新規ドメインで1年以内にビッグワードで1位を目指すことに
ウチの会社で定期的に開催しているWeb集客の勉強会。

(↑セミナー会場として利用することがある、紀尾井フォーラム)
2012年11月の出席者の中にひときわ上品そうな男性がいた。
聞くと「レンタルサロン」なる事業を始めたいとのこと、その集客をWebでやりたいということで勉強会に出席してくれたようだった。
森さん「今度レンタルサロンを始めたいと思っていまして、相談にのってもらえますか?」
私「はい。もちろんです。ところでレンタルサロンってどういう事業なのでしょうか?」
森さん「ネイリストやエステシャンなど独立開業をしたいと思っている人っているじゃないですか。ただ、テナントを借りてお店を持つとなると最初に結構なお金が必要になりますよね。」
私「そうですね。」
森さん「そういう人たちに向けてサロンの時間貸しをするビジネスです。貸し会議室のサロン版ですね。」
私「そういう事業があるんですね。面白いですね。」
森さん「貸し会議室や共同で使用するシェアオフィスは最近急激に増えてるんですよ。貸しビルのオーナーさんが借り手が居なくて困ってるんですね。そういうオーナーさんから格安でビルを借りて、貸し会議室などにするケースが流行ってるんですよ。」
この人、結構経済事情に詳しいな。やり手って感じだ。
私「そうなんですね。初めて知りました。」
森さん「そして、レンタルサロンという業態も今増え始めているんですよ。今、所有している自社ビルの数フロアをレンタルサロンに改装してビジネスを始めようと思っていまして。」
え?自社ビル持ってるの?この人何者?
私「そうなんですね。具体的にはWebを使ってどのようなことをしたんですか?」
森さん「会員制のサロンにしたいと思っていまして、Webを使って会員の集客をしたいと思っています。それで、今度ご提案をいただきたくて。具体的には「レンタルサロン」というキーワードで検索結果1位にしたいと思っています。」
ビッグワードで1位か。。
私「了解いたしました。ヒアリングを兼ねて今度おうかがいさせていただきます。」
ヒアリングの過程でクライアントさんがSEO・SEMの知識を結構持っていることが発覚
ヒアリングの結果はこうだった
・2013年の春に自社ビルの改装を終えてレンタルサロンをオープンしたい
・想定稼働率や損益分岐点を考えるとオープンから半年で会員数100名を集めたい
そして
・「レンタルサロン」「シェアサロン」というビッグワードで上位表示をしたい
とくに「レンタルサロン」というワードでは1位を目指したい
この人、SEOの事結構知っているな
というのが正直な感想だった。
その上で「レンタルサロン」というビッグワードで1位という条件。
アドワーズで「レンタルサロン」というキーワードの推奨入札単価を見てみると70円ほど(2014年2月現在で118円)
競合ページ数も300万ページ以上(2014年2月現在で520万ページ)
森さん「アドワーズで広告出してもいいんですけど、最近単価どんどん上がってますよね。」
私「よくご存じですね。」
森さん「ウチでも別の事業で広告を出してるんですけど、単価が上がって困ってるんですよ。」
私「それでSEOに力を入れたいと。」
森さん「そういうことです。」
私「それでは早々にご提案書を作成いたしましてご連絡いたします。」
森さん「よろしくお願いします。」
アドワーズやYahooリスティング、SEOの外部対策や内部対策などかなりの知識を持ってるな。
当然他社にも見積もりを出しているだろうし、納得ができる提案書を作らないと
後でわかったことなのですが、このクライアントさん別事業でECサイトを運営されており
同時にAmazonと楽天にも出品していました。
そのため、ネットでのビジネスに詳しかったようです。
見積書を出すと森さんの目に「!」マークが
提案書の内容はこんな感じ
・スマートフォンの利用者が急増している
そのため、スマートフォン対応は必須だ
そこで、Googleが推奨構成としているレスポンシブWebデザインという手法で作成する
・SEO対策は継続して行わないといけない、そのため保守運用契約も同時に締結してほしい
・ブログなどの運用はクライアントさんにご協力していただく必要がある
・新規ドメイン、新規サイトということで検索結果上位表示には時間がかかるのでこの点は理解してほしい
サイト作成後4か月目からアクセス上昇、検索順位上昇する見込み
・1年以内にTVキー局に何らかの形で取り上げられるようにする
森さん「内容はわかりました。」
私「ありがとうございます。」
森さん「TVに取り上げられるようにすると言うことですが、これは具体的にはどのようにするのでしょうか」
私「TVの番組制作会社は番組を作る際の情報収集の手段としてWebを活用しています。Web上に露出させることによって、番組制作会社さんの目にとまるようにいたします。」
