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14/5/10

【地球の裏側で元ホストと旅をして学んだ魔法の言葉】

Image by Olia Gozha



最初の出会い


彼は、とにかくイライラしていて口を開けば他人や政治の批判をぶっ放す。

目を引く整った顔に、肩までのパーマの髪を一つにくくって、旅人らしからぬオシャレな服装。

何やら普通じゃない感じだ。


それが 【 元ホスト やす 】 の第一印象。


最初の出会いはペルーの、クスコのホテルの屋上だった。



私は、双子の姉妹で、人のオーラ(ソウルカラー)を描きながら世界を旅するという

ちょっと変わった旅の途中。この時全財産80ドル。極貧である。

感動できない旅人


その時私は、屋上の机で路上のソウルカラーの時に使う「指さしスペイン語」を作っていた。

スペイン語のできない私は、現地の人にオーラの色の説明するときこれを使ってやっていた。



そのとき、彼の衝撃な一言が耳に飛び込んでくる。

その一言が全ての始まりだった。


元ホスト やす「俺さー、1年旅してるけど、全く感動せんのよねー」


なっなに!?

散々世界中の絶景や遺跡をみて、感動しないだと!?


あの有名なマチュピチュを見ても

感動どころか、ボロクソ文句を言って帰ってきたらしい。


「ちょっ、前に座って目見せてください!」


急にこんなこと言ったらとんだ変人だけど、目を見てちゃんと彼のソウルカラーを見たかった。

目を見ると人のオーラがよく見える。


「え?オーラ見えんの?俺の色何色?何色?」


予想を裏切らないポップな返答で、すぐ前に座って目を合わせてくれた。

彼の切れ長の大きな目は、すき通っていてちょっとビックリするくらいキレイ。吸い込まれそうだった。


すると、彼のソウルカラーも浮かび上がってくる。

彼の宇宙を覗いた。


彼の色は、子供みたいに純粋でだけど深くて自分の哲学を持っている、

とてもユニークな素敵な色をしていた。


見てるこっちが、ワクワクする。


「感動しないなんてウソ。いっぱい感じてるし本当は感動したいと思ってる。感じなくなっちゃってる...。」


それから、とにかく見えたことを話した。

彼の家庭環境、普段どんな風に物をみているか。感情のでない理由...。


真剣に伝えたくてとにかくまっすぐ話す。とにかく届け。彼のこころに話す。


すると彼の目が変わった。


元ホスト やす「え?何で分かんの?全部あたりなんだけど....」


それから今度はやすの口から話してくれた。

自分の家族の状況や子供の頃の話。両親の育て方。


会って1時間もたたないけど、私たちは真剣だった。



壮絶な本気のホスト人生



そして彼はかなりまじめにホストをしていた。

そのホストの話がまたすごい。


想像していた華やかな世界と全く違い、

暴力とお金とヤクザの話はマンガやドラマのようだった。


ナンバー1だったことや、重要な役職についていたこと、大きな夢があったこと。

話しの本気具合でウソなんかじゃないと分かる。


やすは、世間では少し 普通じゃない と呼ばれる道を、誰よりも真剣に真っ直ぐ爆走していた。


地球の裏側での化学変化



話に熱中していると、屋上には他に3人の男の子が集まっていた。

途中、彼らも加って一緒に話をする。


それは日本では絶対そろわないであろうメンバーだった。


学校の先生だったKEIくん

まだ学生のまじめそうなゆーき

大阪西成出身の肉屋のたけお。


途中から入った彼らは、私の奇妙な話を半信半疑どころか、うさんくさいなぁ〜、という感じで聞いている。

そりゃいきなりオーラとかソウルカラーとか言われたら無理もない。


そして元ホストのやす

ソウルカラーアーティストの、私と双子の姉なほ。


どう考えても気が合うとは想像しがたいメンバーだった。

経歴も生い立ちも出身も見た目の雰囲気も、すべてがミスマッチでデコボコ。


しかし、地球の裏側で、予想もしない化学変化が起こってしまったのだ!


