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13/9/20

アウェイな暮らし①「陸地には山羊とカラスの無人島で暮らした日々」前編

Image by Olia Gozha

「あの島だっ!」

舟の上から近付く島の山の崖っぷちに佇む山羊が数匹見えた。

「山羊は住んでるんだな」と少し安心する。

「ん?山羊って凶暴ではないよね。」と不安もよぎる。



「はいはい。ここまでしか舟はつけられないから、あとは舟を降りて海中を歩いて。」

座間味からは舟を出してくれたおじちゃんが言う。私達は荷物を担ぎ、ズボンをまくりあげ、海中へ降りた。

さぁ、いよいよ憧れの無人島生活が始まる。

「大丈夫か?私。」

私は普通の女性。けして逞しくはない虚弱体質に近い。

(最近、癌を告知され切除出来ないリンパ節転移や骨への転移もあり、どうしても人生、終盤戦と・・・感じてしまい、自分のこの世の人生を振り返ってこの場をお借りして書いています。ありがとうございます。)


さぁ、何故、無人島生活など始めるのか・・・


友達に話すと驚かれるし、いつも引かれる話。

だからあまり話さない(苦笑)

私の中で何故か惹かれる憧れの暮らし。

何故だろう?無人島に乗り継ぐ飛行機や船の中でも考えていた。

自分の生い立ちを振り返ると、生まれてきて何不自由なく育ち、欲しいものは与えられ、過保護過ぎる両親は、私にはなるべく人生の悪や哀しみを見せないように育ててきた。特に長女だったこともあり、簡単に言えばどっぷり箱入り娘。成長するに連れて窮屈さを感じていた。

今は亡き戦時中を知る大好きだった祖母は、昔の出来事を色々と話してくれた。それは私にとってはあり得ない不条理なことばかりで想像し難い世間でも、必ず愛に富んだ魅力的な世界でもあった。祖母は、幼くして母に先立たれ、継母に意地悪されながら育ったようだった。物のない世の中で手に入る雑誌や本を大切に何度も何度も読んだと話してくれた。そして「あなた達は母親に感謝しなさい」とよく諭してくれた。

私が中学生の頃、読んだ「アンネの日記」は、なんて恐ろしいヒットラーという奴!という思いとは裏腹にアンネの隠れた家での少しだけ恋心が入った暮らしぶりにドキドキが止まらなかった。読書は私にとって非日常を体験する一番身近なものとなり、特に海外文学にはまっていた。特にルーシー・モード・モンゴメリの作品は自然界の描写がとっても美しく、出版されている書物、詩集まで全て何回も読んだ。そして少し横路を入ってちょっと違うティストの「トム・ソーヤの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」「ロビンソン漂流記」「エンデュアランス漂流」などを読むときにはワクワクドキドキ感がマックスに達していたように思う。女の子なのに・・・

無人島生活に至るまでの海外旅行や海外の暮らしも、言い方は悪いが日本で育った私からすると、困った暮らし=工夫が必要な暮らしの方が私にとっては断然面白かったし、大人になってから行くキャンプもマイトイレを自ら作るようなものも平気だった。暮らし全般を工夫して作り上げることが楽しかった。

時々、ニュースで聴く遭難時や漂流時の命を掛けた暮らしにも少しだけ興味があった。

ふざけていると思われればそれはそれで仕方ない。どんな状況にも暮らしがある。純粋に自分の生活とは程遠いそこにまだまだ青ニ才な私は興味があっただけかと今になっては思っている。


そして、遂に人のいない文明から断たれた空間・無人島で暮らしてみる主人公になるときがやってきた(笑)

今回は大学で探検部だった友人と二人での参戦。その時点では二人とも社会人だったので行った時期は年末年始の休みを利用しての約1週間だった。


選んだ島は沖縄県の安室島。(勝手に侵入することは出来ません。許可を得ています。)

事前に地図を手に入れ、川があるかをチェック。真水は何より生きていく上で欠かせないもの。

「川はあるね!大丈夫」「危険な生物体の存在もなさそうだわね」

日頃、忙しい私達が、重要視したチェック項目はこのくらいだった。

座間味の公民館で、10リットルタンクに2つの水は汲んでいったが、1週間滞在の予定では、全く足りないだろう。川の水が何より頼りだった。

島に到着したのは夕方だったので、まずはその日の寝床を確保するテントを張る為、安全そうな平地を探す。森の中に入るのは危険を感じたので砂浜に潮の満ち引きを考えて場所を確保する。確保すると言っても、誰も他にはいない。考えられる危険性は波のみ。

なんとか、砂地にテントを立てた。ペグの固定がなかなかうまくいかなかった。途中、何度か立てかけのテントは強風にて倒れた。苛々してくる。周囲は暗くなり、海の向こうからは、美しい月が登ってきた。癒される。その夜の夕食はテントの中でカップラーメンを頂き、明日の島探検と基地作りに備えて早めに就寝の用意をする。近くにカラスの鳴き声が聞こえる。変な奴らがやってきた!とでも思っているのか・・・こうして、初日は過ぎていった。

後編に続く。





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