top of page

14/4/11

秘密の扉 15

Image by Olia Gozha

 アトランティス文明へ


涼子は気づくと、青年と共に歩道の真ん中に立っていた。

「ここは一万二千年前に存在した、古代文明のアトランティス、ここは市場、人々がそれぞれのグループで使う食材を求めて集まってくる場だよ」

 行き交う人の姿は、涼子が映画などで知っている、布を巻いているだけの古代ローマの服装、ただ、色使いは個性が反映され、様々な柄や色があり、さらに涼子を驚かせたのは、行き交う人が、涼子たちの姿が見えていなくて、その身体をすり抜けてしまうと言うことだった。        

「これはどういうこと」

青年は「どう言えばいいのかな、たとえて言えば私達は、立体ホログラム映像、私達からは見えているけど、彼らからは見えていないだから観察できるのさ。」

「そうなの」

「そうだよ、この文明の特徴は、貨幣制度も、物々交換も存在しない。」

涼子は「どうして生活するのよ」と青年に聞いた。

「お互いが、お互いのなすべきことをし、与えることによって成立している社会だ。」

「わからないよ」

「すべて無償で得られると言うことであれば、生活のために働くことはあり得ないし、コストを考えなくていいから、サービスが打ち切られることもないだろう。

この文明は様々な仕事があるが、仕事という概念が存在せず、お互い助け合うという概念の方が強かった。農民は食べる人の喜びを生きがいに作物を育て、それを市場に持っていき自由に人々に与えた。そうすることによって、お互いがとても幸福な気分に浸り、それだけで満足をしていた社会なんだよ。」

「私にとってはうらやましいわ」

「そうだろうね、この世界は物を所有する習慣はほとんどなく、必要な物はグループごとで共同で使っていた。」

「なるほど」

「涼子に聞くが電気掃除機、洗濯機は一日の内でどれだけ動いているんだろう」

「掃除機は二十分から三十分だし、洗濯機はよくかかって一時間ぐらいだわ」

「そうだろう、ほとんどの時間使われないで、部屋の片隅に追いやられているだろう、それを時間を決めて何家族で共有して使うと、それらはひとつあれば十分だろう、予備を考えても二つだな」

「そうねぇ、その方が効率的には違いないけど、手元にないと不満だわ」

「そうか、そういった所有すると言った概念が、この文明にはなかったんだよ、つまり、簡単に言えばアクセスと幸福だよ、使うときに必要な物は買わなくても、共同で使えば、皆が幸福な気分になり、誰も不満は出ないはずだよ」

そろそろ、別の場所に移ろうか



←前の物語

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

忘れられない授業の話(1)

概要小4の時に起こった授業の一場面の話です。自分が正しいと思ったとき、その自信を保つことの難しさと、重要さ、そして「正しい」事以外に人間はど...

~リストラの舞台裏~ 「私はこれで、部下を辞めさせました」 1

2008年秋。当時わたしは、部門のマネージャーという重責を担っていた。部門に在籍しているのは、正社員・契約社員を含めて約200名。全社員で1...

強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話

学校よりもクリエイティブな1日にできるなら無理に行かなくても良い。その後、本当に学校に行かなくなり大検制度を使って京大に放り込まれた3兄弟は...

テック系ギークはデザイン女子と結婚すべき論

「40代の既婚率は20%以下です。これは問題だ。」というのが新卒で就職した大手SI屋さんの人事部長の言葉です。初めての事業報告会で、4000...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

bottom of page