許せる優しい心をちゃんと持ってるんだよ。



いい?


人はね、

恨むんじゃなくて、敬いなさい。


これからあなたの前に現れる素敵な人たちをしっかり敬って、

そこから得るものの大切さを知りなさい。


・・・・・・・・・・・



あれからもう20年以上経ちましたが、

今でもこのとき母が言ってくれた言葉や、

じっと前を見続けていた母の横顔を鮮明に覚えています。


メディアはいろんな形で情報を世間に流します。

もちろんその背景には変えることのできない、

様々な歴史や過去があるわけですが。


だけど。


誰が正しかったとか、誰が悪かったとか、

問題はきっとそこじゃない。


これから僕らがどう動いていくか。



誰もが目を背けたがる、ひんやり冷めたものを、

あのとき母はやさしくあたたかく包み、

僕にくれたのです。

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