森さん「そういうことができるんですね。それは魅力的です。」
森さん「ただ、金額が・・・」
私「そうですよね。よく言われます(苦笑い)」
目に「!」マークが出た理由は見積金額だった
ウチはWeb制作会社としては他社に比べて金額が高い。
これにはそれなりの理由があるのだが、クライアントが”見積もり時”に気にするのは「金額」「納期」そして「品質」
Web制作会社としてはクライアントが求める「品質」を達成するための「金額」「納期」なのだが、クライアント側からは「品質」より「金額」「納期」への質問が多くを占める。
これは当然で、できてもいないWebサイトの「品質」はわからないが、「金額」や「納期」については見積もり時点で理解できるためだ。
Web制作会社はWebサイト完成時の「品質イメージ」を描いているが、このイメージをクライアントと共有するのが難しい
ここで温度差が発生する。
当社のような小さなWeb制作会社は全員技術者、やり手の営業マンのようなアプローチはできない。
このような温度差が生じた場合は徹底してデータで説明することにしている。
理詰めという手法だ。
私「新規開設した同規模の直近のデータをみていただきますと、Googleアナリティクスではこのように推移してまして、順位もこのように上昇しております。御社の場合、新規ドメイン、新規サイト開設ということもあるのでこちらの事例同様の対策をとることでSEOの効果が見込めます。」
森さん「それはわかるのですが、同業のレンタルサロンや貸し会議室などの事例はありませんか?」
私「申し訳ございません、御社のサービスに近い事例は持ち合わせておりません。」
この質問は良く受ける。
そして、受け答えに困ってしまう。
同業の事例がある場合はいいのだが、Web制作会社の場合さまざまな業種を対象に仕事を受けている
同じ業種の制作事例が無い場合も多いのが現状だ。
森さん「そうですか。まぁ、○○さんからのご紹介だから信用できるのでお願いします。」
私「ありがとうございます。それでは契約の締結と制作の流れのご説明をさせていただきます」
・・・
営業マンがいない当社はほとんどの仕事を紹介で受けている。
こちらのクライアントも別のクライアントからの紹介だ。
当社が信頼されているのではなく、別のクライアントさんの信頼の上で受注が確定した。
これもいつものパターンだった。
信用はコツコツと積み上げていくしかない。
画像素材が全くないまま制作を開始することに
私「制作を開始するにあたって、レンタルサロン内の写真や外観の写真など素材をいただきたいのですが」
森さん「それが現在まだデザイン設計の段階なんですよ。」
私「ということは、施工が終わらないと写真などの撮影ができないということですよね。」
森さん「そうなります。」
私「春ごろのオープンを目指されているということでしたが、どのようなスケジュール感で考えられていますか」
森さん「3月ごろには施工を終えて、4月に備品などを搬入しながら撮影を進めて5月ぐらいにはホームページと併せてオープンしたいと思っています。」
私「了解しました。それでは現時点できる作業を進めておきますね。」
この時点で2013年1月。
素材が無いのはつらい。
私「それではブログを先行して開始しましょう。」
私「ブログはWordPressというものを使用して、オリジナルドメインで運用します。記事はこれこれこういうルールに基づいて書いてください。」
森さん「どういう内容を書けばいいですか。」
私「検索ワードとして「地域+レンタルサロン」などで検索されることが予想されます。そのため、周辺地域の飲食店や施設を紹介する記事、そして、サロンが出来上がっていく過程を赤裸々に書いていただけますか。施工工程や備品やオブジェなどの選定についてです。」
森さん「それは面白いですね。」
私「工事風景なども写真を取ってアップしてもらえればブログを見ているユーザーも一緒にサロンを作っている雰囲気が味わえるかと。」
森さん「なるほど。専属スタッフを決めてやってみます。」
森さんとの距離が少し縮んだ感じがした。
納期直前まで素材がほとんど無い地獄の状況
時間の経過と共に問題が浮上した。
工事がいつまでたっても開始されないのだ。
Webサイトの設計は完了してブログの細かいコンセプトも確定している。
工事が始まらなければ次のステップに進めない。
私「工事っていつから始まるんですか?」
森さん「それが予算と照らし合わせて設備などの見直しをしているんですよ。」
私「工事ってどのくらいの期間がかかるんですか?」
森さん「1ヵ月程度はかかりますね。」
私「でも今3月ですよね。」
森さん「そうなんですよ。。。」
私「そうなると、Webサイトの制作のスケジュールに影響がでますよ。そして、SEOにも。」
森さん「ところで、どのようなSEOを考えられていますか。」
私「当面は内部対策のみで進める予定です。」
森さん「外部対策はしないんですか?」
