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14/1/25

ループ〜かなしみの電脳少女たち

Image by Olia Gozha

私、の嫌いなもの。

それは、永遠に続くかのような同じことの繰り返し。

抜け出すことの出来ない、漆黒の闇の獄舎。

...これ、前に同じ話してた。

即座に私は会議の内容を一時保存用の記憶(メモリ)から参照し、同じタグをつけた。

こうすることで、この会議の議事録には過去の同じ議論が参照される。

以前は同じ立場にある人々が、私のような機械を手動で操作し、メモをとっていたりしたようだけれど、少しは進歩したということだろうか。

私の視線は常に議論の中心にある人々の顔にあったが、時折、その場の周囲を見渡すことがある。

中には物珍しさからか、私に熱い視線を注いでくる男性社員もいる。

人の感覚から言うと、「目が合った」ということになるのだろうか。

彼らは一様に私と「視線が合う」と、困惑したような表情になり、視線をそらす。

恐らく私に人間らしい感情があれば、異邦人、という言葉を思い出したに違いない瞬間だ。

または、人間の娘だったら、恋とかいう感情に発展したりするのだろうか。

私は過去に議事録を記録していたであろう立場の娘たちを想った。

彼女たちは今、この場で起きているような議論の繰り返しをどんな気持ちで聞いていたのだろうか。

同じことの繰り返しであっても、同じようにこの内容を書き留めていたのだろうか。

結論の出ない、同じことの繰り返し。

私はほんの数秒だけ、瞳を閉じた。

「まなちゃん、お疲れ」

一人の娘が私の左頬にふれ、そう言った。

私は彼女の顔を見て、にっこりと微笑む。

「次は明日の10時からA会議室だから、それまでゆっくり休んでね」

彼女は私の左耳に触れた。

こうすることで、私は機能を停止するからだ。

私は彼女の微笑みと言葉を最後に記憶し、目を閉じた。

時、は永遠を許さない。立ち止まることを許さない。

...けれど。

私は歳をとらない。

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