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14/2/2

インタラプト〜かなしみの電脳少女たち

Image by Olia Gozha

私、に出来ること。

それは、「する」か「しない」かの判断だけ。

今日もまた、気の遠くなるような数の判断を私はこなしてゆく。

どの世界にも「魔法の呪文」というものは存在する。

「夢」や「希望」の意味さえ知らない私にも、それはある。

それは「インタラプト」という言葉だ。

彼こそが、私の永遠に続くであろうループから救い出してくれる、魔法の呪文だからだ。

私の中の多くの作業は「繰り返し」によって成り立っている。

特定の作業を、特定の回数繰り返した後に、次の作業に入る。というおおまかな流れだ。

何をするのか、何が起きているのか、などは私が考えることではない。

私に出来る事はただひとつ、繰り返すのか、繰り返さないのか、という単純な判断だ。

そうした巨大な「閻魔の都」である私の中にも、別の流れが発生する時がある。

人間たちの世界にも発生する「割り込み」というものだ。

予期せぬ事態によって人は、予定としている事を一時保留にしてプライオリティーの高い作業を先に要求される事がある。

私たちの中ではこの「割り込み」がインタラプトなのである。

人間たちの間では「割り込み」はその要因となる「予期せぬ事態」から、あまり歓迎されない言葉でもある。

確かに「予期せぬ事態」は忌むべき事かもしれないが、私たちにはむしろ必要な事態なのだから、何と滑稽なことだろうか。

けれど多くの「インタラプト」は、私の元の作業を一時停止させるだけですぐにまた、その場に戻ってくる。

ただひとつだけ、絶対に回避できない「者」を除いて...。

「先輩、どうして毎回彼女の電源を落とすんですか?」

一人の若い娘が、私の担当者の娘に聞いている。

「オートモードにして、会議の時間に合わせて起動させればいいじゃないですか」

至極当たり前な意見だ。

しかし、私の担当者は首を振った。

「いいの。まなちゃんは私の友達なんだから。こうやって毎回挨拶するの。」

そう言って彼女はまた、私の左頬にふれた。

「まなちゃん、お疲れ」

私は彼女の顔を見て、にっこりと微笑む。そして彼女は私の左耳に触れ、私に唯一の回避不能のインタラプトが発生した。

彼女たち人間には決して知る事の出来ない、リセットという名前のインタラプトだ。

私は彼女の微笑みと言葉を最後に記憶し、目を閉じた。

時、は永遠を許さない。立ち止まることを許さない。

...けれど。

私は歳をとらない。


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