
どうも!
及川と言います。
僕の周りには変人が集まってきます。
なぜでしょう?
類は友を呼ぶのでしょうか。
友が類を呼ぶのでしょうか。
じゃあ僕は変人としての第一歩をもうスタートさせているのでしょうね。
はい。こんなことはどうでもいいですね。
これは僕が専門学校生だったころのお話です。
当時僕は田舎を離れ、札幌で一人暮らしをしていました。
あこがれの都会生活を満喫ー
なーんてことはなく、
地味にバイトに励み、
地味に自炊して、
地味に恋愛をしながら学校に通っていました。
そんなある日近くに高校時代の友達が就職して札幌に引っ越してきました。
(と言っても地下鉄二駅ほど離れた場所ですが。)
その人、仮に大島君としましょうか。
彼とはかなり仲が良くダイナミックな性格とそのユーモアあふれるひょうきんさは、
仲間内でも高い評価を受けていました。
そんなところから、物語は始まります。
第一章 大島、仕事辞めたってよ。
引っ越してきた当初は、
おうじ(大島のあだ名)とは定期的に遊んだりしていました。
札幌のレトロゲーム屋を巡ったり、
大通りまで彼の車でドライブしたり、
また別の仲間と一緒におうじの家で遊んだりしたこともありました。
しかしそんな時も彼はPCの前から離れません。
どうやらスカイプ(インターネット通話、チャットをするサービス)で誰かと話をしているようです。
彼曰く”嫁”だそうで、
まあ夫婦の団らんを邪魔したら悪いなぁと思い、
その隣の部屋で別の友人とロックマンをやって盛り上がっていました。
しかしそれから日を追うごとに彼の様子がおかしくなってきたのです。
異変は目に見えない形で伝わってきました。
仲がいい仲間内でグループチャットをして会話を楽しんでいたのですが、
おうじだけ返事がない。
「んん?珍しいな。」
「まあそんな日もあるか。」
と思ってみんなで放置していたのですが、
1日、3日、1週間と日を追っても音沙汰がない。
いや、あるにはあったのですが、
ちょっと「嫁が・・・」と空気読めといわんばかりにお茶を濁すだけ。
仲間内でも若干心配の色が見え始めてきました。
ーーー。
そんな日はさらに続きました。
僕も学業にアルバイトに、と忙しい毎日を過ごしていましたから、
様子を見にもいけずもやもやとした日を過ごしていました。
その日はしばらくぶりの休日でした。
バイトも学校もなく、
友達との予定もなかった僕は思い切っておうじの家を訪問することにしました。
思いのほか電話は簡単につながり、
そのまま彼の家へ。
インターフォンを押し、オートロックを解除してもらった後、
何かにせかされたように1段飛ばしでマンションの階段を上りました。
少し息を整えて、いざ部屋の中へ。
ゴミ袋。コンビニ弁当、そのほかもろもろ。
そんな中に彼はいました。
これといって変わった様子はなく、
意外とケロッとしていたのを見たときは、
安堵か先ほどの息切れの余韻かわかりませんが溜息が出ました。
少しお話をしました。
そこで手に入った情報は二つ。
一つ、
今”嫁”の側を離れることができないこと。
(スカイプを通した先を”側”と揶揄することが正しいのかわかりませんが。)
何でもそばを離れると何をしでかすかわからないそうです。。
二つ、
そんな状況だから会社に行けなくなり、会社を辞めたこと。
ふむ、わけわからん。
ですが彼が無事に生きていたことは僕を安心させるには十分な材料でした。
大島「今言えるのはここまでだ。」
大島「だけどもう少し落ち着いたら事情を説明するよ。」
大島「お前らになら話しをしてもいい。」
大島「だから少し待ってくれないか?すまん。」
そんな男前な発言を聞かされてはさすがに踏み込むわけにもいきません。
ついでに僕はホモではないので惚れたりもしません。
その後帰宅して仲間内にその情報を流し、
僕たちは”夫婦”の様子を見守ることにしました。
ーーー。
気が付けば1ヶ月の月日が流れました。
そんなある日おうじから連絡がありました。
大島「しばらく反応できなくてすまん。お前らになら話をしてもいいと思う。だから少し俺の話を聞いてくれないか?」
僕「ああ。」
仲間内に緊張が走ります。
そこから彼はポツリポツリと話を始めました。
