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14/5/7

アホの力 1-2.あの日

Image by Olia Gozha

たまたま仕事が休みだった私は、家の近くのマンガ喫茶でぐうたらしていた。


その時、ゴーッという地鳴りと共に強い縦揺れが、直後にメチャクチャな揺れが私を襲った!本棚にあったマンガは殆どが床にばらまかれ、ガラスは割れ、電気も消えた。

情報は携帯のワンセグからしか得られなくなった。その小さな画面を見やると、大津波警報が出ているという。一気に不安になった。

これから…どうなるんだろう?津波…って?まさかぁ。でも、半端ない揺れだったぞ。


しばらくすると、画面からは津波の映像が。さらには、原発が停電で原子炉の冷却が不能だと…。とんでもない状態だ。


あわわわわ…一人で勝手にパニックになる。


都内で知り合いと会う約束があったのだが、交通情報を見るとすべての電車が止まり、首都高は全線通行止めになっていた。取り敢えずウチに帰ろう。けど、道路は至る所で大渋滞を起こしている。


街中がパニックだった。

こんな時に、一体何をどうしろってんだ?さぁ分からん。

何も考えられなかった。というより、何かをすべきなのかどうかすら、判断出来なかった。


そんな中、福島第一原発で水素爆発が。

目に見えない放射能は、国中を更なるパニック状態にしてしまった。


それから数日、経験した事の無いパニックが続く中、私の周りではある現象が起こる。


私の仕事はトラックドライバーだった。取り扱っている積荷は、ドリンクやカップ麺といった、保存の利く食料品が主だった。


私の住む関東地方では、そうした食料品の買占めが起こっていた。瞬く間に倉庫から、それらの品物が消えて行く。

被災地ではそうした品物が足りなくなっていたのだが、さもありなん。買占めによってメーカー在庫すら底を尽き、生産が追い付かない状態になっていた。

ガソリンスタンドも在庫が無いため軒並み閉店し、辛うじて営業していても長蛇の列で、夜通し並んでようやく10L程度の給油が出来るといった有様。トラックの燃料確保には、ことさら苦労した。


何か…おかしくねそれ?

何でそんなに買占めを?買い占めなきゃ、みんなに行き渡るんだよ?

どうしても必要な人以外は買占めを止めて、物資不足の被災地に優先的に回そうぜ。


そんな釈然としない気持ちで過ごしていた、震災発災から二週間程経った仕事中のトラックの車内で、ある人の呼びかけを目にする。


『南相馬が、兵糧攻めにあっています。どうか皆さんご協力を!』


南相馬市長、桜井勝延氏の呼びかけだった。


それを目にした時、訳が分からなかった。その呼びかけは、動画投稿サイト『YouTube』上に投稿されたモノだった。

何でだ?

行政機関の長、しかも最前線の被災地の市長が、何故誰でも気軽に動画を投稿出来てしまうYouTubeに、こんな呼びかけを?

そんな事をしなくても、TVや新聞に載せれば良いのに。


しかし、10分程のその呼びかけを見て、合点がいった。

南相馬は福島第一原発から近過ぎて、マスコミも近寄らないのだ。もちろん物資の配送トラックも。

原発の水素爆発以後、原発から30km圏内は『屋内待機区域』に指定され、外に出るなと言われていた。それ故、南相馬は市内では生活全てが、市外からは人とモノの流れが止まり、街全体が完全に孤立してしまっていたのだ。


なんて事だ!

数万人の人が暮らしている街が、閉ざされてしまっているとは!

このままじゃ…餓死者も出てしまうかも!

大変だ!


気付けば、トラックの中で涙を流していた。私の中で、何かが大きく流れ始めた瞬間だった。

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Image by Jukka Aalho

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