まさかこのあとこの出会いが、みんなの人生を変える旅になるとは誰も想像してなかったと思う。



ヒッピーに混じっての路上



話に熱中していると、あっという間に夕方になり、路上にソウルカラーをしに行く時間になってしまった。


ヒッピーや現地の道売りの人に混じって、

世界中の人のソウルカラーを描くのが今回の私の旅の目的でもあった。


「やす、今からよかったら色描かせてよ!」


元ホスト やす「お、いいよー!」


やすは快く承諾してくれた。

そして他のメンバーも路上について来てくれることになった。

路上はいつ出ても緊張する。だからみんながいるのがとっても心強かった。


土日だけあって夜のクスコは人で賑わっている。


まず先に店を構えるヒッピーたちに挨拶する。

路上で仕事をする人はみんな仲間だから。


店といっても簡単な布をひいてその上にアクセサリーなどを並べた簡易的なものだ。

私も布に絵の具や、今日作った指差しスペイン語を並べ、お店の準備を始めた。


【あなたのオーラ見ま


スケッチブックにスペイン語でそれだけ描いて置いておく。

まずはやすから描かせてもらうことにした。



まずお互い向き合ってしっかりと目を見る。

そこから水彩絵の具で、見えたまま、オーラを紙にえがいていく。

私は音にも色が見える『共感覚』なので、その人の色と、同じ色の音楽を2人で聞きながら描いていく。



ソウルカラーはみんなそれぞれ違って本当にキレイだった。

ソウルカラーを始めたのは、ただ、目の前のその人のありのままの素晴らしさを伝えたかったから。


ペルーに来て、スペイン語も喋れない私は、アートとして『色』でその人のことを表現することが、

国や国籍を超えた何よりのコミュニケーション手段だった。


そして言葉が喋れなくても、文化や肌の色が違っても、一緒に感動したり、その人のことを励ましたりできる。

泣いてくれる人もいる。


周りに理解されなくても私はこのソウルカラーという仕事が本当に誇りだった。


気づくといつのまにか、私たちを囲むすごい人だかりができていた。


やすはソウルカラーに衝撃を受けてくれた。とってもいいセッションになった。

本当の自分を知るのは、みんな嬉しいんだ。


いつしか少し端っこで見学していたKEIちゃんゆーきタケオは、

集まったギャラリーのペルー人にスペイン語や英語を駆使してソウルカラーの説明をしてくれている。


『どうやったらもっと人が来るか』『何て宣伝すればいいのか』

あーでもないこーでもないと、自分のことみたいに真剣に考えてくれていた。


おかげでこの日は始終大盛況だった。



一緒について来てくれたみんなは、多分ソウルカラーなんて半信半疑だったと思う。


だけど信じるとか信じないを超えて、

私が真剣に目の前の人と向き合っている、その姿勢を感じてくれた気がして、胸が熱くなった。


みんな、心底優しいメンバーだった。



チーム330結成



その日の夜、なんだかワクワクして、ホテルに帰ってからも全然眠れなかった。

みんなで1つの部屋に集まり、次の日までずっと話しをした。


今日の感想や、自分のこと、普段あんまり人に言わないようなことを、みんな本音で話していた。

今日さっき会ったとは思えない。


すると少しずつみんなのことがわかってくる。


大阪西成肉屋のタケオは、どこの国に行っても『TAKEO−−!』と呼ばれるくらい人気者。


初め会った印象も、かなり変わっていて面白い人だな〜。という感じだった。

しかし、実は地元に彼女を残し、逃げるように旅に出て来ていた。次はスペインに飛ぶらしい。



分析が得意なKEIちゃんは爽やかジャニーズフェイス。


学校の先生を辞めて旅に出たけれど、未だに深くまで教育について考えていた。

理論や分析は大の得意だけど、自分の感情や感覚が分からない時があると言っていた。


大学生のゆーきは、語学留学でペルーに来ていて、明日がなんと帰国日だった。

いつも冷静に私たちの話を聞いていた。(※写真がなかったので割愛)



元ホストのやすはご存知の通り、1年の旅もあと2週間で帰国というのに何を見ても感動しないと言う。


私となほはソウルカラーを描きながらの不思議な旅をしている。

オーラが見える!なんて奇妙なことはなかなか理解されない。いつものことだけど。



そうとにかく、みんなはみ出しものの変わり者だった。


元ホスト やす「俺は今日で本当に人生が変わった!」


そう切り出したのは感動できないと言っていた元ホストやす。


この日を忘れないために、チーム330って名前をつけよう!

