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14/4/18

平凡な会社員が、“脳出血で倒れて働き方を考え直した”話【第五回】

Image by Olia Gozha

寝たきり生活のはじまり。はじまり。

トイレにも自力でいけなくなった。体の状況は思わしくなく、右半身の痺れはいっそう強くなり寝返りを打つことすら困難になり始めた。

世の中のものが2重に見える(複視と言うらしい。)理由もわかった。左目を真ん中に固定しておくためにある筋肉のうち外側の筋肉が麻痺したために、そのバランスを崩した左目が真ん中に寄りはじめたために起こった症状だった。

どうやら出血が脳幹の左寄りに起こっていたため、首から下は右半身が、首から上は左側の至る所に麻痺が出初めたのだ。

僕の場合の脳出血は、とにかく血が引くことを待つしかないらしく、処置といえば脳圧を下げるための点滴と目が回るのを抑える薬を飲むぐらいで、ひたすら耐え忍ぶしか回復の方法は無いみたいだった。



痺れで右手がほとんど使えなくなった上に、とにかく座るだけでも目が回り気分が悪くなるので、毎日の食事が大変になり始めた。お昼と夜は家内に食べさせてもらったので何とかなったが、朝は一人で食べていたので、”一瞬座っては一口ほうばり寝て食べる。”を繰り返し、胸が悪くなるのと闘いながらだったのでとにかく時間がかかった。


経過を見るためのCT撮影も大変だった。

病室は2Fにあり、1FのCT室まで行くのだが、既に自力では全く歩けない状態だったので、車いすに乗せてもらって行くのだが、その僅かな道中でも気分が悪くなり看護師さんにトイレに寄ってもらいながら進むのがやっとだった。

CT撮影のためベッドに横になってもすぐに気分が悪くなり、まるでクジラのように上に向かって嘔吐したこともあった。


そして、いよいよベッド脇のおまるにすら近づけない状況に陥った。

少し座るだけでも激しく目がまわり、起き上がることすら困難になってしまった。しかしながら食事は取るものだからトイレをしない訳にはいかないのである。

そして、ついに家内が看護師にこう言った・・・

家内「おしっこの管を通してください!」

「!!!マジかっ!」

ついにその時が来た。

入院初日に同室となった痴呆症のおばあさんがつけていたアレである。

尿道カテーテル…まさか自分がつけるはめになるとは。

噂には聞いたことがある。とにかく男性の場合、カテーテルを入れるときの痛みが半端無いと。大体、モノを入れるべきところではないところにいれるのだから痛いに決まってる。この時ばかりは家内を恨んだ。男が感じる”この恐怖”を感じることは無いのだろう。

そうこうしているうちに、ついに看護師がカテーテルを持ってきた。こちらは身動きがとれず逃げることはできない状況であった。きたるべき時が来た。

看護師「ちょっと痛いかもしれないけど我慢して下さいね〜」

「ちょっと?ほんとにちょっと!?」

ぶすり・・・!!

イメージと違っていた。先のほうが痛くなるとばっかり思っていたが違っていた。おしっこを止めるために尿道を閉めている括約筋を通る時が痛いのである。

「何やこれ〜おえー!」

尿道の奥の方に鈍痛がはしり、吐き気さえしてきた。

そしてこれが寝たきり生活のアイテムが揃った瞬間だった。

<つづく>


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