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14/1/16

無名教師の冒険 宇宙飛行とラグビー編

Image by Olia Gozha

 宇宙飛行といっても、それほど大げさな話じゃない。ラグビーとそんなに関わりがあるわけでもない。しかし、それでも共通したモノは確かにある。


 この写真は、1961年4月12日午前9:07(モスクワ時間)、ユーリ・ガガーリンが乗った「ボストーク1号」の打ち上げ前に、バイコヌール基地(今はカザフスタン)にて撮影された。

 約10分後の午前9:18、地球周回軌道に入ったボストーク1号は、約90分で地球を1周した。その後、帰還カプセルを分離し、ガガーリンは無事に地上へ生還した。写真は打ち上げ前の緊迫した空気が、半世紀を経た今でも伝わってくる。

 当時、各国間で激しい宇宙開発競争が繰り広げられていた。宇宙への一歩を踏み出すのは自国の人間にするんだ、と半ば熱狂的に盛り上がっていただろう様子は、容易に想像できる。

 そんな中での、このガガーリンの偉業には、人類による宇宙への第一歩という意義があるだけではない。世界中の人々が新聞やテレビを通じ、この偉業を称えたという。その偉業とは、人を宇宙まで送り込むほど高めた技術力ではないように思う。その技術を生かした心の力、精神性を称えたように思うのだ。「よくぞ行こうと決心し、そして無事に帰ってきた」といったところだろうか。

 偉業というものは、どこの誰が成し遂げようとも、どこの誰にも等しく感動と夢を与える、ということも教えてくれているのだ。


心無い得点王

 かつて、ラグビー部に所属していた。当時は少々足が速かったせいか、トライ(得点方法の一つでボールを敵陣ゴールまで持ち込みタッチダウンすれば5点)の数は所属していたチーム内で一番多かった。

 チームメイトには、「パスをくれれば得点して来てやる」などと冗談交じりながら、半ば本気で自信過剰な態度でいたように思う。当時、このような発言をする私に精神性は無かったように思う。敵チームの防御ラインを技術とスピードで振り切り、自分で得点することだけを考えていたのだろう。得点すれば皆が喜び、チームに貢献していると感じられると気分が良く、その感覚に酔いしれてもいた。

 毎日の練習では、ひたすらに自分が得点するための技術を磨いていたような気がする。チーム練習でも、自分の得点技術向上しか頭になかったのではないだろうか。

 もちろん、それがチームの勝利につながると考えてはいた。しかし今思えば、本当は自分のことしか頭に無く、あの良い気分に酔いたいだけだったのかもしれないと思う。

 チームのことを考えなかった私に精神性など感じられない。そんな私の心には皆も気づいていたと思うが、毎日のように技術を磨いていた私にボールを預ければ得点につながっていたことも事実で、チームには複雑な思いをさせていたに違いない。


技術を生かす精神性

 ある試合で、私は敵の防御ラインを突破できず、振り切れず、何度も倒された。得点できない。あれだけ練習したんだ。なんとか一矢報いたい。そうできるところまで攻め込んだとき、チームは私に再びパスを回してくれた。

 あの時は悔しさとうれしさが混じったような、イラついた表情をしていたに違いない。再びパスを受けた私は、またもや敵の防御ラインに捕まった。が、絶対に得点したかった。「このボールを仲間に渡さなければ」そう瞬間的によぎったのかもしれない。

 倒れながらも今度は近くの仲間を見つけ、なんとかボールを預けることができた。私は地面に倒れされたまま顔を上げ、ゴールに飛び込む仲間と歓喜するチームの笑顔を見た。そして私は、この為に技術を磨いていたのだと気づいた。

 誰が得点しようと、そんなことはどうだって良いじゃないか。そう吐き捨てるようにつぶやいた時のうれしさ、気持ち良さといったらなかった。 

 心の力、精神こそが技術をいかす。技術に精神性が感じられれば心が動かされ、だからこそ役に立つ。精神のない技術などは、ともすれば害を与えかねない。

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