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14/1/7

いじめとひきこもりから映画監督に(4)

Image by Olia Gozha

チャットで出来た友人を心から信じられた

私が常連になったチャットは、「Terry's Wander Chat」(WanderはきっとWonderなのでしょうけど、原題のまま)通称「てりちゃ」と呼ばれていました。

Yahoo!検索で17位に登場していたそのチャットはアクセス数が当時10万ほども行く人気サイトだったのです。

なぜこのサイトを選んだかと言えば、他のチャットと大きく違ったものがあったからです。

2000年当時でアイコンが付けられるチャットは珍しかった

当時は、ISDNが普及し始め、通信速度も大変遅い時代でした。そんな時代ですので、文字をリアルタイムで更新していくチャットのサイトはサーバーにも負荷が大きく、俗にいう「重たいサイト」の代名詞でした。

Yahoo!検索で上から検索していきながら、どれもピンと来るものがなかった中に、17位にあった「てりちゃ」はアイコンを付けることができるチャットだったのです。

こんなアイコンが10個以上も選べるチャットだったのです。アイコンもかわいらしいところがとても気に入り、このチャットに初めて飛び込むことになったのです。後で知ったのですが、これらのアイコンはPostPetというメールソフトのキャラクターたちだったのです。PostPetのことを知らなかった自分は、純粋にアイコンが付けられる属性の特徴に惹かれたのだったです。

初めてのチャットは驚愕の出会い

実世界から逃げるように飛び込んだチャットの世界で待っていたのは、自分が18年間出会うことがなかった出会いでした。それは、小さい頃から大人の世界に憧れ、世代を越えた人と話すのが大好きだった自分にとってはまさに夢のような出会いでした。

大工の兄ちゃん、ニートの大学生、水商売のお姉ちゃん……

偏差値だけを争ってきた自分にとって、自分とは全く異なった生き方をしている人と会話できることに身震いがしたのを覚えています。

小さい頃から、仕事や大人の世界に強い関心があった自分にとって、彼らとする話は、自分が小さい頃から憧れていた世代を越えた人と触れ合いたいという願いをそのまま、叶えてくれました。

当時は、まだインターネットがさほど普及していない時代でしたから、誰しもがネットに慣れている時代ではありませんでした。そんな中で、チャットに慣れ親しんでいる人たちでしたので、皆個性的で、話していても話題に尽きることはなく、チャット漬けの生活はさらに加速をしていいったのでした。

チャットの常連A「昨日、大井競馬に行って10万すっちゃったよ〜」

19歳のおいら「競馬ってどうやってやるんですか?」

チャットの常連B「大学3年なんだけど、学校行かないで、バイト生活していたら、店長になっちゃったよ〜」

19歳のおいら「単位とか大丈夫なの?」

チャットの常連B「いいの、いいの。退学しても生きていけるから。」



チャットの常連C「今日の客、最悪〜。」

19歳のおいら「なんの仕事してるんですか?」

チャットの常連C「ん? 水商売。キャバクラで働いてる。」

みたいな会話が連日続き、既に常連であるチャットの仲間と次々と仲良くなっていき、チャットの仕組みにも慣れていって、対人恐怖だった自分が、少しずつ自分から話をすることができるようになったのです。


チャットの常連D「君、仕事何やってるの?」

19歳のおいら「大学生です。一年生です。」

チャットの常連D「へー、どこの学校?」

19歳のおいら「早稲田です。」

チャットの常連D「勉強できるんだねー。」

19歳のおいら「東大落ちたんですよ。」

チャットの常連D「へー、東大! アタシなんか中卒だよ〜」

東大や医学部が当たり前の学校に6年間もいると、大学に行かない人に出会うことなど全くなかった自分が、高校に行っていない人と話せることは、緊張と共に高揚感でいっぱいでした。

話を聴いてくれる仲間が沢山いた

18年間の人生で何より違った感情が、「自分の話を聴いてくれる人がいた」ということでした。

それまでは、テレビドラマの話や歌手の話をしても、無視されるかバカにされるかだった自分の話を、年齢や身分に関係なく、チャットの友人はいろいろと聴いてくれたのでした。


チャットの常連A「おまえ、どんな歌が好きなの?」

19歳のおいら「ユーミンとオザケンです。」

チャットの常連C「へー、いいね! 私も大好き。ユーミンは、恋人はサンタクロースが好き。私はオザケンよりも小山田圭吾がいいな。」

19歳のおいら「小山田圭吾って?」

チャットの常連D「あ、あたしも。君知らないの? フリッパーズだよ。」

みたいな会話が続き、自分の興味と共に、知らない知識や世代を越えた話が朝から深夜までずっと続くのでした。現実世界にはないこの感覚に、ある種の中毒のようになり、24時間チャット生活が続いたのでした。

いつしか常連に、そして初めてのオフ会へ。

いつしか「てりちゃ」の常連となった私は、オフ会という言葉を初めて知ることになりました。チャット上の友人がリアル空間で出会うのですが、顔が膿だらけ、他人が怖い自分が、そんなリアルな空間に出て行って、学校のように拒絶されるんじゃないかと、ビクビクしながらオフ会の当日を迎えたのでした。

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Image by Jukka Aalho

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