14/9/2
第6話 ワクワクで生きる。【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】


第六話 ワクワクで生きる
maho「…申し訳ございません!辞退させて下さい!!」
深く頭を下げたその足は、小刻みに震えている。
緊張と不安で胃がキリキリした。
ーうん。これでいいんだ。
震えるからだとは別に、心はしっかりしていた。
この日、私は自分の人生で大きな決断をした。
それは7年間追いかけてきて、そして自分の全てだった
"デザイナー"になるという夢を捨てた日だった。
そして、"自分を生きる"と決意した日だった。
もう3.11から半年がたっていた。
3.11 あれから
けんちゃん「まほ、人間力をつけなダメや。」
けんちゃん「自分で感じて行動するんや。携帯とか情報じゃなくて、自分で判断するんや。」
地震の後のゴッチャの新宿駅
まっすぐ向き合ったけんちゃんのことばが忘れられない。
歩いて帰宅する人たち
明日休みだと騒ぐサラリーマン
動かない電車
何度も言っていることが変わる報道番組
携帯がないと何も出来なかった私。
そして、3時間同じ場所で待ってくれたけんちゃんの、
他の人を助けに行く後ろ姿。
ーあれ?何が正しかったっけ?
ーえっと、わたし、何に認められたくて頑張ってた?
あの日3.11をさかいに、自分の何かが揺らいだ。
今まで持っていた価値観がグラグラと崩れ始めていた。
ずっと目標を追いかけて、何かに認められるように生きてた私。
デザイナーになるのも、洋服が好きなのも、
全部間違いなく、自分で選んだはずだった。
だけど、だけど、気づいてしまった。
ー今人生が終わったら、本当に後悔する
私は、今の自分の人生が、好きじゃなかったんだ。
生きたい人生ってなんだろう?
それからは葛藤の日々だった。
今年は2年通った学校も卒業の年。
もちろんそのあとは就職が待っている。
周りの友達はどんどん就職が決まっていた。
だけど、私は”デザイナー”で生きていくことに違和感しかなかった。
”デザイナー”どころか、もう、前の生き方に戻るのが嫌だった。
でも反対に、この違和感を認めたくない、今まで持っていたものを手放したくない。
そんな真逆な自分との戦いが繰り広げられていた。
夏休みは、生地屋さんに行ったり染めの職人さんのところへ行ったり、
今までの勉強が無駄にならないような、色んな職種を見に行く。
”デザイナー”という目標が違っただけなのかもしれない。
他の職種なら、違和感はないのかも。
他の仕事なら、またいつも通り追いかけれるのかも。
そんな言い訳のようなココロを引きずりながら、いろんな職種見学をハシゴしていく。
だけど違和感はなくなるワケがない。そんなところ、本質ではないのだから。
ピンとくる“仕事”がないなら、と、今度は大学を見に行くことにした。
大学で学び直せばいい。
資格を取ればまた何か見つかるかもしれない。
そうだ!肩書があったほうがなにかと便利だし!
とにかくまた目標を探さないと!
頑張らないと!!
そしてその大学見学の帰り、
私はプツンと何かが切れたように、駅のすみっこで立てなくなってしまったのだ。
本当の本音
ヒドイ頭痛と吐き気となみだで、下を向いた顔はもうぐちゃぐちゃだった。
本音から逃げる言い訳探しばかりだった頭が、急に真っ白になった。
もう自分にうそはつけなかった。
ーわたしの生きたい人生って?
人生で一番楽しかった時が思い浮かぶ。
それは子供の頃、双子のなっちゃんと毎日一緒にいた日々だった。
こどもの頃は最強だった。
今日が楽しくてたまらなくて、明日も楽しみでたまらなくて
毎日がキラキラしていた。

私の世界は、いつもカラフルで、
なっちゃんといた日々は絵本から飛び出したように、
ーそう、ワクワクしていた。

そのとき、ふと頭痛が止まったことに気づく。
球に力が抜け、何だか身体も軽くなった気がした。
小さいころ楽しくて何も悩んでなかった、あの感じに包まれていた。
そして顔を上げたとき、本屋が目に飛び込んできた。

正確には本屋ではない。
沢山並べられていた青いカバーの絵本が、しかもその一冊だけ、
本当に光って目に飛び込んできたのだ。
吸い込まれるようにその絵本を手に取ると、そこに書いていたのは
ワクワクして生きなさい。
という言葉だった。
そしてその言葉に、身体中の血が巡って行くのを感じた。
耳が熱くなって、お腹から何かがこみ上げてくる。
そう、これだ!!
もう私は何者にもなりたくなかった。
肩書も資格も、そんなものいらない。
もう、”自分で生きたい”。
ワクワクした自分の人生を、歩きたいんだ!
そして、双子のなっちゃんと!
それはすごい衝撃だった。
頭から雷が落ちたような、そんな感覚が身体を突き抜けた。
ワクワクした人生なんて、送ってはいけないと思っていた。
もっともっと頑張らないと!目標を建てないと!
自分の中の誰かが、いつも言っていた。
でも、答えは絶対にこれだった。
頭では何も考えれなかった。
身体が、ココロが、”これなんだ!”と
全身全霊で反応していた。
ノートいっぱいの答え
そのまま急いで恵比寿の自宅まで帰る。
どうやって帰ったかはもう分からない。
振りまくった炭酸がはじけたように
身体中がスパークして、ワクワクがとまらなかった。
家に帰ると、書きかけのノートをひっぱりだし、床に突っ伏したまま
とにかくワクワクする事を書きなぐった。
ー本当に、自由に、自分が生きたい人生を選んでいいとしたら。
自分が「いつか」や「もし」を使って考えていた人生を、片っ端から書きだす。
ノートはみるみるうちに真っ黒く埋まっていく。
字なんてもう汚くて読めない。
だけど、すごい熱量がこもっていた。
そこには、「非現実」と言われるような言葉ばかり並ぶ。
学校の先生や、両親に見せたら「何考えているの!現実を見なさい!」
と、怒られるものばかりだった。
でも、止まらなかった。もう頭で考えるのはやめた。
そしてすべて書き終わると、一呼吸おいて
びっしりと自分のワクワクが並べられたノートを広げた。
そしてそこに赤ペンで、思いっきりグルっと丸をした。
満点の夜空で流れ星を見つけるように、
一番ワクワクする、とびっきりの”人生”を見つけたんだ。

”なっちゃんと一緒に、旅をしながらワクワクして生きる!”
それが私の人生の答えだった。
頭で考えたら現実味もないし普通に考えたらとんでもない答えだったけど、
でも、私は本気だった。
だって、人生で一番ワクワクしていたから。
そして数カ月後、私は就職の最終面接を辞退した。
はじまりのはじまり。
そこから一気に、私の人生が不思議な流れで動き出す。
卒業1ヶ月を控え、全く接点のない3人の友人から
同じ本を、同じセリフで薦められるのだ。
「 人生を変える、不思議な本がある 」
そしてその本は、卒業式の日に私の手元にやってきた。
まさかそのとき、その本が、私の人生を本当に変えるとは思っても見なかった。
私の人生は、展開の読めない不思議なジャットコースターに乗ってしまったのだ。
でも最高にワクワクする。
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このストーリーは2015年に書籍化となり、
2019年にベストセラーとなりました。
『あーす・じぷしー はじまりの物語』
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彼女たちは『あーす・じぷしー』という名前で活動中!
それでは本日も、よい旅を^^♪
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