そうして私たちのチーム名は決まった。【チーム330】。その日は2014年3月30日だった。


一人旅同士のみんな、日本では出会わなかったメンバーが、

いつのまにか地球の裏側でチームを組んでいた。



デコボコでみんな違うけど、本音で話せる大事な仲間だった。

3月30日の濃くて長い一日が終わった。



みんなの化学変化



次の日、もう日本に帰るゆーきがソウルカラーをしたいと言ってくれた。

あまり興味がなさそうに思っていたから、とてもビックリだった。


この先の就活のために自分を知っておきたい。

その言葉に、私たちも気合が入る。


ホテルを出発する1時間前、ゆーきの色を描かせてもらった。



セッションのあと、ゆーきの激変ぶりにやすは驚いていた


あまり目を見て喋ってくれなかったゆーきが、しっかり目を見てよく話すようになっていた。

雰囲気も前より堂々としている。


元ホスト やす「え?お前.....変わったなぁ!!まじか!」


大学生 ゆーき「いやいや、やすさんこそ変わりましたよ!」


元ホスト やす「.....は??」


自分の変化は気づかないもので、実はやすも目を見張るほど変わっていた。


とげとげした雰囲気が柔らかくなり、よく笑うようになっていた。

顔も優しくなっている。その変化に一緒にいたみんな驚いていた。


大学生 ゆーき「じゃあ、やすさん、まほさんなほさん、KEIくんたけおさん!行ってきます!!また日本で会いましょう!みなさんいい旅を!」


すがすがしい笑顔でゆーきは日本に向けてペルーを出発した。




残ったメンバーで次の帰国者はやすだった。ペルーを出るチケットはもう1週間きっていた。



化学変化



あれから【チーム330】は本当によく一緒にいた。

観光もろくにせず、某番組しゃ◯り場のように真剣トークを繰り広げている。


そしてみんなと本音でぶつかるうちに、それぞれに化学変化が起こっていた。

その中で一番変化していたのは多分元ホストのやすだ。


ある日みんなで公園の芝生でのんびりしていていると、空に虹が出ていた。

世界文化遺産になっているクスコの街に大きな虹がかかる光景は絵の中みたいでとってもキレイ。



そのとき虹を見上げるやすの口から


元ホスト やす「わあ....きれいだ....」


という言葉が出たのだ。


『 風景や空見て感動できるやつの気が知れないわー。そんな簡単に感動できるやつ羨ましいよねー 』


得意の毒舌でよくそう言っていたやすが、虹を見て感動していた。

そんなの当たり前のことだけど、私たちには衝撃的だった!