大島「まず俺と嫁だけど、ネットゲームを通じて知り合ったんだ。」
僕「(あーいつもおうじがやってたやつかー)」
大島「クラブ(ギルド、仲良しな集まりの事)でも一緒によく狩りとかに行ってたんだ。」
大島「まあ、いろいろ省くけど意気投合した俺たちは付き合うことになった。」
僕「(はしょりすぎです。まあいいけど。)」
大島「彼女は少しひきこもりがちな学生でな。」
大島「よくネットゲームで暇をつぶしていたんだ。」
大島「いつかリアルで会おうと約束はしていたんだけど、何分俺の休みがない。」
僕「(んーでも電線の工事(彼の仕事)って雨降るとお休みだったりするから、簡単に休みとか取れそうだけどなー。)」
大島「んで折りを見てって話がついていたんだが・・・。」
僕「(ん?様子がおかしいぞ?)」
大島「俺の仕事中にある一本のメールがクラブのやつから飛んできたんだ。」
僕「・・・。」
大島「それを見て俺は上司に言い訳をしてあわてて早退して帰ってきた。」
大島「PCはつけっぱなしにしていた。すぐに嫁と話ができるようにと。」
大島「俺はすぐさま嫁と話をするために通話のボタンを押した。」
大島「その時の嫁は、半乱狂と言って違いないくらいに混乱していた。」
大島「俺は必死に嫁をなだめた。何度も何度も話をした。聞いた。」
僕「・・・何があったんだ?その・・・お前の嫁さんに・・・。」
大島「・・・つしていたんだ。(ボソッ」
僕「えっ?」
大島「自殺していたんだ、ベランダで。」
僕「!!!!」
大島「っつ!彼女の母親がベランダで首つって自殺してたんだ!!」
大島「それを彼女は見てしまったんだ。第一発見者として!」
大島「兄も、父もいない一人っきりの家の中でっ!」
2章 残金0円で生きていく方法(仮)
事実は小説よりも奇なりとはよく言うものです。
ははぁ、大変だなぁと言いつつ、
「まあ大変そうだけどまだ僕にゃあ関係ないな、へっ。」
と思っていたのはここで僕の物語をよんだあなたと僕だけの秘密にしておいてくださいね。
(本人はFBをやっていないし、こんな物語をここに投稿してるなんて知りません。)
これは予想でしかないのですが、
首吊り現場の死体ってグロテスクな場合が多い気がします。
舌が飛び出していたり、
失禁していたり、
顔が腫れてものすごい色になっていたり。
うう。書いていて気分が悪くなってきました。
そんな状況を家に誰もいない状態(まあ正しくは母だったものと二人ですが)で、
いるのは非常に辛いでしょう。
僕の母がそうなっていたらと考えると涙がうっすらと出てきました。
その状況下で彼女の心をなんとか彼が繋ぎ止めてたと考えると、
彼は非常に男らしい決断をしたものです。
ですがこの物語の題名では彼は全てを捨ててとなっていますよね。
会社での正社員という社会的地位だけではなく、まだまだ彼は何を捨てて何を取るかの決断を迫られます。
ここから彼が"嫁"の為に何を捨てたのか、
というエピソードをまだ当事者でない僕は語り部として話していきましょうか。
ーーー。
「親父にぶん殴られた。いきなり来やがって。」
親父は激怒した。
自分のコネを使って入社させた会社をすぐさま辞められたからです。
自分の顔に泥を塗った息子が許せぬ。
そして御天道様に顔向けできないような生活をするなという若干の親心(と言う名のエゴ)も見てとれます
親父は思い立つと地元から3時間かけて札幌までやってきたようで。
息子を殴りに。その為だけに。
「てめえは何してんだ、ふざけんじゃねぇ。」
「もう2度とこねぇからな!てめえなんて知るか。」
凄い暇な親父さんだなーと当時親心を知らない僕は思っていました。
まあ、僕の父親が、
"人生なんて本人の自由だー"
という放任主義という名の投げ捨て思考だったのもありますでしょうが。
この時の彼の親父さまの気持ちは今でもよくわかりませんが、
この行動に納得はできます。
このバカ息子、と喝をいれにきたんですよね。
きっと。
それからも親父さんを無視しつつニートになった僕の愛すべき友人は、
見事なまでの引きこもり生活を続けました。
車は親父さんが帰りがけに乗って帰っていったそうで。
だから足はなし。
職もなし。
そして、金もじわじわとなくなっていく。
そりゃあ引きこもっていればお金がなくなっていくのは当然ですよね。
