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長女が誕生した頃、妻は紙おむつにこだわった。
肌触りと吸収力、それに月齢を考えて買い求める。肌が弱い低月齢には、かぶれないことを重視し、動きまわるようになるとフィット感を想定した。幼少時にアトピー性皮膚炎に苦しんだ妻は、我が子にアレルギー体質がないことを祈りつつ、口に入れたり肌に触れたりするものには母性を発揮した。
特に紙おむつは絶対にむれることのないように素材を厳選した。
「今日のテーマは、ムレない、もれない、かぶれない。そして、かわいいやよ」
妻は出産に備えて紙おむつをたくさん買い込んでいたが、足りなくなると察するや特売日を狙い買い出しに走った。
このこだわりや現実主義の血筋は、間違いなく長女に引き継がれている。
長女が満四歳になったときのこと、
「おかあさんがな、もしいっぱいお休みとれたら、ディズニーランドに行きたい?」
妻が長女に聞くと、
「ディズニーランドは怖い乗り物がいっぱいあるし、行かなくてもいいよ」
長女は答えた。
「そんならどこへ行きたいの?」
問いかけると、
「山の中の温泉。でも、おかあさんが行きたいとこならどこでもいいよ」
長女は屈託がない。そして、
「一番好きなところはどこ?」
と、尋ねると、
「イオン。食料品売り場。試食もできるやろ」
四歳にして現実主義的な会話を成立させた長女を僕は寂しく思ったが、そのときから妻は将来がとても楽しみだと言っている。
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