まるで最後の宝物を見付けたかのように、急いで手に取り会計を済ませました。その場からもう読み始めまし
た。家に着くまで半分くらい読んでいました。
しかし、本自身は退屈な読み物で、これといって感動したわけではなかったです。その日は取り敢えず寝ました。
翌日、英会話学校に通学しに新宿まで通っていました。車中でもどうしてもこの本が気になってしかたありません。
中3のチーちゃんが、ふと目にした「二人で殺人を」のタイトルに気になり買ったのです。その本のなにを読みた
かったのでしょうか。なにを知りたかったのか。偶然に目に入ったそのタイトルは、紳士をどうやって伯父さんと消
すか、気になったに違いありません。授業中でも気になり頭に入りませんでした。
二周目に読んだ時です。今までよく理解できなかったある単語が、頻繁に出てくるのに気付きました。
「パラミン」です。正式には「パラフェニレンジアミン」。これは今はもう殆ど使われませんが、劇薬の部類で写真のカラー現像にも使われていました。
本の中では、少量のパラミンを服用させると、筋肉が弛緩し始め、4時間後に被害者が亡くなっています。
最初はそうなんだぁ~くらいにしか思わず、スルーしていました。帰宅途中の電車の中です。冷房があまり効い
ていなくて暑かったのを覚えています。
頭のなかに、幾つものキーワードが巡っていました。「チーちゃん」「パラミン」「4時間」「湘南」
いったいどう繋がっていくんだ?でも彼女はこれを結びつけたに違いない、でもどうやって?
目をつぶりながら、一生懸命推理しました。
そして全部が繋がったとき、「あああぁ!」と叫ぶと同時に、上半身に鳥肌が総立ちになり、暑いはずの車内に居ながら、僕は全身に寒気が走りました。しばらくは、キーワードが繋がったことへの歓喜で狂いそうでした。
うわっ!すごっ!やっちまったよ!繋がった!そうかそうだったのか!
歓喜の時間が終わると、これって殺人事件じゃね?と素直に感じました。
「それじゃチーちゃんは本当に人を殺したんだ。。。やっていたんだ。。。可愛いんだけど、いつもどこかに憂いがあるのは、これだったんだな。。。」
と様々な思いが短時間のうちにめまぐるしく変わっていきました。歓喜のあとは恐怖が残りました。
ある光景が目に浮かびました。チーちゃんを乗せた紳士は、チーちゃんの希望で湘南海岸に海に向かって、停
車しています。既に事が終わった後なのでしょう、少女の願いを聞くくらいなんてことでもありません。
チーちゃんが用意した水筒から水をコップに注ぎ、紳士に渡します。紳士は黙って飲み始めました。
紳士は段々躰の変調に気づくようになります。躰が思うように動けなくなっていくのが認められました。
やがて毒を盛られたのに気づいた頃はもう遅かったようです。躰の自由は無くなっていました。
チーちゃんは動けなくなった紳士を確認した後、車を降り計画通りに、少し離れた所にいる伯父さんの車に
移りました。そして帰路へ向かいます。夕方になり、紳士の躰の機能は全てを停止しました。もちろんですが、心臓の機能も停止しました。
それから小一時間がしたくらいに、都下の家につきました。弟はあれ?とした顔をしていましたが、すぐに
普通に戻りました。
僕が思い浮かべた光景は以上です。たまたま興味があったタイトルの本には、実際に使える殺人方法があったので、チーちゃんはやった!と思ったのでしょう。そしてそれを実行したのです。


