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14/1/20

微糖とブラック

Image by Olia Gozha

僕は大の缶コーヒー好き。一日に五、六本飲む。

適度に血糖値をあげるときにも缶コーヒーを飲む。糖分を控えるために微糖と決めている。唯一、車を運転するときには眠気を防ぐためにブラックを飲む。この飲み分けを妻はよく知っていて、ディスカウント店では微糖とブラックを適度に配分してまとめ買いし戸棚にストックする。

「缶コーヒーには大さじ三杯の砂糖が入っとるって。最低でも角砂糖四個。そのほかにも甘味料」

妻は言うが僕はひるまない。

もとより弱い味覚がさらに落ちたためか、微糖とブラックの味の違いがわからなくなることがある。健康を考慮した微糖路線を無視して甘ったるい缶コーヒーを飲むこともある。結局、自ら決めた飲み分けはあまり意味がなくなり、どの缶コーヒーでもよくなる。

インスタントコーヒーであれば砂糖を多少加減するが、インスタントでさえもカップに入れる手間を面倒に感じ敬遠する。そして、缶コーヒーに手を伸ばす。

「いくら微糖でも、ガブ飲みするのはどうかと思うけど」

妻が言う。


「持病もないし、成人病にもなってないよ」

ささやかな反論を試みると、

「それでも突然じんましんが全身に出たり、夕方になって気持ち悪いって急に寝込んだり、下痢ばっかりしているのは不健康な証拠やで。普段まったく病院にいかんけど、行くときは救急病院なんやから。もうちょっと体に気をつかうべき」

「目下、無病息災やけど」

しばらく間をおいて、さらに反抗してみる。

「そのうち大病するよ。大体、無病息災なんて言うのが間違い。今はひとつ持病があって体に気を使っている人の方が健康的。一病息災なんやよ。あなたはきっと寿命が短い」

「大丈夫。長生きの家系やから」

「そういうところが無頓着なんやわ。それに頑固」

ガチャガチャとキーボードを叩いて妻はネットサーフィンを始める。こうなるとやや形勢不利になる。僕は黙って缶コーヒーをガブガブ飲み干す。

「あんたは動物占いではサル。木を見て森を見ず」

大筋では当たっている。


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