それをやすに言うと、笑って少しテレていた。



最後の修学旅行



やすのペルー出発が残り3日となった時、

忘れられない思い出を作ろう!と、近くの村に遊びに行くことになった。


もちろん、一番楽しみにしていたのはやす。


そしてこの修学旅行でみんなの旅が変わることになる。


近くの村までは中型のバンで1時間もないくらいで着く。

このメンバーでの最後の旅に、テンションは最高潮だった。

だけどムードメイカーのやすが抜けるのは、みんなとても寂しかった。

旅が終わったらもうなかなか会うこともない。みんなの中では、やすのお別れ小旅行だった。


小さな村に着くと、もうお昼。

ご飯を食べようということになってごはん屋を探す。


しかし、村に到着してからなんだかやすの様子がおかしい。

どこかイライラしているような、気分ののらない雰囲気だった。


元ホスト やす「ごめん。俺、先宿戻るわ.....」


やすは居心地悪そうに、一人先に宿に帰ってしまった。


大阪西成肉屋たけお「やすさんどうしちゃったんですかねー?あんなに楽しみにしてたのに。お腹痛いのかな?」


みんなが心配しているなか、私はやすの異変の理由が分かっていた。



自分と向き合う


結局夜になってもやすの調子は変わらなかった。

その日は、街に散歩に行ったりホテルでゆっくりしたりみんな好きなように過ごす。



やすはみんなといるのが居心地悪そうに、部屋にこもったり距離をとっていた。

久しぶりに”こっちに来るな”エネルギーがバシバシ出ている。



結局その日、あまりやすとは会話がないまま夜になってしまった。




しかし真夜中になっても、どうしてもやすが気になって眠れない。


宿は2階建てで、一階には私たち、2階に男の子たちが寝ている。

何となくやすがいるような気がして1階から階段越しに2階をのぞく。


すると廊下の長椅子に、彼は一人座っていた。


元ホスト やす「よ....起きてたんか。」

「うん寝れなくて...よかった。なんとなくいる気がしたんよ。」


高地のペルーの夜はとても寒い。息が白かった。

寒さに身体を丸めながら、私もやすの隣りに座る。


ふたりとも前を向いたまま、くっきりと見える星と月明かりを見ていた。

田舎の小さな街は電気がなくて星がとてもキレイだった。


長かったのか短かったのか、沈黙が続いたあと、やすがポツポツと話し始めた。



元ホスト やす「....ごめんな。みんなと最後の旅なのに....」

元ホスト やす「胸がもやもやしてさ、なんか気持ち悪くて。イライラしたり、悲しくなったり。意味分かんねえ。でも一人でいたくもなくてさ。」


うんうんと、私は黙ってうなずく。



「俺、すげえ楽しみにしてたのにさみんなにも気使わせて....」


「これ何なん?ソウルカラーのせい?みんなと本音で話したせい?こんなことになるんなら..やらなかったらよかった....」


やすは、本当に辛そうだった。自分の大きな感情にとまどっていた。



「ううん。やす。違うよ、大丈夫。これは全然悪いことじゃないの。」



私はやすのイライラの原因が分かっていた。それをどうしても伝えたかった。



「あのね『感情の法則』ってあるんだよ。知ってる?一度出てきた感情は、実は一生無視できないんだよ。だから昔我慢した感情も、見ないふりした気持ちも、本当は心の奥にしまってるんだよ。」


やすは真剣に聞いてくれている。


「今、昔我慢した寂しい気持ちとか、悲しい気持ちが出てるんだよ。みんなで本音でぶつかってソウルカラーで自分を知って、ためていた感情の蓋が開いたんだ。悲しいとか寂しいとか感動することに理由なんかいらない。泣きたいときは本当はいつも泣いていいんだ。寂しかったらちゃんと寂しい自分を分かってあげる。寂しいのも悲しいのもイライラも感動も、ただ感じてあげればいいんだよ。」


実は少し前まで、私も生きるのが難しくてしかたなかった。

自分が苦手で、全然自信が持てなかったのだ。


そして、とことん自分と向き合ってみた。

それは、悲しいも寂しいも辛いも、もちろん楽しいも全部、ちゃんと感じ尽くすということ。

自分が今どんな気持ちか、あのときどんな気持ちだったか、気づいてあげることだった。


こころのことを勉強して分かったのは、私たちの『感情』は、なかったことにはならない、ということ。

そして『自分と向き合う』とは『自分の感情』と向き合うことだった。


大丈夫。やす、あなたは大丈夫だよ.....!


こころの中で何度もつぶやく。


すると緊迫していたやすの空気が、急にふっと軽くなった。

うつむいているやすの、その肩が、震えていた。

やすは、泣いていた。



それは弱い涙じゃなかった。自分に向き合った真っ直ぐな涙だった。



たまらずやすをぎゅっと抱きしめる。

彼が小さな子どものような、でも大きな存在にも感じた。



彼の高く高く積んだ、何かから防御するかのようなプライドの壁は、もうなかった。

そのかわり、そこには深く深く根を張った、本当の自分らしさが芽を出していた。




そのままでいいよ。



やすは、小さいころから親に認められなかった。

自分の意思とは関係のない沢山の習い事と、そして自分の大好きなことはやめさせられてしまう。

それじゃダメだ!もっと頑張れ!もっと頑張れ!と育てられてきた。


本当はその時、とても悲しくひどく寂しかったんだ。

それは子供のこころじゃ抱えきれない程おおきな感情だった。



でも両親は”自分たちのように苦労してほしくない”という思いから、必死だった。

ただ不器用な愛情が、すれ違っていた。



でも、やすは言って欲しかったんだ本当は。



そのままでいい。”って。



そのままでいい。

そのままでいいんだ。

あなたは、そのままで、十分素晴らしいんだ。



それは、魔法の言葉だった。

何かを頑張らなくても、他の何かにならなくてもいい。

そのままの存在でちゃんと価値があること、

生きているだけで価値がある、その人をまるごと認める、魔法の言葉だった。



そして地球の裏側で偶然出会ってしまったはみ出し者の【チーム330】は、

みんながみんなを、そのままでいさせてくれたんだ。



「はあ〜!...まじでスッキリした....。....まじで、ありがとまほ...」


感情を出しきったやすは、胸のもやもややイライラした感じが、嘘みたいになくなっていた。

ずっと抑えていた感情をちゃんと感じきったんだ。


それから寝袋を持ってきてそれにくるまりながら、また色んな話をした。

星を見ながらくっついて話すなんて、中学生みたいだなー、ってまた沢山笑った。



みんなの決意



西成肉屋タケオ「俺ね!!決めました!!!」


次の朝、タケちゃんの妙な意気込みで目が覚める。


西成肉屋タケオ「俺!!!日本帰ります!!!!!」


え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?



