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13/11/22

妖精のささやき

Image by Olia Gozha

近くにあると耳を塞ぎたくなるような騒々しさだけれど、過去になってしまうと記憶の隅でささやいているように聞こえるのは、何故だろう?

僕が生まれたとき、家には5人の女性がいた。

こう書くと、とても恵まれた裕福な家庭だったのかと思われるかもしれないが、そうではない。

つまり、お手伝いさんとかメイドの類いがいたわけではなではなく、テレビの捕物帳ドラマなどで見かける下町の長屋のような家は、大工の留さんのような父ひとりの稼ぎでなんとか暮らしていた。

家事全般を忙しくこなしていた母と、座って縫い物をしていた母の母(つまりおばあちゃん)、そして食べ盛りで喧嘩ばかりしていた3人の姉たちの記憶は、もう遠い世界の話のようだけれど、実はこの頃の一般家庭(?)はだいたいこんなものだった。

自分だけの部屋があって、スマートフォンでインターネットやゲームをしている今の子供達の姿を見ると、つくづく時代は変わったのだと思う。

ゲーム機はなかったけれど、遊び相手には事欠かなかった。

すぐに弟も生まれたし、3人の姉とはそれぞれ趣味や性格も違ったけど、一緒に泣いたり笑ったり悪巧みばかりしていた。

ひとことで言うなら、騒々しい家庭だった。

毎日何か事件が起きていたし、誰かが泣いて、誰かが怒って...あの頃は平穏な毎日(などというものを子供の僕が知っていたかどうかはわからないけれど)が、どれだけ羨ましかったか。

繰り返すけれど、この頃はだいたいみんな、こんなもんだったんだって。

そう、そして今のように横文字の言葉が横行するかっこういい世界に、どれだけ憧れたのだろう。

情けない話だけれど、僕は自分が誰かに守ってもらわなければ生きて行けない自信がある。

自分が誰かを守っているなどというのは、とてもおこがましい。

生まれたての小さな娘をみた時も、あの呪文のように繰り返す訳のわからない泣き声が、僕を守ってくれているのではないかと思ったほどだ。

今も昔もきっと、僕は彼女たちのささやきに守られてきたのではないか、と思ってしまう。

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