top of page

14/5/7

500円ビニール傘のいい話

Image by Olia Gozha

捉え方次第で、世界の見方は変わるものだ。
これは、そんな話。


私はまれに趣味で外国人観光客に東京を案内している。

先日案内したのは、ポーランド人の男女4人組。

日本のローカルバー、即ち居酒屋に興味があるというので、

早速、有楽町のガード下の飲み屋街へ連れて行った。

ちょうど混み合う時間帯で、呼び込みが声をかけている。

「へい、らっしゃい、らっしゃい」としきりに、手をパチンとならしている。

どうやら外人さんたちは、私に出会う前、浅草へ寄ってきたらしい。

その様子を見た彼らは、興味深そうに私に尋ねた。

「あれは、お寺で手を合わせて祈る慣わしと同じなのですか?」と。

いや、あれはまた別で、あれは単なる呼び込みだよと説明すると、

納得いった様子でうなづいていた。


居酒屋でひとしきり刺身や日本酒を堪能した後、

店を出ると小ぶりの雨が降っていた。

安手の500円のビニール傘を差している人をあちこちで見かける。

すると、案内していた一人が感動した様子でビニール傘を見ているではないか。

「どうしたの?」

「日本人は本当にすばらしい!」

「え? どうして?」

「あの透明の傘は、雨の日でもちゃんと景色を愛でるための日本人の工夫なんだろ?」

絶対違う!と内心思ったが、それは言わないでおいた。

彼らの素敵な勘違いをそっと、そのままにしておきたかったからだ。

以来、ビニール傘を見るたびに、

あれは雨の日でも世界の美しさと向き合うための道具なんだと思うことにしている。



←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page