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13/12/23

~リストラの舞台裏~ 「私はこれで、部下を辞めさせました」 7

Image by Olia Gozha

リストラを行なう側となって、自分の部下たちと面談をすることになったわたし。


最初の面談相手は、入社して4年ほどしか経っていない女性社員だった。




何もしらない彼女が、わたしの待つ面談室へとやってきた。


きちんとドアをノックして、わたしの許可を得てから入室する彼女。



いつものような笑顔で「失礼します」と会釈をくれる。


わたしは、まるで面接でもするように着座を促す。


ここまでは、本当に面接のようであり、その実は会社を辞めさせる


ための話し合いだというのが、まったく皮肉な話だと思う。




わたし「週末は何してたの?」

彼女「友達とディズニーランドに行ったんですよ!」

わたし「ともだち??本当に、ただの友達なの?」

彼女「そうですよー。彼氏とって言わせたいんですよね。」

わたし「そういや、彼氏とは最近どうなの?ぼちぼち結婚とか言ってなかったっけ?」

彼女「まだそんなの考えてないですよ。向こうは結婚しようねとか言ってくれますけど。もっと仕事してたいですもん。」

わたし「結婚は早いほうがいいよ。いいらしいよ。ぼくはしてないけど。知ってると思うけど。」

彼女「笑結婚する気ないんですよね。この間同期の娘が、若い女の子と手をつないで歩いてるの見たっていってましたよ!」

などと、本題へ入るための糸口を見つけようとするわたし。


部下といっても10歳前後しか変わらないため、非常にフランクな付き合い方を


していた。プライベートな相談にも乗るし、休日に大勢で出かけることもあった。



目の前にいる女性社員は、わたしのつくった処刑リストでは後半に


リストされている。彼女については、退職させないつもりだった。



しかし、役員から命じられた人数に届かない場合、リストの下に乗る部下でも、


辞めさせることができそうであれば、退職してもらう可能性がある。



同時に、全員と同じ話をして、リスト順位に関わらず、本人が希望してくれれば、


こちらとしては胸の痛みが少なくミッションを完遂させることができるのだ。





彼氏や結婚の話を出してみたのも、実は狙いがあった。


寿退職ということになれば、誰も恨まず、誰からも恨まれず、


祝福されながらの退職が可能だと思ったからだ。



とはいえ、20代半ばの部下にしてみたら、結婚はまだ先の話であり、


例え早めに結婚したとしても、仕事を続けたいと考えていたわけで、


寿退職などはまったく頭になかった。



候補外の部下ということもあり、とりとめのない話をしながら、


景気から考えて、今後はキツイ仕事も受けていくことになる、


などといった厳しい話をしていった。



自分でも想定できていないくせに、考えつく限りの厳しい方向へ示唆する。


徹夜は当たり前になるかもしれない。みんなががんばるので、今までより


高いパフォーマンスだったとしても評価されないであろうことを伝える。



それでも彼女は健気だった。


彼女「この仕事を選んだときから、忙しいのは覚悟してますから。それに、夜中までみんなでがんばるのって、学園祭みたいで楽しいですよね。」

わたし「そうだね。大変なことも多いけど、がんばろう。でも今日の話を聞いて、不安なこととか出てきたら声をかけてください。また面談するから。何度でも話し合って、納得した上で働いて欲しいんだ。」

などとお茶を濁しつつ、面談を終えた。

残って欲しい部下だったので、前向きな発言にほっとするも、
同時に不安も覚え始めていた。

彼女が特別なわけではなく、その他大勢も同じような志向を持っていると
考えられるからだ。

中には処刑リストの先頭に名前が上がる部下もいる。
彼ら・彼女らが同じように「がんばりますよ」と言ってきた場合、
どうやって「がんばれません」の言葉を引き出せばいいのか。

リストの後ろのほうを中心に、その日の面談を終えた。
明日からは、いよいよリスト上位の部下と面談がある。

気が重くて仕方なかった。

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