一週間前までスペイン行きの航空券をとろうとしていたタケちゃん。

まさかの発言にみんなビックリだった。


西成肉屋タケオ「俺、彼女に会いに行って、それからまた戻ってきますわ!」


実は昨晩、KEIちゃんとタケちゃんのソウルカラーを描かせてもらったのだ。


そのとき、たけちゃんが彼女をおいてきた理由が分かった。

それは、彼は「一人」じゃないと自由に生きられない、というこころの思い込みがあったのだ。


自由に生きるにはどちらかを捨てないといけないんだ。”


だからパソコンも携帯も持たず、日本と一切連絡をとらず逃げるように旅をしていた。


しかし、彼は自分の本音に気づいたのだ。それは彼女もとても大事だということ。

本当は旅も彼女も、自分は選びたいということ。

逃げたかったのは旅でも彼女からでもなく、自分の概念からだった。


「タケちゃん、世界一周するんじゃなかったの!?日本に帰らないって言ってたやん!?」


すると彼は迷いなく言い放った。


”そんなクソみたいな信念、ペルーの犬にくれてやる!”


頑として、日本に帰ると言わなかったあのタケオから、まさかの名言だった!


元ホストやす「...は!?お、おまえ、俺と一緒に帰るのかよ!?!?」


西成肉屋タケオ「はい!やすさん、よろしくおねがいしまーす!」


元ホストやす「まじかよ!!!また一緒かよ!!!!!」



なんとタケオも、明日やすと一緒にペルーを出ることになったのだ!

タケオの変化と行動力に、みんな圧倒されてしまった。


だけど、彼女に会いに帰るって、タケちゃんメチャクチャかっこいい!

自分の”本当の自由”がわかった今、タケちゃんにはそんなちんけな信念、もはやいらなかったのだ!



さよなら流れ星


その日はみんなで山の上にある遺跡を登った。

この遺跡が最後の思い出だった。明日はやす、そしてまさかのタケちゃんも、もうペルーを出てしまう。


元ホストやす「まじきちーよ!!こんなキツイって、、、まほに騙されたわ!!!」


遺跡までは、急な山登りトレッキングが2時間ほど続くのだ。



でも、どうしてもみんなでそこを登りたかった。

その遺跡は、古代昔、イニシエーションで使われていた場所だったからだ。

(イニシエーションとは、人間が成長していく過程で、次なる段階の期間に新しい意味を付与する儀礼。

人生儀礼ともいう。)


ぶうぶう文句を言われながら、やっと頂上の遺跡に辿り着いた。

2時間のトレッキングで到着した遺跡は、達成感もあってか感動的だった。


「ねえ!お願いごとしようよ!!ここで願ったら、絶対叶いそう〜〜〜!」


遺跡の中で、みんなで手を繋いでお願いごとをすることにした。

石造りの柱が囲む真ん中で、みんなで輪になる図は、何だか神秘的だ。

空はもう真っ暗で、星が出ている。



「何願おうかな〜.....」


「俺真剣にいくよ」


「ちょっと待って待って!心の中で三回ね!」


「せーの。」



みんな何を願ったかは言わなかったけど、結構真剣だった。

でもこの【チーム330】なら不思議と叶う気がする。

もし本当に叶うなら、またみんなで会えるはずだ。だから寂しくないんだ。


願いを3回唱えてこっそり見上げた空は、満天の星だった。





その帰りは、懐中電灯で照らさないと少し前が見えないほど真っ暗になっていた。

月がキレイだな〜!

