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14/1/30

住所不定無職の旅人なのに結婚することが出来た話①

Image by Olia Gozha

ふと気が付いたら自分はカオサンの2段ベッドでぼんやり天井を見上げていた。



母が自宅で看取り、息子としての責任は果たしたので、なんだかもう日本にいる理由もないことに気が付き、以前から計画していた放浪の旅にでることにしたのだ。


自身の荷物も殆ど処分し、段ボール5個だけ友人の実家に預け、ずた袋1つでタイ・バンコクに降り立っていた。

バックパックすらも持っていないため、バックパッカーですらない。


年金や健康保険料を支払いたくないので、住民票を抜いてきたので正真正銘の住所不定無職になった。


住所不定無職。

この響きに憧れた。


そんな自分がなぜ住所不定のまま結婚できたのだろうか?




出会いは代官山


海外に旅経つ前に1週間だけ東京の友人宅に留まり、様々なコミュニティーの仲間と連日お別れ会を兼ねて飲み明かしていた。


「俺は一人旅で5年は世界中を周ってくるから、日本にはもう帰ってこないかもな!今生の別れとなるかもな!」と、毎晩友人らと騒いでいた。



そんな飲み会の一つで後彼女に出会った。



その集まりは異業種交流会で、「これから社会でのしあがっていこうぜ!」的な熱いノリの連中がコネクションづくりに集まる集いだった。



その名も「Fly!  Highers!!」

名前からしてアゲアゲである。



俺も彼女も友人の誘いで参加したのだが、俺はすでに住所不定無職で日本を発つ前であり、完全にそのノリについていけなかった。


彼女は東京で総合職としてバリバリ働いていたが、男性社会では出世その他でだいぶ男女差があり、今後辞めようかと悩んでいた。


係の人が多くの人と話せるようにと席をシャッフルしながら進めていたら、偶然一緒の席になりお互い場の雰囲気になじめなかったため、気が合った。


互い一人旅が好きで、互いの旅先の話で盛り上がった。


その時の印象は、「洗練されたきれいな東京のお姉さん」って感じだった。



帰り道が偶然同じ方向だったため、東京に滞在中また会おうよとデートを申し出た。


しかし、「どうせすぐに旅にでるんでしょ?」とサクッと断られた。


だが、めげずに誘っていたらOKしてくれた。



2回目にあった時は旅への出発前日に川崎で夕食を一緒に食べた。


すでに旅が始まっているようなものなので、気持ちが舞い上がっていた部分もある。

それに、長期一人旅をこれからする寂しさを抱える故に人恋しかった部分もある。


なんとなくこの時からこの子好きだなぁとは思っていたが、すぐに旅には出発することには変わらない。


気持ちを言葉にはできない。

しても仕方がない。


だが、帰りの電車で途中まで一緒だったため話しながら乗って、俺が降りる駅に着いたときホームに降りる前に彼女にさっとキスをして別れた。


彼女も周りも驚いていた。


そして、電車を見送るともう会えないかもと思い、とても寂しくなった。


寂寥感を抱えながら友人宅に戻ると、彼女から深夜にメールがきた。


「さびしいよぉ」だった。


いてもたってもいられず、タクシーを捕まえ彼女の住んでいる所まで走ってもらった。


細かい住所は知らなかったが、メールで連絡すると、外に出てきてくれた。

そのまま朝まで川沿いの土手を散歩しながらいろんな話をして一緒に朝日をみた。


とても元気になる力強い朝日だった。



東京に滞在中彼女に会ったのはこの3回のみであった。

俺はその日そのまま旅に出発した。



旅先での再会へ向けて。


再び冒頭に戻る。


気が付いたら俺はタイ・バンコクの安宿街カオサン地区にある安宿でぼんやり天井を見上げていた。



様々な土地で様々な出会いと別れを繰り返し、それでも旅を続け、時折友人にメールで旅の様子を送る日々を重ねていた。



寂しくないわけはないが、寂しいから人とのつながりを主体的に求め、異文化を吸収する。

そんな悪くない感覚だった。



けど、旅先でいくら新たな友人が出来てもすぐに別れが来て、感動を共有できないことにとても寂しさが募っていた矢先、彼女からメールがきた。


「自分も仕事を辞めることにしたので、しばらく旅に合流してもいい?」と。


一人旅では、ずーーーーーっと一人で旅することはむしろまれで、大体途中で旅仲間が出来てルームシェアしたり、次の町まで一緒に移動したりと案外すぐに仲間ができるので、そのノリで、

「全然OK!」と返事した。


彼女と合流したのは長期一人旅を始めて半年が過ぎた頃だった。


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