僕は実際に通帳を見ていたわけではないのですが、
通帳の残高が3ケタを切った時の絶望は形容しがたいものがあるでしょう。
「金なくなったから実家帰るわ」
そして、
その一言を残し実家に帰って行った彼はどのような気持ちだったのでしょうか。
あ、親父にまた殴られながら荷物をまとめさせられたそうです。
なんだかんだ言っても引っ越し手伝うなんて、
親子の情というものはまだあるみたいですね。
ーーー。
「俺、あいつに会いに行くわ。」
あいも変わらず唐突です。
というか前々から考えていたのでしょうか、
そんなことを言い出した・・・職を投げ出した無一文な彼は、
おうじ理論によって一番最強で素晴らしい独自の方法を思いついたようで。
「じゃあどうすんのお金ないじゃん」
「ん?ひとまず適当にバイトか何かで稼ぐよ、10万くらい。」
「いやいや、会った後どうするんだよ。」
でもその理論は人から見れば穴だらけの”独自”な理論は、
「ひとまず深夜バイトか何かで1ヶ月みっちり働けばそのくらい稼げると思うんだよ。」
「実家だから食費とか生活費もかからないしね。」
「まあ親父がすごいうるさいけど。」
「人の話聞けよ。」
彼を心配する”僕ら”には到底理解できないものだったりするもので、
「まあいいじゃん。何とかなるって。」
「いや、心配して・・・んーもう決めたんだよね。そうするって。」
「ああ。」
だけど、勇気が”ありすぎる”彼にとっては、
その選択肢を選んだ結果自分に何が起きてもすべて受け入れるつもりのようで。
「じゃあ僕は何も言うことはないよ。」
「何かあった時は言ってくれ。お金はないが生活くらいなら何とか助けられるよ。」
「まあ自活できるように努力はしてもらうけど。」
「すまないな、ありがとう。お世話になります。」
「いやいや、最初から頼る気満々とかねぇよ。。」
「・・・愛って大変だな(ボソッ」
だから僕たちはそいつを応援するしか道は無かったりするんだ。
”友達”として。
「え、なんか言ったか?」
「べ、別に大したことは言ってないよ?」
「まあ何にしてもお前らの気持ちは凄いありがたい。」
「腐れ縁のような感じもするが、友達っていうのは本当にありがたいものだな。」
「・・・ああ。」
つまりこいつとは、長い付き合いになるってこと。
「そして、愛なんてそんな大それたものじゃないさ。」
「きこえてんじゃん・・・恥ずかしい。」
落としどころもしっかりとわきまえる彼には本当に頭が上がらない。
ーーー。
FENDER JAPAN
BASSWOOD、
MAPLE OVAL TYPE, 432 SCALE、
ROSEWOOD, 184R, 20F VINTAGE
・・・だとかのベース、
(よくわかっていない)
ワンピース全巻(当時の)
灼眼のシャナ全巻(当時の)
...etc
被害額。
おおよそ10万ちょい。
おおじはとても怒っていました。
というのも彼の昔アルバイトで購入した私物が日に日に減っていく。
問いただしたら犯人は親父だそうで、
まあ色々と気持ちはわからないでもないけど、
陰湿すぎないか?親父さん・・・。
「俺、全部買い戻すわ。」
様々な気持ちを抑えながらその物体を買い戻すおうじ。
ん?なんで買い戻す必要があるんだろうか。
そんな日々を過ごしながら彼はコンビニの深夜バイトを始めました。
実家に戻って3ヶ月。
バイトを始めて2ヶ月。
そして、彼女のいる愛知に行くまで1ヶ月のことでした。
時々コンビニの廃棄の食品を貰ってきて地元の友人にふるまったりしていたそうな。
(廃棄を貰ってくることは業務上横領です。)
そんな余裕があるんだかないんだかよくわからないまま、
時間は進みます。
ーーー。
「親父に売られると嫌だから」
と、友人宅にPC一式と人には言えないようなものを預け、
「そいじゃ、一回行ってくるわ。」
ああ、行っちゃったな。
味噌カツが実は凝ってるのは味噌だけであって、
カツ自体は普通だからがっかりしないかなって思ったり、
彼女の親への挨拶に白い恋人かマルセイバターサンドのどちらがベストか、
なんて議論をする暇もなく。
彼は旅立っていきました。
名古屋空港、いや中部国際空港へ。
帰ってきたらどうすんのかな、
札幌で職探すのかな?