多分、そんな誰かの何気ない一言でみんな同時に夜空を見上げたときだった。


元肉屋タケオ「わあああああ〜〜〜〜〜!!!!」


「えーーー!すごい!!今の、流れ星!?」


今まで見たことのない、とても長い流れ星が流れた。



それをみんなで同時に見たんだ。最後のプレゼントのようだった。


元先生KEIちゃん「いや、俺....鳥肌たちました。感動。。」

西成肉屋たけお「俺!!!!!人生で初めて流れ星見た!!!」


元ホストやす「まじかよ!!タケオ、お前どんな人生送ってんだよ!!!ww」


みんなで笑いながら、ホテルに戻る。

奇跡みたいな【チーム330】との一週間が、今日で終わった。



バイバイ。またね。



次の日、この小さな村を出て、クスコに戻った。

やすとタケちゃんは、20時間バスに乗って空港まで行って、それからペルーを出発するのだ。

いつものホテルに戻ると、タケちゃんの航空券をとる係、荷物のパッキング係、みんなでバタバタ用意をした。


元ホストやす「なんか、実感わかんなあ。また夜みんなでいるみたいだわ。」


ホテルでの夜は、みんなで集まって話す時間だった。

今日はあのしゃべり場がないのが信じられない。


やすとタケちゃんはタクシーでバスターミナルまで行く。

こんなところで別れるのは寂しすぎて、みんなで無理やりタクシーに乗り込んだ。


5人とバックパックを乗せたタクシーはぎゅうぎゅうだった。


みんなと初めて出会った一週間前の出来事を思い出す。

経歴も職業も見た目も、全部ミスマッチな私たち、地球の裏側で、偶然出逢ってしまったのだ。

唯一の共通点といえば、わたしたちは『りんご』になれない子たちだった。


学校や社会は『りんご』になりなさい、って教える。

みんな同じでいなさい、ここまで出来なさい、こういう風に生きなさい。



だけどわたしたちはみかんやスイカやブドウだった。

どんなに頑張っても努力しても、りんごにはなれなかったのだ。

はみ出し者だった。


元ホストのやす、そしてみんなが教えてくれたことは

『ありのまま、そのまま』で生きる大切さだった。


『りんご』になる努力はもうしなくていい。

それは自分らしく生きられない努力だから。


みかんならみかんなんだって認めてしまえばいいんだ。

そしてどんなみかんになるかを磨けばいい。

それが『ありのまま』で生きる本当の努力だから。


わたしたちは、ありのままで、そのままで、素晴らしいんだ。



何度ぬぐっても、涙は止まらなかった。

隣に座るやすも、何回もメガネを外して目の端をぬぐっていた。


一週間前は感動しないと言っていたやす。

あなたはいろんなことを教えてくれた。

ありがとう。ありがとう。出逢ってくれてありがとう。

ありのままの私を認めてくれてありがとう。

そしてあなたも、ありのままそのままでいて。



心のなかで何回もつぶやいた。



新しい出発


バスターミナルに着くと、やすはあまり喋ろうとしなかった。

涙を、こらえているのがわかった。


最後にみんなでハグをして、やすとタケちゃんは、出発した。




元先生KEIちゃん「まほちゃん!俺、自分の感じた事を大切にする。自分の感覚と、今までの知識をちゃんと発信していくのが、使命だって思う。」


最初出逢った時は、知識や理論で話をしていたKEIちゃん。

今は自分の感じたことをよく話すようになっていた。

教育を勉強していたKEIちゃんとは、誰よりもこころの話ができたよき理解者だった。


元先生KEIちゃん「ブログちょっと真剣に書いてみるよ!」


KEIちゃんはもう、次の目標ができていた。


そしてたまたまこのバスターミナルに、KEIちゃんの次の目的地のバスがあり、

彼はその場でチケットを買うことにした。


もうみんな本当に出発だった。


そして私たちも、実は出発の合図があった。

上に載せた写真、シャッターを押してもらったのがその時たまたま隣にいたご夫婦で

顔もお互い覚えてなかったのだが、数週間後、そのご夫婦と旅をすることになるのだ。

この写真を見てお互い思い出した。

その旅もまた感動的だった。が、それはまた違うお話。

物語はいつもつづいている。



数日後やすのブログにこんな文があった。




私たちの人生には二通りの生き方がある。

人生に奇跡など全くないと思う生き方と、まるですべてが、奇跡だと思う生き方。

                   ーアルベルト•アインシュタイン


私はこの出会いを『奇跡』と呼びたい。



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※ありのままで生きるというメッセージを伝えています^^

シェア&リンクなどご自由にお使いください※


双子で【あーすじぷしー】を立ち上げ、”600ドルと片道切符で「自分の人生が大好きな人を増やす」というミッションで旅に出ています。旅での気づきや、出会い、私たちが見た世界を配信しています。

是非繋がってください^^

あーすじぷしーfacebookページ あーすじぷしーBLOG

twitter:あーすじぷしー@公式


※この生き方をするきっかけになったstoryも書いています。

【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、

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