私「ええ。自作自演のリンクの設置やリンクを購入することはGoogleやYahooなど検索エンジンが禁止しています。検索エンジンにバレると、検索順位の下落などのペナルティを受けるので、当面は内部対策のみで進めたいと思います。外部対策をするにしても意図的なリンク設置はおこないません。」
森さん「大丈夫ですか?内部対策だけで。外部対策は即効性もあるので実施したいのですが。」
私「過去の事例でもお見せしたように、適切な内部対策をおこなえばそれなりの成果がでます。」
どうやら森さんは多少工事の日程がずれこんでもいざとなれば外部対策をして即効性のあるSEOをすればいいと考えられていたようだった。
ウチの説明不足もあったのだろう。
せっかく縮んだクライアントとの距離がまた少し開いてしまった。
森さん「設計会社からCGのデータが上がってくるので、それで進められる部分は進めてもらえませんか。」
私「了解しました。それでは仕組みを少し変更して、ブログ専用のドメインをとりましょう。ブログで事前にSEOを実施して、本サイトが出来上がったらブログで集めたアクセスをメインサイトに集めるようにしていきます。」
森さん「メインサイトはどうなりますか?」
私「CG素材をもとに可能な限り作成します。ただ、内部対策をしやすいブログを活用してアクセスを集めることに力を入れます。まずは、ブログ側のドメインパワーの強化を図ります。」
サイトオープン後、クライアントのイライラがどんどん増していった

2013年4月15日からブログを開始していて、メインサイトオープン時にはブログの1日のセッション数50程度となっていた。
サロン内の写真を掲載できるようになったのは、5月。
コンテンツ不足を補うために、カメラマンが撮影をしている過程をブログに掲載するなどして
アクセスを集めようとしたのだが、思いのほかアクセスが集まらなかった。
週1回の定例会では
・アクセス数の報告
・検索順位の報告
・会員数の報告
をメインにおこなった。
森さん「どのぐらいまでアクセスが伸びる予定で考えていますか。」
私「無理にアクセスを伸ばすよりは、コンバージョンの高い人にどれだけアクセスしてもらうようにするかに重点を置いています。現在の会員数の増加を考えるとメインサイトで1日100セッション程度実現できればと思っています。」
森さん「そのぐらいのアクセスで足りますか?」
私「はい。現時点の目標会員数でしたら大丈夫かと思います。」
こういうやり取りを定例会ごとにおこなった。
しかし、会員数は一向に伸びずにクライアントのイライラは増すばかり。
定例会は表面上穏やかに進められたが、ピリピリした空気感はいつもあった。
メインサイトオープンから3ヵ月は大きなアクセスの上昇は見込めない、ただし、4ヵ月目からアクセスが上昇し比例して会員数も増加する。
これは当社が一貫して伝えてきたことだ。
ただクライアント(森さん)からしてみると、高額な制作費と月額の保守運用費用を払っている。
支出だけが発生して、アクセス数が思いのように上がらないことにイライラが増すのがわかった。
最初の3ヵ月は我慢しよう。ただし、4ヵ月目になっても成果が上がらないときは、それなりの話をしなくては。
このように考えていたのだろう。
森さんに感謝すべきは、不安ながらも約束の期間では結果を出してくれるということを信じてくれていた点。
その気持ちが伝わるので、結果を早く出せるべくさまざまな施策をおこなった。
徐々に検索順位が上昇し始めクライアントとの信頼関係が深まった
森さん「ブログの検索順位上がりましたね。」
私「結果が出てきて良かったです。」
森さん「メインサイトの方もこの調子で上がっていくといいですね。」
私「メインサイトは「レンタルサロン」ブログは「シェアサロン」でSEOをしております。メインサイトで「レンタルサロン」の上位表示が実現できたら「シェアサロン」キーワードでも対策をしていきたいと思います。」
森さん「期待しています。辛抱強く待っていてよかったです。」
ウチの社内でも
デザイナーA「そもそもウチのやっている対策は正攻法だからアルゴリズム変動のマイナス影響はあまりうけないはず」
ディレクターB「そもそもウチのやっている対策は正攻法だからアルゴリズム変動のマイナス影響はあまりうけないはず」
ディレクターC「アルゴリズムの変動で、不正な対策をしているライバルサイトが順位を落とすはずだから大丈夫」
デザイナーB「そういう今までの考えを覆すような変動があるかもしれないよ」
などというやり取りがあったが、こうやって結果が出るとホッする。
TBSの番組でクライアントのレンタルサロンが使用されることに
ブラックマヨネーズさんと、ベッキーさんがMCを務めるTBSの「人間観察バラエティ モニタリング」という番組にクライアントのサロンが使用されることになった。
2013年11月14日の19:00から放送された2時間番組だ。
