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14/1/30

コネで適当に決まった就職がその後の生き方を変えた その5

Image by Olia Gozha

勉強をしよう

仕事にも慣れて、お金も貯まってきて、さて、何に使おうかと考えたとき、勉強をしようと自然に思えた。何かの資格でもとろうかと考えるようになり、ガソリンスタンドでの強烈な影響のせいで、危険物の免許なんていうのも考えた。でも、それは違う。経理だから簿記? 今さらのような気もするし、どうにも私に向かないと思った。どれも今ひとつ、行動に移すほどの魅力は感じられなかった。

いろいろ考えているうちに、カウンセラーというのを思い付いた。大学は、心理学、社会学、マスコミなどについて、広く浅く学ぶ学科にいた。心理学などに興味があったはずだったのだ。大学や大学院に行きなおすというのも考えたが、さすがにそれは現実的ではなかった。本当に自分に向いているのかどうかも分からないし。とりあえず短期間で、受講料も低い講座を受けてみようと思った。

入社2年目の夏ごろ、2〜3カ月の講座受けてみた。資格などがとれるような講座ではなかったけれど、カウンセラーってこんな感じのものだというとっかかりにはよかったと思う。それをやってみて、ちょっと物足りないと思った。もう少し本格的に学びたいと思った。

翌年、今度は当時の労働省管轄の産業カウンセラーという資格を目指すことにした。受講期間も7カ月ほどあり、理論学習の講義もあり、カウンセリング演習の講義もあって、かなり内容の濃いものだった。受講料もかなりの額だった。平日は仕事、週末はカウンセラーの講義を受けるという日々が続いた。

理論学習は問題なかったけれど、演習の時間が私にはかなりの負担だった。カウンセリング演習の講義は、講師とその補佐の講師と、そして生徒が7〜8人、毎週同じ顔ぶれだった。同じクラスの人たちは、ほとんどが年配の人たちだった。以前に鬱病を患い、完治したからそれを生かしたいと通っている年配の男性。今までの仕事を辞めて、カウンセラーで食べていくことを目指している男性もいた。

まだ20代前半だった私は、カウンセラーを目指すには人生の経験値が足りないなと実感しながら演習を受けていた。人間としてまだまだなのに、カウンセラーなんてと、だんだん自信もなくなってくる。自信がなくなってくると、声も出なくなって、補佐の講師の男性に「声が出てないよ!」と注意されて、それでまた萎縮してうまくできず、悪循環だった。

12月に資格試験があった。筆記と小論文の1次試験に受けると、2次試験の面接に進める。カウンセリング演習では、1次試験の小論文対策のための講義もあった。小論文のテーマを出されて、翌週までに書いてこなくてはならない。また同じクラスの人たちの前で音読したり、交換して読み合ったりした。

カウンセリングの演習はあまり得意ではなかったけれど、小論文に苦手意識はなかった。講師や他の生徒さんたちから「酒井さんは文章が上手だね」とよく言われた。他の人の文章に触れる機会など、今まであまりなかったけれど、確かに私の文章はまともだと自分でも思った。別に文才があるとは思わなかったけれど、何が言いたいか伝わる文章が書けると思った。他の生徒さんたちの文章は、言いたいことが分からないものもずいぶんあったから、それに比べれば私はマシだな、と思っていた。

7カ月の長かった講座を終えて、いよいよ試験の日が近づいてきた。筆記試験は問題なかった。あまりにも簡単で拍子抜けしてしまった。小論文も手こずることなく書けた。1次試験は合格だった。2次試験はカウンセリング。同じ受講者の人と、ふたりの面接官の前でカウンセリングをし合うのだが、見事に落ちてしまった。

カウンセリングの面接の試験は、順番にひとりがカウンセラー、ひとりがクライアントになって、カウンセリングをし合うのだが、クライアント役になったときに、会社の愚痴を吐き出してしまった。それはもうとどまるところを知らない感じで。それが原因かどうかは分からないけれど、産業カウンセラーの資格をとることはできなかった。

でも、諦めなかった。カウンセラーの勉強を続けた。

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