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13/9/26

続続不足の事態

Image by Olia Gozha

       手術約一ヶ月後に義足作りが始まるが、その前にしなければならない事がある。義足をはめる切断した残りの部分の脚を、元の太さに近づけなければならない。腫れているというか、むくんでいるというか、とにかく脚は1.5倍は大きくなっている。これを包帯でぎゅうぎゅう締め上げ、ぐるぐる巻きにして縮めなければならない。アップ帯と言うそうだ。包帯の間から、柔らかな餅を握った時に指の間から餅がはみ出すように、肉がぷっくり出てくる、と「それ!」とばかり抑え込む。力まかせに締め上げても、ほとんど痛みはない。ただ脚は先に向かってほそっているので、円錐台のカバーを取るのと同じくらい簡単にスポンと抜けてしまう。

       しかしこれが専門家の手になると、違ってくる。アップ帯の巻き方があって、V字をずらし重ねた模様に巻いていく。麦穂帯と呼ばれる方法で、模様が麦の穂に見えるので、そう呼ぶそうだ。これだと寝る前に処置して、夜中まではもつ。看護師が二人がかりで巻くので、手間がかかってしまう。病院を出て、普通の生活に戻った後も必要な場合があるので、自分一人で出来るように、と申し渡された。      「そんな無茶なあ!」と思ったが、必要ならば練習せねばならない。

     私は寝つきと目つきの悪い男である。9時の消灯から眠り込むまで相当時間がかかる。この時間を利用しない手はない。いや、手はあって脚がないか…   両目ともそうとう悪く、枕元の電灯をつける必要もない。手の感触を頼りに包帯を巻いて行く。毎夜毎夜巻く練習を繰り返し、ついに私はアップ帯の鬼になった。右脚はその事実に恐れおののき、縮み上がって、いよいよ義足型取りへと、進む事が可能になった。

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Image by Jukka Aalho

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