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14/2/3

母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。⑩

Image by Olia Gozha

2003年9月9日(火)~9月10日(水)1時30分

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徹夜で母の傍にいて、疲れきったままソファーでうとうとしていたら明け方夢を見た。

夢には元気な頃の母の姿と現在の無残な姿の母が出てきた。

そして、今でもはっきり覚えている。


「もう自由にしていいんだよ。あなたの人生も、夢も・・・私は苦痛から解放されます」と言っていた。

あれは夢だったのか?


一瞬だけ、母の意識がある場所に潜り込んだのではないかと思う。

わからないけど、なぜか忘れられない言葉だった。

日中は少し眠ったけど、そんなに寝てもいられない。

緊張で体が起きてしまう。

最後の最後まで目を逸らさず、看取ろう。

最期まで傍にいよう。

ただただ覚悟を持って。


母は常時目も口も半開きで苦しそうにうなり声を上げ続けている。

眼の乾燥が見た目的にもひどいため生理食塩水を目薬代わりに一滴さしたり、濡れガーゼで目を押さえたりした。

20時ごろ何気にガーゼ交換をしようとガーゼを取ったら、カッと見開いた母の目と目が合った。

すげー怖かった。


しかし、すでに意識はない様子だった。

この光景が目に焼きついて離れない。

母はただひたすら唸ってる。

背中をさすってあげたら声が止んだりした。

痛かったのか、寂しかったのか。

苦しいのか怖いのか。

この唸り声が耳に残って離れない。

精神的に俺も疲労の限界のままこの日も徹夜することにした。

昼は祖母が看ているが、夜は俺が起きて傍にいてあげたいから。

徹夜に付き合ってくれた職場の同僚がメールでやりとりしてくれた。

口の乾燥予防にと氷を口に一かけら入れ、同僚とメールのやり取りしてたその時、母の呼吸が急に不規則になり喉に水が詰まったよう「ゴポゴポ」といって呼吸が停止する。

救命蘇生はしないと誓ってたのに、体を起こして背中をさすったりたたいて呼吸を戻そうとするが、呼吸は戻らなかった。

母は俺の腕の中で目を開けたまま虚空を見つめ、筋肉が弛緩して行った・・・


呼吸・心拍・瞳孔散大を自分で確認する。

三兆候のいずれも消失していた。


9月10日、1時30分だった。


・・・・・・・・・壮絶な姿での最期だった・・・


母さん、長い間お疲れ様、大変だったね。

本当にご苦労さま。

ゆっくりと休んで下さいね。

最期にもう一度、今までありがとうね。

さようなら・・・


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