目的だったTVキー局へ取り上げられるという目標も達成できた。
メインサイトオープンからちょうど5ヵ月目の放映となった。
森さん「すごいですね。ホントにTVに出ちゃいましたよ。」
私「今回は撮影の場所を提供するというレベルでしたが、今後は情報番組などにレンタルサロン事業として取り上げられるように努力します。」
森さん「それは理想ですね。期待してます。」
追い風が吹いてきたのを感じた。
1ページ上部には表示されるものの1位の壁は手ごわい日々
森さん「メインサイトでは11月にキーワード「レンタルサロン」2位になってから順位が安定してますね。」
私「そうですね。そのうち、1位になると思いますよ。」
森さん「会員数も増加してますし、他のキーワードでも上位表示してますし、満足してます。」
私「ありがとうございます。ただ、契約時のお約束として1年以内に1位を目指します。」
森さん「期待しています。」
ただ、なかなか1位に上がらない。
レンタルサロンビジネスを始める会社が増えつづけている。
ビッグワード「レンタルサロン」ではSEOの戦いが激しさを増していた。
正攻法でやってきたので、時間が解決するだろう。
やることをやって、1位になるのを待つしかない。
最近声をかけていただく「期待してます」の言葉が嬉しくもあり、プレッシャーにもなっていた。
ついに1位達成、順位も安定し多くのクライアントを紹介してもらうことに

2013年12月ごろには検索時間によっては1位に表示されるようにはなったが、安定しての表示には至らなかった。
2014年1月28日に安定表示の兆しが見えた。
そして、2014年2月8日よりキーワード「レンタルサロン」でGoogle、Yahooともに1位表示が安定した。
大きな達成感があった。
森さん「やりましたね。」
私「想像以上に手ごわかったです。ライバルサイトがどんどん出現してかなり焦りました。」
森さん「内部対策だけでここまでできるんですね。」
私「ええ、ウチでも新しい実績が一つ増えて自信につながりました。」
森さん「ところで、ボクの知り合いの会社でSEOで苦労している会社がいまして、近所なのでこのあと時間があればご紹介させていただきたいのですがいかがでしょうか。」
私「是非よろしくお願いします!」
紹介の輪が一つ広がった。
そして外部対策に着手開始
外部対策を全くしていないのかというと、実はそうではなかった。
良いコンテンツ、使いやすいサイトを作るとそういったサイトはネット上で紹介される。
そして、レンタルサロンの会員数が増えると会員が自分のブログなどでサイトを紹介してくれる。
内部対策は副産物として外部対策を誘発する。
制作時に念頭には置いていたが、それを実感できた今回のクライアント、森さんには感謝の気持ちがいっぱいだ。
私「内部対策でできることはある程度やりました。今後は外部対策をしていきます。」
森さん「外部対策ってリンクを意図的に貼ったりはしないんじゃなかったんですか。」
私「ええしません。多くの人が継続して紹介してくれるようなコンテンツを作っていきます。そうすると、自然にリンクがあつまりますよね。」
森さん「確かにそうですね。」
私「少し乱暴ないい方ですが、会員さんになる見込みが無い方でもリンクを貼ってくれればいいんです。もちろんライバルサイトや同業者さんでもOKです。」
森さん「なるほど。」
私「コンテンツ企画などはウチの会社だけではできないので、またご協力していただき多くの人にリンクを貼ってもらえるようなコンテンツを作っていければと思います。」
最後に
クライアントさんの紹介。
ist village(イストヴィレッヂ)様
メインサイト
ブログ
外部対策の一つとして作っているのが
http://www.ist-village.com/service/salon/use/style/therapy.html
このような漫画でサロンの説明をするページ。リンクを集めることを目的の一つとしている。
レンタルサロンがある神田という地域についての情報発信をするページ。
などだ。
クライアントさんとの付き合いもSEOも似ているところがあると思う。
クライアントさんと付き合いでは、信頼関係を作り結果を出す。
検索エンジンとの付き合い方では正攻法のSEOをおこなう。
検索エンジンの目指すところは、ユーザーが求める情報により近い情報を検索結果に表示すること。
SEOを正しく実施し、ユーザーニーズにマッチすれば滞在時間が伸びる、直帰率が減るなどの状況が発生する。
これは検索エンジンとの信頼関係になると思う。
一つ実績が増えたので、自分たちのSEO戦略に自信が持てた。
新たな自信を持つきっかけを与えてくれたクライアントのスタッフのみなさん、代表の森さんに感謝してこの話は締めくくろうと思う。
ist villageの皆さん、ありがとうございました!
そして、これからもよろしくお願いいたします!
マインドジョイン社員一同より。