♪トイレにはそれはそれは綺麗な女神様がいるんやで〜

ガヤガヤ。ガヤガヤ
そんな声を発している人は一人もいないのだが、なぜかこの表現が一番しっくりくるのは何故だろう。
成田空港の発着ロビーはそんな騒がしさだった。
始めての海外旅行である私は、どうも落ち着く事ができず、ソワソワする。
何度もトイレに行ってみたり、喫煙所でタバコを立て続けに吸ってみたりもした。
ようやく。
搭乗のアナウンスがロビーに響いた。
今回の旅行は観光地、ではなく、フィリピンの首都マニラにある友人家族のところに行く。
属にいうホームステイである。
機内に入るとフィリピン人の美人搭乗員さんが
白い歯見せてスマイリーな挨拶してきた。

うん。間違いない。良い旅になりそうだ。
指定された席のアルファベットと番号を探しだし、席に着いた。
友人も隣の並びの席に座る。
機内アナウンスが流れる。
アナウンスの声「大変お待たせしております。この飛行機は出発まで20分ほどかかります。もうしばらくお待ちください。」
冗談じゃない!そんなに待てる訳が無い!
乗客の全員が待てても、わたしは待てない!
なぜならフィリピンが私を待っているからだ!
今思うとせっかちな性格ほど損なものは無いとおもう。
結局機内でも退屈になってしまったのでまたトイレに行った。
機内のシンプルで窮屈なトイレは居心地が悪い。
さてどうしようかと思った矢先、目の前にすごいものがあった!

おおお!タバコが吸えるじゃないか!
あんなに禁煙を、凱歌のごとく高らかに歌うこのご時世に
まさか飛行機のトイレでタバコが吸えるとは!
どうやらトイレの女神様は私に微笑んだようだ。
しかし!さらに私の視界にとんでもないものが映った!

禁煙マークである!
矛盾だ!あまりに矛盾している!
灰皿でニコチンを欲しさせて、禁煙マークで堕ちさせるという
なんとも人間心理を知り尽くした嫌がらせである!
トイレの女神様は微笑んでなどいなかったのだ!!!不覚!
いや、そうじゃない。そうじゃないんだ松本正治!
この禁煙マークは機内の席での喫煙を禁じているのであって、
トイレでは吸ってよいのだ!
英語力は壊滅的だが、少しは分かる!
IN TOILET とは即ちトイレ内のみでの喫煙を促しているのだ!
そして私は女神様に温かく見守られる中、くわえた煙草に火をつけた。
大きく息を吸い込む。
身体の中をニコチンが巡る。心地いい。
これで珈琲を淹れて、クラシックなんか流したら最高だ。