あいつもう家には戻れないし・・・。
まあ、僕たちで適当に家を回ってもらいながら、
職探しと家さがしすればいいか、
なんて僕たちの中でも自然と決まったりして、
彼がホテルで全裸の写真を当時全盛期のmi〇iにアップして、
友人全員をドン引きさせたりして、
(下な部分は謎の逆光でもちろん見えなくなっていました。)
彼は戻ってきました。
バックパック一つに手提げを持って。
「じ、じゃあひとまず寿司屋でミィーティングするか(苦笑い」
「そ、そうだな海鮮〇でいいかな?(苦笑い」
僕たちが苦笑いしてるのは別に彼の生き方を、
服装を馬鹿にしているわけではありません。
それはもう一つの”荷物”を見て・・・
もう一度言います。
彼は戻ってきました。
バックパック一つに手提げを持って。
そして、”旅行鞄を持った”彼女を連れて。
彼女を連れて?
ああ、こういう奴だった。
僕らはこの時思い出したのです。
この人の行動力を。
そしてそれに伴う苦労を僕たちが背負うことになるのだと言うことを。
ーーー。
少し愛知へ行く前の話をしましょう。
まず彼は親父に愛知に行くということを告げたのですが、
もちろんそれはケンカに発展するわけで。
「親父になんてわかんねぇよ!」
「もうお前に人生がどうとか言われる筋合いもないから。」
「2度と、2度と家になんて戻らないから!」
というやりとりがあったのかどうなのかは正直わかりませんが、
(今まで見たことがないほど怒っている彼に詳細を聞き出すなんてやりたくないです。)
親父と勘当したのは確かであって、
まず、彼は帰るべき家と肉親を失いました。
そのせいで彼には前に進む(彼女と会いに行くという選択肢)しか残っていないのです。
それをロックだとか、男らしいという言葉でかたずけていいのかどうなのか、
僕はまあこういう生き方もありだなって納得したり、
今現在隣の頬がひくついてる友人をどう説得するかに悩んだり。
赤マンボウ、シイラ、ウミヘビとおそらく偽装魚と言われる魚たち。
ここの回転寿司でも使われてるんだろうなぁと思ったり思わなかったり。
(隣のひくついている友人が今のように有名になる前から得意そうに話していました。)
そこで作戦会議と言う名の魔女裁判の判決をどうするか悩むのは当然と言えば当然でしょう。
ひとまずサーモンをほおばりながら僕たちは”この後の”ことについてを話し合っていきます。
4人の自己紹介が終わりました。
4人というのは僕、王子、彼女、友人の4人です。
黙々と寿司をかっ込む僕らとお前らいちゃこいてんじゃねぇって感じの彼ら。
話はなかなか進みません。
一通り寿司を食べ満足したのか隣の友人は言いました。
「これからどうする?」
「僕の家でもいいけど?」
まあ約束してしまったものは仕方ありません。
約束を守らないのは人としてダメだと思ってる、僕です。
「んーどうしようかな」
「いやいやあんたの住む場所だから。」
「でも少し、というかかなり片付けないといけないからちょっと待ってほしいけど。」
「じゃあひとまず俺の家がいいんじゃね?」
僕よりも汚い家の主(友人)はこう言います。
また僕がお宅訪問してゴミ出しやら流しの片付けをやらなきゃいけないな、
なんて思いながら。
「じゃあひとまずそっちとめてもらうわ」
「おっけー」
「んじゃあ片付け終わったら連絡してくれろ」
「はいは-い」
ひとまず執行猶予が付いた僕は立ち上がり言いました。
「それでいいよね?葵ちゃん?(仮の名前です)」
「うん。」
「あと一つ聞いていい?」
「ん?」
非常に馴れ馴れしく彼女はそう答えました。
(ぼくはそういうのを気にしません)
しかし僕が気になってることはそれではありません。
「あなた中学生ってマジ?」
「うんそうだよ?」
そんなふうに義務教育真っ最中の彼女は答えました。
義務教育最後の月にはふさわしくない遠い北の地で。
それは雪解けもまだ少し遠い3月の事でした。
続く。

