はじめまして、高原千晴と申します。
今回は、わたしがこの3ヶ月体験してきた「縁もゆかりもない地方都市でバーテンダー」の話。
わたしがどうしてそんなことをすることにしたのか。やってみて、どうだったか。
休学や地方や働き方や学んだこと、自分の手で切り開いた新しい生活のことを、まとめてみました。
すこし長くなりますが、興味ある方に届けばいいなあ、と願って。
自己紹介と休学の経緯

きっかけとなった知人の一言

知人「松山に日本で一番カクテルが美味いBARがあるんだけど行った?」
日本で一番...誰がどう決めたのか全く分からないのですが、知人曰くそんな風にそのBARを称える人がたくさんいるというのです。私は当然その話を聞いておらず、するりと通ってしまっていました。その時は「なにそれ知らない!はやく言ってよー」で終わったのですが。

それに旅中気付いてから、復学した後アルバイトを探してやってみようと決めていたのは、バーテンダーでした。
わたしの中にあった、お酒が好き、という漠然とした想い。だけど、知識として経験として全然なにもわからない。
だから、お酒に詳しくなれそうなバーテンダーをやってみたいと思っていました。なんかカッコいいし。
日本で一番カクテルが美味い、かあ…。
ふつふつと、確実に、頭の中が急展開を迎えました

思いついてしまったわけです、「その松山のお店で働かせてもらえないかな」と。
日々通り過ぎて行く、初めての地方都市、知らない街々。
「鳥の目」で日本全国を俯瞰する半年間でした。そうしたら次は「虫の目」で、どこかの街をじっくり見てみると楽しいかもしれない。
どこか1カ所くらい、勝手知ったるところができてもいいんじゃない?なんて。
縁もゆかりもない地方都市に住んでみて、仕事をして、知り合いをつくって、生活をしていく。
お酒の勉強をしながら。BARで働かせてもらいながら。それってめちゃくちゃ面白そう。
愛媛県松山市。大きすぎず小さすぎず、ほどよく都会でほどよく田舎。温泉もあるし、もうなんか、突拍子もない感じが、良い。
松山のBARのことを教えてくれた知人に相談してみると、「やめとけやめとけ」と言われました。
「ホントこだわっててスゴいところだから、お酒勉強したいんです〜なんて甘っちょろい素人が行くところじゃない!」と。
それでも諦めきれず、連絡をとってみました。8月上旬のことで、わたしは東北の温泉取材のまっただ中です。
その時すでに、松山のお店がもし駄目でも、他の地方都市でバーテンダーをやってみようとは決めていました。
候補は松山、高知、長崎、鹿児島などなど。縁もゆかりもなく、東京から遠く、大きすぎず小さすぎず、行ってみて感じの良かった地方都市が候補でした。
休学中に住むとなれば、冬を越すのは必至。なるべく暖かいところが良い、ということもあり(笑)四国・九州に絞りました。
松山にバイト面接へ

松山のBARとの、メールのやり取りが始まりました。
ひとつひとつ丁寧に事情を説明し、どうしても働かせてほしいとお願いしました。
「ひとまず会ってみないことには」と、至極当然のことになります。
旅が終わったのは8月31日のこと。9月2日にバイト面接のため松山へ飛びました。
この時もはや、松山への憧れでいっぱいでした。春先に道後温泉の取材で訪れたときの、見てきた景色すべてが、伏線だったような気がして。
マスターのMさんとは、仕込み前のお店で落ち合いました。
「夕方から仕込みで営業は朝まで」「毎日働いてもらって、日曜は基本休みで」「お給料はこのぐらいで」。
とんとん、と話が進んでいってびっくり。Mさんは私のことを、雇うつもりで迎えてくれていました。
本当にいいんですか、と聞くと、「正直人手は足りてるんだけどね。教えることも勉強のうちだから」という、超絶なプロフェッショナルっぷり...。
そうして、松山でバーテンダーをすることになったのです。
わたしは東京へ帰り、家族や友人に事情を説明し、慌ただしく準備をはじめました。
休学届に「松山でバーテンダーをするため」と正直に書いて提出したけれど、受理されなかったらどうしよう、なんて。
わくわくで、はち切れそうでした。これからの日々に。