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14/4/20

海外あちこち記 その5 1人でバスに乗ったら

Image by Olia Gozha

1)台湾の高雄で休日に一人で市営バスに乗りました。降りるときに車掌に料金を払おうとしましたが手に広げた小銭を見て車掌が何かぶつぶつ言います。どうも足りないらしいが言葉がわかりません。

あわてて紙幣を出したが大きすぎたらしく、又文句を言いいます。(ように思えました。)

そのとき、すぐ後ろの席の年配の女性が席からつと立って、ボクの手のひらに小銭を足してくれました。

そして車掌に何か言いました。車掌が全部の小銭を受け取って下りろとボクに身振りをしました。

彼女の方を振り向いて謝謝と言ったら、少しはにかんだ少女のような笑みを浮かべて軽く会釈を返してくれました。

ボクはこういう時の常で全身に汗をかいて急いでバスを降りました。

(昭和54年ごろ。当時、中国鋼鉄<CSC>に搬送設備の納入業務で高雄によく行っていた。)

2)ハワイ州電力庁の幹部との面会日が決まるのに時間がかかり、ホテルで待機していましたが泊まったホテルはワイキキビーチのすぐ傍で日本の観光客で一杯でした。

本来の目的が果たせるまでは泳ぐ気にもなれず、同行の技術屋さんも皆手持ち無沙汰でした。ようやく翌日にアポイントが取れたので、その日は自由行動としました。

暇なので市内循環バスに乗って見ました。バスが市街地を離れていくと「満腹食堂」や「妹尾美粧院」などの古びた日本語の看板が出ている集落に入りました。

道路の舗装も穴ぼこだらけで、街を歩く人はお年寄りの日系人だけでした。町並みはペンキが剥げた家が多くて寂れていました。一瞬日本のどこかの裏町を走っている錯覚におちいりました。

ホノルルのダウンタウンからわずか20分くらい走っただけのところに、このような集落が次々表れました。表のホノルルと別の顔のホノルルを見たような気がしました。

しばらく走ると高台に出ました。ダイヤモンドヘッドを左に見てワイキキビーチが真下に見えます。

ふと面白いことに気が付きました。ワイキキビーチの左側4/1が真っ黒に人で埋まっています。そして右の4/3は広大で人はまばらにポツポツとしか見えません。私が泊まっているホテルは左側でした。なんでこんなに極端に密度が違うのだろうと不思議でした。

 あとで聞くと左側は日本資本が買ったホテル街、右側はもともとのアメリカ資本が所有しているアメリカ本土観光客向けのホテル街でした。

そうか泊まったホテルの前の浜に日本人ばかりが、芋を洗うように密集していたのはそういうことかと完璧に納得でした。

(昭和57年ごろ。ハワイ州電力庁の発電設備計画に石炭火力があることがわかり、大型港湾荷役設備の売り込みに行った。)

3)北京市内を一人でバスで行動すると(当時はタクシーが極端に少なかった)乗客全員から毎回奇異というより冷たい目で降りるまでずっと注視され続けました。

当時背広を着ている人間は北京普通市民から見ると全員外人ですから、戦前の日本と同じで外人はみなスパイ?敵性人?ということかなと能天気な身も思わざるを得ませんでした。(特にまたどう見ても典型的な日本人の私にとって)。

国営の新聞、ラジオ、テレビしかない(当時はインターネットがないから、お上の言う事と違う情報は一般市民は誰も入手出来ない)国へ普通の民間会社の人間が商売で行って、日本の大手メデイアのデスクがフィルターにかけた駐在員報道と、随分違う面白い経験をしたのかも知れません。

 そうは言っても仕事で付き合う自分と同じような中国人と、あのバスの乗客達の落差は、生身で個人的に一回でも付き合えば埋まって行くこともいろんなことを通じて実感しました。

(昭和58年ごろ。中国3港港湾設備近代化の世銀入札案件で中国に3ヶ月ほど出張していた。)

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