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14/2/8

車いすの男性と出会って結婚するに至るまでの5年間の話 エピローグ

Image by Olia Gozha

誓い

クライマックスは新郎の挨拶だった。新郎の挨拶については、「ここで最後に挨拶するんだよ」としか打ち合わせしていなかった。常識的に考えて「本日はお集りいただき、ありがとうごあいました」というくらいなものだと思っていたし、彼も当然それを知っていると思っていた。だが、結婚式への参列の経験が少なかった彼は、どんなことを言うものなのか、実はよく分かっていなかったらしい。

新郎がマイクを手にして、最初に言った言葉が「高校2年のときに、事故で車いすになったときは高校に復学できるとは思いませんでした」というものだった。私は「え??」と思い、この人は何を言い出すんだろう? と思った。

「高校に復学できたときは、卒業できるとは思いませんでした。高校を卒業したときは、アメリカの大学に行くとは思いませんでした。大学を卒業できるとは思いませんでした。大学を卒業したときは、○○(会社名)に就職できるとは、思いませんでした。そして、結婚する日がくるとは思いませんでした」と続けた。

少し言葉に詰まりながら話す彼の姿に、会場は涙涙……だったらしい。私は彼が何を言い出すのだろうと、見守るような気分だった。

その後、たぶん支えてくださった方、お世話になった方へ感謝の言葉を述べたのだと思う。正確には覚えていないけれど。

そして、最後にこう言った。

「この場をお借りして、ともこさんを世界の誰よりも、宇宙の誰よりも幸せにすることを誓います。本日はありがとうございました」

この新郎の挨拶で、全て持っていかれた。会場のスタッフは「あんなこと、私も言われてみたい!!」とみんな感動していたそうだ。式の後、会う人会う人に「新郎の最後の挨拶はすばらしかった」と言われた。両親も「あれはよかった」と言ってくれたので、それはそれでよかったのだけど、「私も手紙読んだんだけどなー」と、思ってしまうほどだった。

幸せにすることを誓われた私は、そのとき彼が言葉に詰まりながら話しているのを見て「ああ、ちょっと演技してるなー」と思っていたり、「幸せにすることを誓います!」と言ったときは、「またまた〜。みんなの前でそんなこと言って、笑われちゃうよー」とか思っていたのだった。

後で出席してくれた友人たちに聞くとほぼ全員号泣状態で、お互いの顔を見られないほどだったらしい。私ももうちょっと、ありがたく聞いておけばよかったかな。

6月のある日に劇的な出会いをして、それから5年後の6月に結婚。夫婦としての歩みが始まった。


おわりに

長々となってしまいましたが、最後まで読んでいただいたみなさま、ありがとうございました。こんな私事のSTORYですが、“車いすの目線”を意識してくださる方がひとりでも増えるとうれしいです。

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