top of page

14/1/23

白い机を買ったらあかん

Image by Olia Gozha


少女時代、白い机にあこがれていた妻は、両親にせがんで真っ白い机を買ってもらった。決して裕福ではないことを感じながらも、生まれて初めて強烈なおねだりをした。

願いはかなった。夢心地で眩しく光る机を眺めた。

しかし、実際に使い始めると、白い机は汚れがつきやすく埃が浮き立った。傷があちこちにできて目立ち、すぐに傷だらけになった。

妻は想定とはずいぶん違うと思いつつも不満を口に出さず、高校を卒業するまで大切に使い続けた。

「白い机を買ったらあかん。必ず後悔するから」

妻と出合った頃にこの話を聞いてから、想定外のことが重なりうまくいかなかったときには、

「白い机のようだ」

と、僕は茶化した。

嫁の衝動買いを制するときにも、

「白い机になる」

常套句としてよく使う。

「モノは大切に使わなあかんから、無理して『これ!』っていう一点ものを買うと、それがはずれたときにたいへん。安いものでいいから、いろいろと品を変えられるもののほうがいい。わたしは子供の頃にこのことを勉強したんやよ」

妻は言う。

今では白い机は屋外に出されている。四半世紀を経て今もなお園芸用品の物置として大切に使われている。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page